ODA方針を人間の安全保障と防災の主流化に抜本的転換を!

 

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5カ国に係る国別開発協力方針

パブリックコメント開始

2022年2月2日(水)〜3月2日(水)

 

◎対象5カ国

ホンジュラス
メキシコ
ネパール
モンテネグロ
ブルンジ

 

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ODAトップページ
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パブコメページ
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対モンテネグロ 国別開発協力方針(案)

 2021 年 9 月 

1.当該国への開発協力のねらい 

モンテネグロ経済は、 2008 年後半以降の世界金融危機及びそれに続く欧州債 務危機の影響を受け、一時マイナス成長に陥ったが、2010 年以降は、おおむね 回復基調にあり、独立以降 2018 年までの平均成長率は 3.2%、2019 年の成長率 は 4.1%であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020 年は 15.2%のマイナス成長となっている。また、同国初となる高速道路建設計画(総延長165キロ)の一部区間の建設費用を中国輸出入銀行からの借款で実施し ていることで、一般政府債務対GDP比が増大(59.9%(2014 年) ⇒ 76.5% (2019 年))しており、債務整理も課題となっている。 同国は 2025 年の EU 加盟を目標とし、EU 基準に合わせた制度改革に取り組みつつ、主要産業である観光業の促進、エネルギー分野などの海外直接投資の誘致、 インフラ整備などに取り組んでいくとしている。そのためのビジネス環境改善、 行政サービスの質の向上などによる民間セクターの一層の成長が重要である。 我が国は、法の支配・民主主義の定着を課題とするモンテネグロを始めとする 西バルカン諸国の EU 加盟を支援すべく、これら諸国の経済社会改革の支援と西バルカン地域内の協力促進を目的とした「西バルカン協力イニシアティブ』を主導しており、債務問題への対応も含めたモンテネグロに対する開発協力はその ために重要な役割を果たす。また、日モンテネグロの二国間関係の一層の強化に も繋がる。

 

 2.我が国の ODA の基本方針(大目標)

:持続可能な経済成長に向けた支援 民間セクターの開発や環境保全など、我が国の優れた技術や知見を活用でき る分野を中心にモンテネグロの持続可能な経済成長に向けた取組を支援する。 

また、同分野の協力は、持続可能な開発目標(SDGs)のうち、特に 3(保健)、 4(教育)、5(ジェンダー)、7(エネルギー)8(経済成長と雇用)、9(インフラ、 産業化、イノベーション)、10(不平等)、11(持続可能な都市)、12(持続可能な 消費と生産)、13(気候変動)、15(陸上資源)、16(平和と公正)の達成に寄与す ることから、これらの目標との整合性を考慮しつつ、協力を実施する。

 

 3. 重点分野

(中目標) 

(1) 民間セクター開発 モンテネグロの持続可能な経済成長のために重要な、中小企業振興、観光振興 等の分野において、技術協力を通じた支援を行う。

 (2) 環境保全 同国は大気汚染、森林火災対策や廃棄物管理などを含む環境保全分野で課題 を抱えている。EU 加盟に向けて、環境分野で EU が定める様々な基準を達成する ために更なる取組が必要とされていることから、我が国の有する技術と知見を 活かした支援を行う。 

(3) 保健医療・教育・社会サービス 同国による都市部と地方との間の経済社会サービスの格差是正に向けた取組 を支援するとともに、住民の社会基盤及び質の向上に向けて、社会サービスを提 供するための基盤整備に資する支援を行う。特に、保健医療・教育分野を中心に 女性・子どもを含む社会的弱者に直接裨益するような支援を行う。

 

 4. 留意事項 同国が国内通貨としてユーロを使用していることもあり、モンテネグロ経済 は EU 経済の影響を受けやすいため、支援に際しては EU 経済の動向に留意する 必要がある

 (了)

 

 

対ネパール国別開発協力方針(案)

