日本政府は1979年、国際人権規約(社会権規約第12条 ※)を批准しています。

 さらに、政府は2012年9月11日、社会権規約第13条第2項b・c項 ※※を批准。

 憲法に規定のない条項は「憲法以上」の法的拘束力があります。

 

『「医療系国家試験」試験当日、コロナだったら浪人確定』は、厚労省による不作為・犯罪です。

 

日本国憲法

 

第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

 

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

第十章 最高法規

第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 

第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

② 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

 

第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 

 

 

※ 社会権規約第12条

1 この規約の締約国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める。

2 この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、次のことに必要な措置を含む。

 

(a) 死産率及び幼児の死亡率を低下させるための並びに児童の健全な発育のための対策
(b) 環境衛生及び産業衛生のあらゆる状態の改善
(c) 伝染病、風土病、職業病その他の疾病の予防、治療及び抑圧
(d) 病気の場合にすべての者に医療及び看護を確保するような条件の創出

 

※※ 社会権規約第13条第2項b・c項

1  この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。

2  この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。

 

(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。

 

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

試験当日、コロナだったら浪人確定… 不条理すぎる「医療系国家試験」の受験事情

 

感染したら1年間の浪人…あまりに理不尽ではないか(※写真はイメージ)

 

 コロナ禍において、日々、献身的な対応を求められている医療従事者たち。彼らが、いま最も社会に必要とされている存在であることは論を俟たないが、肝心の成り手たちが「コロナに感染したら浪人確定」という不条理な立場に置かれているのだ。 

 

 ***

 

 今年1月に実施された大学入学共通テストでは、1月15日と16日の本試験とは別に、29日と30日に追試験が行われた。追試を受けた1658人のうち、コロナ感染のため本試を受けられなかった受験生が211人、同じく濃厚接触者を理由とする受験生が252人いたことが明らかになっている。およそ460人が追試の制度によって救われたことになる。また文科省の号令により、各大学でもコロナで受験が叶わなかった学生のために追試の機会が用意されている。2月15日には、東京大学が、コロナの影響で共通テストを受けられなかった受験生4人の受験を特例で認めると発表した。 

 

 ところが、2月4日と5日に行われた医師、13日の看護師をはじめとする22の医療関係職種の国家試験に、こうした救済措置はまったく用意されていない。試験当日にコロナに罹っていれば、その時点で1年間の浪人生活を余儀なくされるのだ。

 

  教育現場もこれを良しとしているわけではない。山梨県甲府市の「共立高等看護学院」は、ホームページで〈看護師国家試験に追試験を!〉との声明を発表したほか、 「昨年も追試措置はとられませんでしたが、現在流行しているのは重症化リスクの低いオミクロン株です。これにかかったら一発アウト、というのは不条理極まりない。厚労省は医療従事者を育てる気がないのでしょうか……」  と憤るのは、日本赤十字医療センター化学療法科部長の國頭英夫氏だ。

 

厚労省は追試を行わない理由を「本試験と同等の試験を短期間で作成するのは困難」「心身不調による理由での追試はやったことがない」としている。その一方で、大雪を理由に追試がおこなわれた2014年の看護師試験の例もある。 

 

「もはやコロナ感染は災害と同じ。大雪で追試を実施したのなら、今年だって十分実施する理由になったはずです。少々風邪を引いたって受験する子達は今までにもいたはずですが、これと違い、コロナに感染した受験生は、厚労省のいう『心身不調』のために試験に臨めなくなるわけではなく、強制的に受験を差し止められるのです。

 

厚労省は一体、感染した受験生は、自分たちが悪かったから感染したのだとでも言いたいのでしょうか? また資格試験で『同じレベルの問題が用意できない』なんて理由になっていません。仮に少々難しくしたって、1年を棒に振ることに比べれば、受験生から異論はないはず。形だけの「公平性」を振りかざして、受験資格をまるまる奪うなんて、優先順位がおかしいですよ」

 

来年、追試はあるのか

 いったいどれほどの受験者がコロナのために涙をのんだのか。改めて厚生労働省に聞くと、 「昨年度もふくめ、試験を欠席した方の個別の理由は把握していないので、人数は分かりません。14年の大雪時に追試を行えたのは、看護師試験だけの措置で、全ての医療系職種で追試を行うとなるとスケールが異なります」(医事課 試験免許室)  試験の実施前の時期には、受験生や学校関係者からの問い合わせも寄せられたという。  コロナの流行は予測不可能で、仮に来年度は救済措置を行うのであれば、数カ月あるいは1年前から準備をする必要があるだろう。だが来年度の試験の対応はどうなるのかについて尋ねると、 「いつごろ対応を検討するのかを含め、現時点ではまったくの未定です。お答えできることはありません」(同)  先の國頭氏がいう。 「試験要綱には、コロナ感染で受験できなかった場合には診断書を提出すれば受験料を返還するという規定がありますから、どれだけの受験生が“被害”にあったのかの人数は把握できるはず。厚労省の『欠席の個別理由は把握していない』というのは怠慢でしょう。それに、救済がないことでコロナと思しき症状が出ても検査を受けず、強行受験した受験生がいたはずです。厚労省は、わざわざ感染を広げるようなことをしているともいえます」  そのうえで、こう提案する。 「『全ての職種で追試を行う』という前提を外して、受験者数の多い看護師や薬剤師の試験など、できるところからやるのもやむを得ない。私は2月15日放送のBSフジプライムニュースに出演しこの問題を取り上げましたが、番組には、試験を担当する看護学校の先生の『追試になっても試験問題は作れます』との意見が寄せられていました。厚労省は試験委員に照会もせずに、自分らだけで追試は無理と結論づけているようです。必要なら委員に特別手当を出せば良い。コロナ空床補償には1兆を超える予算がつぎ込まれましたが、医療に最も必要なのはベッドよりも機械よりも『人』でしょう。その育成に労力や費用を惜しむ国家に、まともな未来があるはずありません」 

デイリー新潮編集部