この最高裁決定は最高裁判所担当裁判官らの、憲法と国際人権規約・市民的及び政治的権利に関する国際規約違反であり、裁判官たちの犯罪の証拠です。日本政府は、現在5回目の人権理事国ですが、この決定も日本が未だ法の支配を実現していないことを証明しました。

 

 被害を受けた医師と支援者のみなさん、日本政府は遠くない、おそらく年内に自由権規約委員会第7回日本政府報告書審査を受けます。

 

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乳腺外科医の準強制わいせつ事件 最高裁判決を受け、弁護団が声明「過酷な試練を与える非人間的な判断」

 

手術直後の女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた男性医師の上告審判決は2月18日、懲役2年の逆転有罪判決を言い渡した2審・東京高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)の裁判官4人全員一致の意見。

判決を受けて、被告人の弁護団は期日後に声明を発表した。以下、その全文。

 

「原判決の事実認定が不合理で著しく正義に反するとした点は当然である。

しかし、ただちに無罪を確定させることなく、本件を東京高裁に差し戻したという点は、あまりにも中途半端であり、事件から6年経過した本件について、さらに被告人の立場に置かれ続ける個人に対して甚だ過酷な試練を与える、非人間的な判断であったと言わざるを得ない。

今日の判決は、東京高裁判決の逆転有罪の最大の根拠となった医師(編注:検察側証人)の証言が信頼できないことを明確に指摘した

さらに高裁判決が有罪の根拠にしたDNA定量検査の検査結果の信頼性が不十分であることも指摘している。そうであるならば、検察官が有罪の立証に失敗したことはすでに明白であるから、最高裁は一審無罪判決を是認し、検察官の控訴を棄却すべきであった。

しかるに、DNA定量検査の信頼性についてさらに審理をさせるというのは、これまでの審理経過から考えて時間の無駄である。なぜならば、科捜研は、定量検査の根拠となる検量線や標準品の増幅曲線、DNA抽出液自体を既に廃棄している。この状態で、定量検査の信頼性を客観的に評価することはそもそも不可能だからである。

さらに今回の判決の不十分な点を指摘するならば、そもそも科捜研が鉛筆書きで多数の書き換えが行われたワークシートしか残さず、検証を行うための資料をすべて廃棄していることを踏まえて、こうした検査結果を刑事裁判の証拠に使うことは許さない、という明確な判断をすることができたはずである。

それこそ法律審である最高裁が行うべきことであったそれにもかかわらず、そうした判断をせずに、不毛な審理をさらに続けることを要求するのは、被告人とその家族にとって甚だ過酷な状況を強いるものである。非人道的というべきである

 

 

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乳腺外科医の準強制わいせつ事件、最高裁が2審有罪判決を破棄差し戻し

手術直後の女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた男性医師の上告審判決が2月18日、最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)であった。

三浦裁判長は懲役2年の逆転有罪判決を言い渡した2審・東京高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。裁判官4人全員一致の意見。

三浦裁判長は、検察側証人として出廷した医師の見解について「医学的に一般的なものではないことが相当程度うかがわれる」と指摘した上で、「専らそのような見解に基づいて、女性がせん妄に伴う幻覚を体験した可能性を直ちに否定した原判決の判断は、1審判決の判断の不合理性を適切に指摘しているものとは言えない」とした。

また、DNA定量検査の結果の信頼性について、「肯定する方向に働く事情も存在するものの、なお未だ明確でない部分があるにもかかわらず、この点について審理を尽くすことなく、被告人がわいせつ行為をしたと認められるとした原判決には、審理不尽の違法がある」とし、原判決を破棄した。

その上で、定量検査の結果がどの程度信頼し得るものであるかを明らかにするなどした上で、定量検査の結果を始めとする客観的証拠に照らし、あらためて女性の証言の信用性を判断させるため、審理を東京高裁に差し戻した。

●1審、2審判決は

1審東京地裁(2019年2月20日)は、(1)女性が麻酔による「せん妄」という状態だった可能性がある、(2)女性の乳首から男性医師のDNAが検出されたが、会話や触診などで付着した可能性があり、DNA鑑定の信用性に疑いがあるとして、犯罪の証明ができなかったと判断した。