 2021 年 9 月 

1.当該国への開発協力のねらい ネパールは、インドと中国の間に位置しており、同国における民主主義の定着、 安定と繁栄は、我が国にとり、政治的・経済的に重要な南西アジア地域全体の安 定を確保する上で重要である。我が国との関係では、同国は、1956 年の国交樹 立以来、皇室・旧王室関係や登山等の各種交流等を通じて伝統的な友好関係を有する親日国であり、多くの国際機関選挙・決議等でも我が国を支持している。 一方で、同国は、内陸国という地理的制約や自然災害、社会インフラの未整備、 ガバナンスにおける課題等を抱え、主要産業である農業の生産性も低く、南西ア ジアで最も所得水準の低い後発開発途上国である。同国は 2015 年の大震災から 復興の途上にあったが、新型コロナウイルス感染症の流行により、同国経済は大きく落ち込み、持続可能な経済成長が喫緊の課題となっている。 同国の発展のためには、自立的発展の中核となるガバナンスを強化し、民主主 義の定着を図り、後発開発途上国脱却のための支援を継続することが重要であ る。同国に対する支援は、良好な二国間関係の一層の発展に寄与するものである とともに、持続可能な開発目標(SDGs)の実現の観点からも意義がある。 

 

2.我が国の ODA の基本方針(大目標):

後発開発途上国からの脱却を目指した 持続的かつ均衡のとれた経済成長への支援 ネパール政府は、2026 年までの後発開発途上国からの脱却、2030 年までの中所得国入り、2043 年までの先進国入りを目標として掲げ、経済を発展させると共に貧困削減を通じて格差を是正し、国民全体に経済発展の恩恵を行き渡らせ るべく取り組んでいる。新型コロナウイルス感染症で影響を受けた社会経済の復興という視点も踏まえつつ、ネパール政府の取組を後押ししつつ、持続可能な 開発目標(SDGs)との整合性にも配慮した支援に努める。

 3.重点分野(中目標):

 (1)経済成長及び貧困削減 持続可能な経済発展の実現を後押しするため、交通インフラの整備、電力・エ ネルギー供給強化を支援するほか、新型コロナウイルス流行で改めて脆弱性が浮き彫りとなった分野として、感染症対策につながる水供給や衛生分野での取組を支援する。加えて、民間セクター開発や民間セクターの活性化を視野に入れた投資環境整備・制度改善・人材育成などを通じてネパール経済の強靱化を後押 しする。 また、格差是正のための貧困削減は引き続き重要な課題であり、貧困層が多く従事し、同国の主要産業である農業の生産性向上、教育水準の向上、保健医療へのアクセス改善、社会サービス基盤の整備等を通じて所得の向上及び生活の質 の改善を支援する。 

(2)防災及び気候変動対策 ネパールは地震、洪水、地滑り等自然災害が多発する国土であり、災害リスク を考慮した支援が必要である。災害は安定的な経済発展の重大な阻害要因とな ることも踏まえ、防災先進国である我が国として、災害に強靭な国土基盤の形成 を支援する。また、森林資源の持続可能な開発を含めた気候変動への対策を支援 する。 (3)ガバナンスと民主化の強化 民主主義を定着させることは、経済成長の実現にとっても重要であり、法整備 支援等を通じてその基盤となる制度づくりを支援する。また、自立的発展を後押 しするべく、中央及び地方政府のガバナンス能力向上を支援すると共に、社会的 弱者を含む住民のニーズを行政施策に反映させるため、コミュニティの能力強 化及び人材育成を行う。 

4.留意事項

 (1)我が国の企業、研究機関、NGO 等とも連携した我が国の技術力の活用、他 分野への裨益効果などの相乗効果も念頭に置く。 

(2)他のドナー国、援助機関による援助が進展している分野では援助の効率化 及び効果を重視するとともに、我が国として顔の見える援助になるよう配慮す る。

 (3)他のドナー国、援助機関との協調は、我が国の支援を実施する上でいかに 効果的に活用出来るかという観点を重視する。 

(4)南西アジア地域の連結性を強化することは、ネパールを含む同地域全体の 発展に繋がる大きな可能性を秘めているところ、関係諸国の動向にも留意しつ つ地域連結性に資する案件の検討に努める。

