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毎日新聞
DV防止法で存在感、任期6年解散ない参議院だからできた 女性を救うよりどころに#選挙のギモン
DV防止法の制定を求めて活動した「女のスペース・おん」の近藤恵子さん(左)=札幌市で2022年5月31日午後2時54分、堀智行撮影
衆院と参院で異なる人を首相に指名した場合などに衆院で決められたことが優先されたり、内閣不信任案の提出など衆院だけに認められた権限があったり。2院制といっても、解散があり民意を問う機会が多い衆院のほうが強い権限を認められている。では、参院だけが持つものもあるのだろうか。調べてみると、解散がない参院の特徴を生かした、ある会の存在が浮かんできた。そして、その会での議論の末に生まれたのが、ドメスティックバイオレンスから女性たちを救う大きなよりどころとなる「DV防止法」だった。
「熟慮の府」、利点生かしDVを議論
居並ぶ男性議員の表情は一様に曇っていた。今から24年前の1998年10月、参院内で開かれた「共生社会に関する調査会」の初会合。今後3年間かけて議論するテーマを何にするか話し合う場で、当時野党・民主党の「1年生」だった小宮山洋子さん(73)ら女性議員が「DV」を提案した時のことだ。
「家の中のことを国会という公の場で話すなんて、とんでもない」。男性議員からは、そんなことも言われた。「男性にはふたをしたままにしておきたい問題だったのかもしれないけれど、DVで何人も亡くなっている現実がある。絶対に法律が必要だと思った」。小宮山さんはそう振り返る。夫から暴力を受けた女性がどれほどいるかなどのデータを示し、押し切った。 参院は任期が6年と衆院の4年より長く、衆院のように突然の解散もない。その分、大所高所から国の長期的な課題に取り組める「熟慮の府」とされてきた。調査会はそんな参院の利点を生かそうと、86年に生まれた。三つの調査会でさまざまな課題を自ら調査し、議員立法につなげたり、関係する委員会に立法を勧告したりすることもできる。
DVは犯罪と認識してほしい 法的根拠求め
札幌市にあるNPO「女のスペース・おん」の近藤恵子さん(75)は、民間の立場でDVを防ぐ法律の制定を求めてきた。93年に活動を始めた当初は、政治参画や労働など、女性に関わるあらゆる支援に取り組むつもりだった。だが開所と同時に、夫の暴力に悩む女性からの相談が殺到した。
スタッフが朝出勤すると、大きな荷物を抱えた女性が事務所の階段でうずくまっていた。バス代を払うお金がなくて、雪解け道を幼い子どもの手を引きながら訪ねてきた女性もいた。「DVや性暴力、セクハラなど、ありとあらゆる被害が小さな事務所になだれこんできたようだった」
どこに相談に行っても相手にされず、身を寄せられる場所がない女性を、スタッフの自宅や知り合いの教会に頼んで避難させた。手弁当での支援だった。97年には道内初となる民間シェルター(一時保護施設)を設置し、98年からは全国の支援団体と法律の試案作りにも取り組んだ。活動を進めながら、近藤さんは「『DVは犯罪』と認識してもらうために、どうしても法的な根拠がほしかった」と思ってきた・・・