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「この生活が続くんでしょうね」 労働者に広がる閉塞感 30年前と変わらない手取りも
2カ所のアルバイト先の給与明細を見ながら毎月の手取りを確認する男性=熊本市(画像の一部を加工しています)
熊日など3紙が実施した賃金に関する合同アンケート。1500人超の回答から浮かんだのは、現在の給与や時給を安いと感じながらも多くの人が給与が上がるとは思えないという、労働者に広がる閉塞[へいそく]感だ。(立石真一、岡本遼) 熊本市の男性(34)は5年以上、深夜の清掃と早朝の配送のアルバイトを掛け持ちしている。1日計4時間働いて、月収は合計10万円ほど。この5年で時給はわずかに増えたが、残業が削られたため手取りは減った。 熊本市内の私立大を卒業後、営業職の正社員として身を削るような日々を送った時期もあった。しかし、職場の人間関係に悩んで退職。その後はアルバイトを転々とした。 実家で暮らすが家計は別々だ。自身の食費は月2万円に抑えるよう心がけている。唯一のぜいたくは休日前に飲む酒と、たばこ。最近、物価が上がったと感じることが増えたという。 学生の頃、30代といえば「普通に仕事をして、結婚していると思っていた」。しかし現実は違った。正社員との格差は思っていた以上に大きく、収入が少ないため結婚も考えられない。社会になじんでいないと感じることもあるが、なるべく余計な事は考えないようにしている。男性は「お金が足りなくなったら、もう一つバイトを始めようかな。まだ体力はあるし…。これからも、こんな生活が続いていくんでしょうね」とつぶやいた。 現在は非正規で働く熊本市の女性保育士(51)は短大を卒業した1991年、熊本市内の保育園に正職員として就職した。当時は保育士のほとんどが正規雇用で、手取りは13万円ほどだった。
非正規の保育士として働く熊本市の女性の給与明細。今年4月の手取りは約14万円だった=熊本市
結婚を機に9年間、保育の現場を離れたことが転機となった。離婚した2005年、保育の現場に戻ろうとした女性を待っていたのは、保育士の募集の主流が契約やパート、アルバイトなど非正規に移行した業界だった。 女性は仕方なく、数カ所の保育園を渡り歩きながら月十数万円の手取りを得て、女手一つで子ども3人を育て上げた。 保育士として20年以上のキャリアがある女性だが、契約職員として働く現在の手取りは約14万円と新卒時代とほぼ変わらない。仲間の若い非正規保育士の間には「頑張って正職員になっても責任が増えるだけで給料はたいして高くないから今のままでいいや」という雰囲気があるという。女性は「保育士の賃金が上がり、若い人が少しでも希望を持てる業界になってほしい」と願った。
熊本日日新聞 | 2022年06月15日 06:30
全国ワースト2位の熊本の最賃 「政令市ある県と思えない」「かなりの時間働かないと」
熊本県の最低賃金は821円と全国ワースト2位。アンケートでは、熊本の最賃についてエネルギー関係で働く熊本市の男性(53)が「政令指定都市がある県とは思えない」とコメント。同市の小売業の女性(47)も「食料品など全国共通で値上げしているのに、全国平均よりだいぶ安いので影響を受けやすい」とした。同市の医療・福祉関係の女性(31)は「生活保護を受けたほうが良いのではと思えるような最賃に何の意味があるのか」と手厳しく、菊陽町のサービス業の女性(31)は「生活するためにはかなりの時間働かないといけない」と訴えた。
一方、熊本市のサービス業の女性(48)は「最賃の底上げは中小企業を苦しめるだけ。賃上げを価格に反映できない企業はつぶれ、雇用は守れない」との意見。同市の製造業の男性(48)は「そもそも千円でも人が集まらなくなっている」との声を寄せた。(太路秀紀)
熊本日日新聞 | 2022年06月15日 06:30
「給料上がると思わない」8割弱 最賃950円以上望む声6割 九州3紙合同アンケ-ト
アンケートは5月27日~6月2日、熊日の「SNSこちら編集局」など3紙のLINE登録者らを対象に実施。熊本、福岡、鹿児島の3県を中心に1540人から回答を得た。熊本大の中内哲教授(労働法)に監修してもらった。
現在の給与や時給については「安い」が45・3%、「やや安い」が36・9%と合わせて8割強。「ちょうどよい」の12・4%などを大きく上回った。
一方で、今後、給与や時給が上がると「思う」は6・5%。「やや思う」12・4%と合わせても2割弱だった。「思わない」は44・4%、「あまり思わない」は33・4%に上った。
直近5年間の給与や時給の変化を尋ねると「増えた」43・2%、「減った」18・9%、「変わらない」37・9%。新型コロナ禍の影響もあり、伸び悩んでいる状況がうかがえた。
正社員・正職員では給与が「増えた」が46・4%だったのに対し、契約・派遣では30・5%と低く、正規と非正規の格差が読み取れた。パート・アルバイトでは時給が「増えた」が44・8%だったが、8割弱は上昇額が100円未満。最賃のアップ額に貼り付いた小幅な上昇にとどまっている状況がうかがえた。
居住地の最賃については「安い」が89・4%。望ましい額としては「900円以上950円未満」が22・8%と最多で、「1000円以上1050円未満」が20・3%で続いた。
賃金の上昇を参院選でどの程度重要と考えるかを5段階で聞いたところ、最重要の「5」が45・0%。「4」と合わせて7割強に上った。
アンケートは多くの労働者の声を集める目的で、無作為抽出する世論調査とは性格が異なる。回答者は女性が6割弱と多く、雇用形態別では正社員が5割弱、契約・派遣が2割弱、パート・アルバイトが3割だった。業種別ではコロナ禍を反映してか医療・福祉関係が2割強と多めだった。(太路秀紀)
30代4人に1人が結婚願望なし 婚姻は戦後最少、共同参画白書
政府は14日、2022年版男女共同参画白書を閣議決定した。内閣府が実施した結婚や収入に関する調査で、婚姻歴のない30代の独身者は男女とも4人に1人が結婚願望なしと回答。理由として「自由でいたい」などのほか、家事育児の負担や経済的な不安が挙がった。21年の婚姻数(速報値)は約51万4千組と戦後最少。
白書は、未婚や事実婚、離婚など人生や家族の姿は多様化したと指摘。配偶者控除の見直しなどを念頭に、世帯ではなく個人を単位とする制度設計を検討すべきだとした。 白書では、内閣府が昨年12月~今年1月に実施し、20~60代の2万人から回答を得た調査の結果をまとめた。