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あの団体とズブズブの関係を80年代から続けてきた政界の深い闇【コメントライナー】

 ◆政治アナリスト・伊藤 惇夫◆

 

自民党本部に設置されている同党の看板=2021年6月撮影、東京・永田町【時事通信社】

 

 筆者が自民党本部のスタッフだった1980年代、旧統一教会の政界工作の先兵と言われている国際勝共連合は、すでに「永田町」に広く、深く浸透していた。

 

  彼らが選挙の際、スタッフとして選挙事務所に入り込み、ビラ配りやポスター貼りなどを熱心に行うことは知れ渡っており、政治家にとっては極めて「便利」な存在だった。

 

  複数の事務所に勝共連合のメンバーが秘書として入っていたことも覚えている。

 

  だが、その後、教団は霊感商法や高額寄付などで厳しい批判にさらされる。以後、彼らが「危険な組織」であることは、誰もが認識していたはずだ。

 

  にもかかわらず、現在、その浸透度は以前以上と言ってもいい。なぜ、政界、特に自民党はここまでズブズブの関係を築いてしまったのか。驚きと闇の深さを感じる。

 ◆リクルート事件と類似

 1988年に発覚したリクルート事件。公開後は値上がり確実のリクルートの子会社・リクルートコスモスの未公開株が政、財、官に「賄賂」としてばらまかれ、多数の逮捕者が出た。

 

  中でも政治家、特に自民党の有力議員が軒並み「ぬれ手で粟(あわ)」だったことが明らかになり、世論の厳しい批判を浴びた。

 

  自民党は事件発覚によって「政治とカネ」の問題に正面から取り組まざるを得なくなり、それが政治改革、つまり衆議院の選挙制度の抜本改革(中選挙区制から現行の小選挙区比例代表並立制への制度改革)につながった。

 

  なぜ、この事件を思い出したか。それは今、安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに浮上している旧統一教会問題と、どこかが似ていると感じたからだ。

 

  さまざまな不祥事を繰り返してきたこの教団と関係を持っていた政治家の数は100人以上、その多くは自民党の所属議員だ。

 

  彼らは「賄賂」を受け取ったわけではない。だが、その代わりに今も多数の被害者を出しているこの教団から、選挙でのさまざまな「支援」を受け取っていた。

 ◆自民組織は無関係?

 問題発覚後、自民党の茂木敏充幹事長は早々に「党として組織的関係がないことを確認した」と述べ、岸田文雄首相も「当該団体との関係をそれぞれ点検してもらい、結果を明らかにしてもらう」ことを指示したという。

 

  要は本人任せで、党は関係ない、というわけか。だが、これだけ多くの所属議員が関係していた以上、自民党という組織自体への教団の浸透を疑うべきではないか。

 

  リクルート事件の際、自民党は内部に調査チームを設置し、限界はあったものの、誰が、いつ、何株を受け取り、その結果、どの程度もうけたのか、などといったことを調べた。

 

  余談だが、この中で、最もひきょうな責任逃れを画策したのが某元首相だったことを思い出す。

 

  この問題が長引くことを恐れたのか、岸田首相は内閣改造・党役員人事を前倒ししたが、果たして大丈夫か。

 

  リクルート事件の時は、内部調査したにもかかわらず、内閣改造により入閣した後に同社からの献金が発覚し、わずか4日後に辞任した閣僚もいたが...。

 

  (時事通信社「コメントライナー」より)

 伊藤 惇夫(いとう・あつお)

 1948年生まれ。自民党本部の広報担当、新進党総務局企画室長、民主党結成・事務局長などを経て2001年より政治アナリスト。政界の裏事情に通じ、明快な語り口に人気が高い。テレビ・ラジオ出演のほか、「国家漂流」「政治の数字」「情報を見抜く思考法」「政党崩壊」など著書多数。