EUに加盟するために申請国が満たすべき主要条件は、1993年にデンマークのコペンハーゲンで開催された欧州理事会が定めた「コペンハーゲン基準」である。

 

EUへの加盟を希望する国は、次の3つの基準を満たしていなければならない。

  • 政治的基準:民主主義、法の支配、人権、マイノリティの尊重と保護を保証する安定した諸制度
  • 経済的基準:正常に機能する市場経済およびEU域内の競争や市場の力に対応できる能力
  • 法的基準(EU法の総体「アキ・コミュノテール、略してアキ」の受容):政治・経済・通貨統合の目的の遵守など、加盟国としての義務を担い、効果的に実施する能力

 

 

ちなみに、日本にはEU加盟条件であるEUレベルの政治的基準:民主主義、法の支配、人権、マイノリティの尊重と保護を保証する安定した諸制度がありません。

 

 

 

 日本政府は1979年、世界人権宣言を敷衍化し法律化した国際人権規約(1966年国連総会採択、1976年発効:を)を批准したものの、自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)および、合計8つの人権条約に備わっている個人通報制度を批准していないため、未だ法の支配を実現していず、人権鎖国状態です。

 
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

 

欧州連合条約は、自由、民主主義、人権および基本的自由の尊重、加盟国共通の法の支配の原則を尊重するいかなる欧州の国も加盟を申請できると定めている。

 

 

欧州の安定と平和を強化するEUの拡大

Ⓒ European Union, 2019 / Source: EC – Audiovisual Service / Photographer: Georges Boulougouris

ロシアのいわれのない不当な侵略を受けたウクライナがEUへの加盟を申請したことで、EUの加盟プロセスがあらためて注目されている。1952年にEUの原点である欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立されて70年。EUの拡大の歴史と加盟手続きなどを説明する。

EU拡大の歴史

欧州連合(EU)の母体である欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)は、第二次世界大戦後の荒廃した欧州を復興させ、二度と紛争が起きないようにするために、各国の戦争を可能にする資源を共同管理して経済の相互依存を進めるべきという発想に基づいて1952年に創設された。原加盟国となったベルギー、ドイツ(当時の西ドイツ)、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダの6カ国は、その後欧州経済共同体(EEC)を創設、EECは欧州経済共同体(EC)へと進化した。この欧州統合の試みは大いに成功を収め、時と共に多くの国がEUへの加盟を希望するようになった。 EC時代に6カ国が加盟、1993年のEU創設以降は、中欧・東欧諸国が続々と加盟を申請し、2013年には28カ国にまで拡大(その後2020年に英国の脱退により27カ国へ)。EUは、その拡大に比例して、欧州の民主主義と安全保障の強化・安定に貢献し、その貿易と経済成長の可能性を高めてきた。

2022年3月現在、アルバニア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア、トルコの5カ国が加盟候補国(candidate countries)、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボの2カ国が潜在的加盟候補国※1(potential candidate countries)となっている。さらに、同年2月24日のロシアの侵攻を受けたウクライナおよび、同国周辺のジョージアとモルドバが立て続けに加盟を申請した。

EUの拡大政策は、欧州の安定と平和への戦略的な投資という意味を持つ。EUに加盟するには、全ての加盟条件を満たすための徹底したプロセスが求められ、加盟までには、さまざまな作業が必要となる。

各国の申請・交渉・加盟の時期は文末に記載

EUに加盟する条件

欧州連合条約は、自由、民主主義、人権および基本的自由の尊重、加盟国共通の法の支配の原則を尊重するいかなる欧州の国も加盟を申請できると定めている。以下が関連する条項である。

欧州連合条約(抜粋)

2条

連合は、人間の尊厳、自由、民主主義、平等、法の支配の尊重およびマイノリティに属する人々の権利を含む人権の尊重という価値に基礎を置く。これらの価値は、多元主義、非差別、寛容、公正、連帯および男女平等が普及している社会にある加盟国に共通する。