(了) 

別紙:事業展開計画

 

 

対ブルンジ共和国 国別開発協力方針(案) 

2021 年 9 月

 1. 当該国への開発協力のねらい

 ブルンジは、13 年続いた内戦が 2006 年に終結して以降、和解促進・平和定着及び 包括的な経済成長を優先課題とし、継続的に取り組んできた。しかし、2015 年 5 月 のンクルンジザ大統領(当時)三選に反対する市民デモ及び軍部によるクーデター未遂以降、内政の混乱とそれに伴う治安・人権状況の悪化が見られた。その後、政治情勢は次第に改善傾向が見られ、特に 2020 年 6 月のンダイシミエ大統領就任後、汚職 対策や諸外国との関係改善等の取組みを加速させ、国家再建の取組みを進めている。

 ブルンジは狭い国土に高密度の人口を抱え、さらに 2015 年以降の政情不安が原因で、農業インフラや農地の開発・整備が進んでおらず、農業の生産性が低く食料不足も深刻である。また、内陸国であることから輸送コストが高く、経済基盤は未だ非常 に脆弱な状態にあり、成長の阻害要因となっている。一人あたりの国民総所得(GNI) は約 270 ドル(世界銀行、2020 年)、人間開発指数は 189 か国中 185 位(2019 年) であり、サブサハラ・アフリカ諸国の中でも深刻な貧困状態にある。 我が国がブルンジの国家再建と包括的な経済発展への移行を支援することは、同国 内の「人間の安全保障」の確保及び持続可能な開発目標(SDGs)の達成に寄与する のみならず、法の支配及びグッドガバナンスに基づくアフリカ大湖地域及び東アフリ カ地域全体の平和と安定や経済発展に繋がる。また、ブルンジは、東アフリカ地域と 中部アフリカ地域の物流を陸上・湖上輸送で繋ぐ重要な役割を担っており、アフリカ 全体の発展のためにも同国の安定と経済的発展が重要。さらにブルンジは国際場裡に おいて我が国と良好な関係を築いており、同国を支援することでこの良好な二国間関 係を一層発展させることができる。 

 

2. 我が国の ODA の基本方針(大目標):

持続的な経済成長への転換と社会開発 2018 年 8 月、ブルンジ政府は「国家開発計画 2018-2027」(PND2018-2027)を策定し、

①強靱な経済と持続可能な開発のための不断かつ包括的な成長、

②民主主義及 び国家主権に基づいたガバナンス及び

③財源の活用、協力資金運用及び革新的な財源の模索に関する効率的なメカニズムを重要課題として掲げた。

また、2021 年 4 月に、 「平和、社会的、安定、経済発展の資本化に関する国家計画」を策定し、PND2018-2027 に沿って、参加型、分権型、集中的及び包括的アプローチに焦点を置き、優先課題に 取り組むこととしている。これら同国の方針及び SDGs の達成を念頭に、我が国は、 同国の持続的な経済成長への転換と社会開発への取組を支援する。 

 

3. 重点分野(中目標) 

(1) 農業開発 ブルンジでは、農業は GDP の約 28%(世界銀行、2020 年)を占め、人口の約 80% が就労する基幹産業である。農家の多くは零細農家で、政情不安定化による土地や農 村コミュニティの開発の遅れ、営農手法や灌漑の未発達により農業生産性は低く貧困 状態にある。我が国は、知見・経験を活かした農業生産技術をはじめ、営農技術及び 農村組織強化を通じ、持続可能な農業の推進及び農村コミュニティの振興を支援する。

 (2) 運輸インフラ・通関能力改善 ブルンジは内陸国であるものの、コンゴ民主共和国、タンザニア及びザンビアと共 にタンガニーカ湖に面しており、インド洋に面する東アフリカ地域と中部アフリカ地 域の物流を陸上・湖上輸送で繋ぐ重要な役割を担っている。しかし政情不安定化によ る開発の遅れから、湖の港湾施設の老朽化や非効率な国境施設運営のために、輸送効率が低く、経済成長の阻害要因となっている。したがって、港湾施設の整備及び通関 機能の改善を行うことにより、同国のみならず、同国に接する東アフリカ各国及び中 部アフリカ地域の経済成長を促進し、ひいてはアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA1) の実効に貢献する。 

