=たんぽぽ舎です。【TMM:No4421】「メディア改革」連載第91回=
 ◆ アーサー・ビナード&浅野健一の「ペテン学」講座

浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

◎ 2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻でロシア軍は首都キエフを襲う構えだ。NATO諸国だけでなく中立国のスウェーデンまでウクライナに武器供与を表明し、戦闘が止まる見通しが立たない。
 ロシア軍がチェルノブイリ原子力発電所を占拠したのには衝撃を受けた。
 私は2012年と2019年、「食品と暮らしの安全基金」の現地調査に参加した。
 2019年5月の調査報告は同基金のHPで全文が読める。
http://blog.livedoor.jp/asano_kenichi/archives/17716626.html?fbclid=IwAR34aRMhh4a3yr395riKYXPoew443ktpUK24xC6dyNXY333egMG_o-LEPMw
 ウクライナの友人たちの無事を祈っている。取材で出会った子どもたちがどうしているか心配だ。ウクライナ各地で撮った写真をFBに上げている。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100022241222173

◎ この機に、中国・朝鮮の「脅威」をがなり立て、日本に米国の核兵器の持ち込みを議論するべきとまで言い放った安倍晋三元首相、維新幹部らネオ・ファシストを警戒したい。


 「9条で国を守れるか」というデマも拡散しているが、日本国憲法の非戦・非武装・平和主義を世界に広げる時だ。
 私も共同代表をしている「憲法9条-世界へ未来へ 連絡会」は2月28日、ロシア軍の即時撤退を求め、米国などNATO諸国の武器供与に反対する声明を出した。
https://www.9joren.net/

◎ ロシアのウクライナ侵攻の5日前の2月19日、<-戦時下の新聞と今のぼくら-アーサー・ビナード&浅野健一による「ペテン学」レッスン!>と題した講座が「スペースたんぽぽ」で開かれた。
 40数人が参加し、アジア太平洋戦争の時代と現代を比較し、マスメディアの在るべき姿を議論した。予定時間を延長し、約4時間行われた。
 主催は「たんぽぽ舎講座会議」。人権と報道・連絡会、創出版、同志社大学浅野ゼミOB・OG会が協賛した。
 私が講座で訴えた、日本は過去の侵略の誤りを認め、被害国の人民に謝罪・賠償し、非戦・非武装の平和主義を貫くべきだという主張は、ウクライナ戦争の下でも一ミリも変わらない。
http://blog.livedoor.jp/asano.../archives/28454792.html

 ◆ 無声ジャーナリストがAI音声で講演

◎ 私は2020年4月に下咽頭がんで咽頭・喉頭の全摘手術を受け、声帯を失ったが、「無声ジャーナリスト」として活動を続けている。
 この講座は<浅野健一が選ぶ講師による「人権とメディア」連続講座>(2016年5月に開始、2020年1月まで10数回開催)再開第1回目だ。

 人権と報道・連絡会の山際永三事務局長、私の同志社大学雇用裁判で代理人を務めてくれた山下幸夫弁護士、片桐元・元新潟日報記者、千葉県9条連の石井俊郎幹事らが参加。講座の最後に、たんぽぽ舎の共同代表の柳田さんと鈴木さんが連帯の挨拶をしてくれた。
 柳田さんの都庁職員時代の同僚で、食道がんを治療中の松元成一さんも来てくれた。近く手術を控える松元さんは「声を失おうが何だろうが、私しか持ってない表現方法で、社会に知らしめてやろうと、自分自身にハッパをかけることができた」というメッセージを送ってくれた。

 ◆ 「戦時下の新聞と今のぼくら」をテーマに討論

◎ 私は講座の第一部で、「戦時下の大本営発表報道より悪い現在のマスメディア報道」と題して約50分講演した。手術後、初めての講演だった。
 私の“発言”は、AI・イチローさんの声で、参加者は熱心に聞いてくれた。
 会場で配布した講演レジュメ全文を私のブログにアップした。
http://blog.livedoor.jp/asano_kenichi/archives/28810229.html

 二部の討論は、パソコンで文字を打って画面に出す“つんく♂さん方式”で行った。このやり方で、これからも講演できると自信を持った。
 今後、隔月で本講座を開催したい。
 第二部では、戦争中の大本営発表報道から現在のキシャクラブメディア報道を討論した。
 インディペンデント・ウェブ・ジャーナル(IWJ)が、
   1.全編動画(会員のみ視聴可)、
   2.ハイライト動画(全編動画への導入、公開)―を近くアップする。
 私が電気式咽頭を使って説明した部分は、字幕が入る。
https://iwj.co.jp/

 ◆ 侵略加担の責任を取らなかった企業メディア

◎ 今回の講座では、拙著『天皇の記者たち 大新聞のアジア侵略』(スリーエーネットワーク、1997年)をもとに討論した。
 私が新聞学会で発表した「大新聞のアジア侵略」のDVDを上映した。
 また、私が所蔵するジャワ新聞・ボルネオ新聞(朝日新聞が発行)の現物を会場で展示した。

 私は「現在のマスメディアが腐敗しているのは、『大東亜戦争』の侵略責任をとっていないからだ」と強調した。
 ビナードさんは「当時の新聞は100%プロパガンダ。それを恥ずかしい、悪いと思わず、自信満々に、商売のため、公共事業として、侵略先で新聞を出した」と述べた。

◎ アーサー・ビナードさんは「日本国憲法第21条の、一切の表現の自由を保障し、検閲はしてはならないという条項がいまある」と指摘した。
 また、「テレビ局はなくしていいのでは」とも強調した。
 私は「いい記事、番組をほめ、悪い記事には抗議することだ。企業メディアはかなり気にしている」と訴えた。
 今後も、ビナードさんとの対談を続けたい。