49条

第2条に掲げる価値を尊重し、その促進に努める欧州の国はいずれも、連合への加盟を申請することができる。欧州議会および加盟国議会は、その申請について通知を受ける。

加盟申請国は、自らの申請をEU理事会に対して行う。EU理事会は、欧州委員会に諮問し、かつ総議員の過半数をもって決定する欧州議会の同意を得た後、全会一致をもって議決する。欧州理事会によって合意された加盟条件は考慮される。…

EUに加盟するために申請国が満たすべき主要条件は、1993年にデンマークのコペンハーゲンで開催された欧州理事会が定めた「コペンハーゲン基準」である。EUへの加盟を希望する国は、次の3つの基準を満たしていなければならない

  • 政治的基準:民主主義、法の支配、人権、マイノリティの尊重と保護を保証する安定した諸制度
  • 経済的基準:正常に機能する市場経済およびEU域内の競争や市場の力に対応できる能力
  • 法的基準(EU法の総体「アキ・コミュノテール、略してアキ」の受容):政治・経済・通貨統合の目的の遵守など、加盟国としての義務を担い、効果的に実施する能力

なお、西バルカン諸国(アルバニア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ)については、地域内の協力や良好な隣国との関係に関わる「安定化・連合プロセス」で定められた追加条件を満たすことが必要になる。

EU加盟までのプロセス

加盟候補国は、コペンハーゲン基準を満たし、EU法の総体「アキ」を履行できるように、国内の政治面、経済面、法律面において、それぞれに必要な制度改革を進めなければならない。加盟予定国(後述)は、加盟後にEUの一員としてその目的や責任を果たすために、アキを履行する体制が必要だからだ。

加盟プロセスは、大きく分けて、①加盟候補国に認定、②加盟交渉、③交渉完了、の3段階に分かれている。

① 加盟候補国に認定

加盟申請を受けて、欧州委員会が当該国の準備が整っているかに関する「意見書(Opinion)」を作成。それを基に準備ができていると全EU加盟国が判断すれば、EU理事会は全会一致の決議で、正式な加盟候補国と認定する。

② 加盟交渉

EUは加盟候補国とアキの35の政策分野(章=Chapter) ごとに交渉を行い、加盟候補国はアキを適切に適用・履行するための国内法の改正や、加盟基準(accession criteria)を満たすために必要な司法・行政・経済の改革を実施する。交渉を開始する際は、EUの執行機関である欧州委員会が審査 (screening)※2を行い、EUと加盟候補国双方の交渉ポジション(negotiation position)※3を明らかにする。なお、交渉開始には全EU加盟国が加盟候補国との交渉の枠組みや権限について合意することが必要。

交渉のペースは、加盟候補国における改革やEU法との整合化のスピードによって左右される。交渉期間はさまざまだ。交渉期間を通じて欧州委員会は、加盟候補国がEU法の適用や基準の要件などその他の約束事項をどの程度達成しているかを監視する。同時に、加盟候補国に対する経済的・技術的な支援を行う。

③交渉の完了

35章の交渉は、欧州委員会の分析に基づいて、全てのEU加盟国政府が当該の政策分野における加盟候補国の改革の進捗に満足するまで続けられる。全35章の交渉が終了してようやく、交渉プロセスが完了する。

交渉が終結し、加盟がEU全体から承認されると、既加盟国それぞれの代表と加盟候補国との間で加盟条約を締結する。条約には、加盟に関する詳細な条件、経過措置に関する全ての取り決めや期限のほか、財政措置の詳細やセーフガード(緊急制限)条項が定められている。

加盟条約が締結されると、加盟候補国は加盟予定国(acceding country)となる。その後、加盟条約が加盟予定国および全てのEU加盟国で批准されれば、条約の規定に則った日付をもって正式なEU加盟国となる。

加盟予定国は、正式な加盟国となるまでの間、EU法、コミュニケーション(政策文書)、勧告、イニシアティブなどの原案について意見を述べることができ、またEU諸機関において「アクティブオブザーバー」(発言権はあるが、投票権は持たない)の地位を得るなど、特別な取り決めの恩恵を受けることができる。