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#カルトって何? #北大・桜井教授に聞く 反社会的宗教、SNSで勧誘
08/03 14:33 更新
正体を隠して勧誘活動を行うカルト集団に注意するよう呼びかける桜井教授(中村祐子撮影)
安倍晋三元首相の殺害事件をきっかけに旧統一教会の問題が注目されている。大学ではダミーサークルをつくり、勧誘活動が続く。SDGsセミナーや清掃ボランティアなど正体を隠して接近するのが特徴だ。近年は会員制交流サイト(SNS)を使い、ネット空間で活動を活発化させているという。そもそもカルトとは何なのか。具体的な勧誘の手口は―。カルト問題の研究で知られる北大大学院の桜井義秀教授(61)に聞いた。
―カルトの定義を教えてください。
社会問題化している宗教団体というのが今は一番通用しているが、もともとは主流派でない宗教、異端とか邪教とか、そういうものに使われていました。宗教社会学では「カリスマ的な教祖に率いられた熱狂的な小集団」と定義できます。学問では「善い」「悪い」は問題にしません。カルトには宗教の始まりというニュアンスがあります。しかし社会問題化する宗教とは、たとえばオウム真理教のような事件を起こした団体です。
カルトは信者あるいは一般の人たちに対して身体的、精神的、金銭的な被害を与えます。
裁判を起こされ、司法判断で刑事、民事を問わず違法性が認められ、有罪判決が下されているのです。
■SDGsの催し偽装も
―具体的な手口は?
SDGsなども利用されていると聞きますが。
最近の勧誘行為は対面でなく、SNSで行われています。たとえばフェイスブックで「いいね」とコメントを寄せて、やりとりしているうちに「ちょっと会わない?」と言われる。会って関係ができて、セミナーとか道場とかいろんな所に連れて行かれ、そこから入り込んでいる。スマホが登場して以来、その傾向が顕著になっています。
SDGsを冠した催しにも積極的で、旧統一教会の学生組織である原理研究会が上から指示を受けてSDGsなら誰も反対しないからと。これは旧統一教会系の「天宙平和連合」で安倍元首相のビデオメッセージが流れたのと同じ発想です。自分たちの活動を政治家や大学の総長らにオーソライズ(承認)してもらって、その看板を布教に利用するわけです。
―学生へのアドバイスを。
■友達、大学に相談して
大事なのは、誘いを受けたときに即断即決しないこと。少し間を持って、自分で判断できないときは親、友達、大学に相談してみる。即断即決が一番危ない。「誰にも相談するな」と言われたらカルトの可能性が高い。情報遮断は常とう手段です。
もしSNSのアカウントを教えてしまっても焦らず、自分からは一切連絡しないで、誘いが来たらきっぱり断ればいい。
親御さん、保護者への助言としては、特に大学1年生が夏休みに帰ってくるときに何かサークルに入っているとか言ったら何に入っているのか中身を聞いてほしい。あやふやにしたり意味不明のことを言ったりしたら危ないかもしれない。そういう親子の会話があるような家庭の子はカルトには入りにくい。親に隠して、親がたまたま下宿を訪れた際に教祖の写真があったと大騒ぎし、そこから始めても解決が難しい。夏休みに入る今がちょうどいいタイミングです。(長谷川賢)
<略歴>さくらい・よしひで 1961年、山形県生まれ。84年に北大文学部を卒業し、87年に同大大学院文学研究科博士課程中途退学。2004年から現職。専門は宗教社会学。カルト問題や現代宗教の研究を続ける。
<ことば>旧統一教会
1954年に韓国で故文鮮明(ムンソンミョン)氏が創設した新興宗教で、現在の名称は世界平和統一家庭連合、旧名称が世界基督教統一神霊協会。略称として「統一教会」が使われているが、キリスト教団体や日本共産党などは「統一協会」とすべきだと主張している。ちなみに韓国では「統一教」と呼ばれている。日本では霊感商法や合同結婚式、信者の多額献金による家庭崩壊などが社会問題化。欧米ではカルト教団と見なされている。
<ことば>原理研究会
教祖の文氏が提唱する「統一原理」を学ぶことを目的とする学生組織。英語のCollegiate Association for the Research of Principlesの頭文字からCARP(カープ)とも呼ばれ、桜井教授によると「○○大カープ」などの名で全国30前後の大学に組織がある。ボランティアサークルや学生新聞の形で正体を隠し「統一教会とは無関係」と偽るケースもある。
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マインドコントロール、政治と宗教の距離、お薦めの書籍などに言及した北大大学院・桜井義秀教授インタビュー詳報もご覧ください。
<取材後記> コロナ下で大学の授業はオンライン化し、サークル活動も停滞、この2年は友達ができにくくなったという。人間関係が希薄になるとカルトに付け入る隙を与えてしまう。桜井教授は「相談できる相手がいないのは非常に危険」と注意喚起する。夏休み、親子の会話を大事にしたい。(長)