2審東京高裁(2020年7月13日)は、1審が「せん妄の影響を受けていた可能性があり、信用性に疑問が残る」としていた女性の証言について、「迫真性が高い上、知人に送ったLINEメッセージとも符合する。男性医師がベッドの左側にいたことなどは、他の証人の証言と整合しており、犯行の直接証拠として強い証明力を有する」と認めた。

せん妄の可能性については、「事件当時せん妄に陥っていなかった、もしくは、仮にせん妄に陥っていたとしても、せん妄にともなう幻覚は生じていなかったと認められる」として、信用性の判断に影響しないとした。

また、1審が「信用性があるとしても証明力が十分であるとは言えない」としたアミラーゼ鑑定とDNA定量検査については、「科学的な厳密さの点で議論の余地があるとしても、女性の証言と整合するもの」として、信用性を補強する証明力が十分あるとした。

 

 

 

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わいせつ罪医師の逆転有罪判決を破棄 最高裁「高裁差し戻し」に同僚医師は落胆と不信感

 

現場検証が行われた病室とベッド(提供写真)

 

 事件から6年が経過──その判決内容に支援者たちは戸惑いを隠せなかった。

 

  18日、準強制わいせつの罪に問われ、1審の無罪から一転、有罪判決を下された男性医師(46)の上告審判決があり、最高裁は懲役2年とした2審の逆転有罪判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。 

 

 2016年、乳腺外科医の男性は東京都足立区「柳原病院」で30代の女性患者の乳腺腫瘍摘出手術を担当。術後、全身麻酔で意識がもうろうとし、4人部屋のベッドで寝ていた女性の左胸をなめたとして起訴された。医師は19年2月の1審東京地裁判決で無罪となったものの、翌20年7月の東京高裁判決で有罪判決が言い渡された。

 

  裁判の争点となったのは、DNA定量検査と女性が「せん妄状態」だったかどうか。1審では女性が全身麻酔から覚醒する際に性的な幻覚を体験した恐れがあり、胸に付着した微量のDNA型が被告と一致したとする鑑定結果を「会話や触診に伴う唾液や汗の可能性がある」とした。

 

  一方、2審では、せん妄に伴う幻覚を否定した精神科医の証言や、女性の記憶が詳細かつ具体的で迫真性が高かったことから、「女性が性的幻覚を見た可能性はない」とした上で、DNA型鑑定の結果も「犯行の証拠として強い証明力を有する」と結論付けた。

 

  きのうの上告審判決では女性の証言について不明確な部分があり、鑑定結果の信頼性に関しても審理が尽くされていないと判断し、2審判決を破棄。裁判官4人の意見が一致した。

「また長い戦いが続くことになる」と支援活動の医師

 

八巻秀人氏(C)日刊ゲンダイ

 

 医師とともに女性の手術を執刀し、「外科医師を守る会」の呼びかけ人として6年間、支援活動を続けてきた柳原病院の医師、八巻秀人氏はこの判決をどう受け止めているのか。 「無罪が確定するのが当然だと考えていました。高裁の判決通り、有罪にしないからいいだろうって言われても納得いきません」と、こう続ける。 「差し戻したところで、例えば再鑑定に不可欠なDNAの試薬などすでに警視庁科捜研が廃棄しています。どんな具体的な証拠で裁判をやり直すのか、まったく見えないのに、そこを判断せず、差し戻しというのは納得いきません。高裁の判決が誤っていたのであれば、1審であれだけ何度も公判を繰り返して証人と証拠を調べ尽くした結果、無罪と判断したわけですから、その通りになると信じていました」 

 

 この裁判をめぐっては全国に支援の輪が広がり、多くの医療従事者が注目している。裁判所が医療現場の実態を無視し、患者の訴えをうのみにして有罪になるようなことがあれば、医療従事者は怖くて日常の医療行為ができなくなる。今後も同じ悲劇が繰り返されると、危惧しているからだ。 「これからまた長い戦いが続くことになりますが、もう一度、気持ちを引き締めて、何としてでも彼の名誉を回復させてあげたいと思っています」(八巻秀人氏)

 

  2審のように審理が尽くされずに有罪判決が下されるようなことはあってはならない。