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政治家たちは日本人の「忘れっぽさ」に期待しているのか


  反応が鈍い自民党は、公明党との連携の是非を間われるから


  三枝成彰の中高年革命 連載240

◎ 日刊ゲンダイ(3日付)によると、自民党の「統一教会『濃厚接触』議員は32人に上る。
 二之湯国家公安委員長、安部元総理の実弟の岸防衛相、末松文科相、細田衆院議長らで、日本維新の会も13人の議員について教団との接点を認めた。
 私も以前、自民党のほとんどの議員事務所に無給で滅私奉公する教団派遣の人員がいた、と某首相経験者から聞いたことがある。
秘書が全員、教団から派遣されている人もいた。
 始まりは教祖・文鮮明氏と岸信介元総理との交流だ。岸氏は文氏の盟友として、教団の関連団体「国際勝共連合」の設立を支えたという。

 “勝共”は「共産主義に打ち勝つ」の意で、50年代、60年代のソ連が脅威だった時代に強い警戒感から設立された。
 文氏に人を引きつけるカリスマ性があったのは確かなのだろう。
 北朝鮮の故・金日成氏とも親交があったらしい。
 岸氏との縁は娘婿の安倍晋太郎氏、孫の晋三氏と岸信夫氏が継承した。その間、福田(赳夫)から森、小泉、安倍、福田(康夫)まで歴代5人の総理を出した与党の最大派閥が、あまたのトラブルを起こしてきた宗教団体と関わっていたのだ。

◎ 「勝共連合」の4つの運動方針は、1が憲法改正の実現、2が防衛力強化などによる安全保障体制の確立、3がLGBT人権運動の歯止めと正しい結婚観・家族観の追求だ(4つ目は機関誌と会員の拡大)。
 自民党が政策に掲げる「毅然とした外交・安全保障で“日本”を守る」や憲法改正、そして昨年超党派で企図されたLGBT理解増進法案が自民党の横やりで国会提出見送りとなったことと驚くほど重なる。

 戦後、政治と宗教とはつねに論議を呼んできた。
 「数の論理」がものをいう政治の世界で、組織票も人材も提供してくれる団体があれば、すがりたくもなるだろう。宗教団体も、支持した政党が政権を取れば、活動の後ろ盾となることを期待する。

 ときには宗教団体自体が政党を起こすこともある。それが最悪の形で現出したのがオウム真理教の一連の事件だ。彼らは選挙にも出た。既存の社会を暴力で塗り替えることで、世の中を変えようとしたのだ。

◎ 反対に、人間主義を前面に打ち出しているのが公明党で、支持母体は創価学会。彼らはあくまで「庶民の党」として、平和に世の中を変えようと主張している。学会の会員数は公称827万世帯。自民党と連携し連立与党として政治に大きな発言力を持つ。
 自民党の反応が鈍いのは、宗教と政治の問題を追及すれば、公明党との連携の是非を間うことに行き着くからだろう。
 彼らは世間が忘れてくれるのを待っているのかもしれない。
 「モリカケサクラ」も忘れられつつある現在、これもやがて忘れられると踏んでいるのか。

◎ 日本人の忘れっぽさに政治家たちが期待しているなら、私たちは
「それは大きな間違いだ」と突きつけてやらねばならない。

◎ 最後に、当欄の「国の威信より国民の命が重い」との記事には賛否両論あった。否定なさるのももちろんけっこうだが、その方々に間いただしたい。
 もし日本が戦争に巻き込まれたら、皆さんは国のために死ぬ勇気はあるのだろうか?      (8月5日発行「日刊ゲンダイ」29面より)