(3) 基礎的社会サービスの向上 ブルンジの保健・衛生及び栄養の状況は、サブサハラ・アフリカ諸国の中でも悪く、 新生児の 1000 人に約 21 人(死亡率推計に関する機関間グループ(IGME)、2019 年) が死亡し、5 歳未満の子どもの死亡率は 1000 人中約 56 人(IGME、2019 年)となっ ている。また、ブルンジの最大都市であるブジュンブラとその周辺地域では、帰還民 や労働人口の流入による人口増加により、水に起因する疾病が蔓延し、生活環境が悪 化している。したがって、医療従事者の能力向上や医療施設の設備強化並びに安全な 水へのアクセス確保や栄養・環境管理における支援を通じ、ブルンジにおける衛生環 境の改善、乳幼児死亡率の低下及び母子保健サービスの向上を図り、ユニバーサル・ ヘルス・カバレッジの達成を支援する。加えて、ンダイシミエ大統領就任以降増加し ている帰還民や失業率が依然高い若年層を含むインクルーシブな開発に向けて、職業 訓練・雇用活性化のための支援を行い、平和構築と生活環境の向上を図る。 

4. 留意事項 

(1) ブルンジは東アフリカ共同体(EAC2)に加盟しており、東アフリカ地域統合 の推進により裨益する立場にあることから、同地域内経済発展の観点を踏まえた 支援を行う必要がある。 

(2) 反政府勢力の活動、治安情勢にも引き続き留意する。

 (了) 別紙:

 

 事業展開計画

 1 The African Continental Free Trade Agreement:2021 年 1 月 1 日から運用が開始されたアフリ カ連合のエリトリアを除く加盟国間で合意された貿易に関する協定。

2 East African Community:ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、南スーダンが 加盟している地域共同体。

 

 

対ホンジュラス共和国 国別開発協力方針(案)

 2021 年 6 月

 1. 当該国への開発協力のねらい ホンジュラスは、中南米の中でもハイチ、ニカラグアに次ぐ貧困国1であり、都市部と 地方の所得格差2も大きい。一方で、ホンジュラスを含む中米地域においては、域内の安 定と繁栄を図るため、中米統合機構(SICA)を中核とした政治・経済面での地域統合が 進められており、その円滑な進展のためには域内国であるホンジュラスの安定及び発展が不可欠である。 

同国経済は、コーヒー・バナナなど一次産品への依存度が高く、同国政府は、そのような脆弱な構造を改善するために、保税加工区(マキラ)における海外製造業の誘致や観光業など、新規産業の育成を図っているが、2020 年の新型コロナウイルス流行もあり、 国内産業の低迷には一層の拍車がかかっている。また、2009 年 6 月のクーデター発生により政治の混乱を経験し、汚職や腐敗、人権問題のほか、麻薬組織の活動などによる治安問題は、改善傾向を示しつつも依然深刻である。さらに、国外への移民の流れも引き続き顕著で、ハリケーンなど頻発する自然災害は、同国の持続的発展の大きな障害となっている。特に地方においては乳幼児死亡率も今なお高い状況にあり、初等教育の修了率も低迷している。 このような中、ホンジュラス政府は、長期的な国家開発目標として「国家ビジョン 2010‐2038」を掲げ、積極的に自国の課題に取り組む意志を表明し、持続可能な開発目 標(SDGs)の達成に取り組んでいる。我が国がその取組を支援し、同国の安定の確保、法 の支配の推進及び経済発展を後押しすることは、伝統的に友好的な二国間関係の強化に 加えて、地域統合を通じ、中米全体の安定と繁栄を促進する観点からも意義がある。 

 

2. 我が国の ODA の基本方針(大目標)

:地方活性化施策を中核とした持続的な社会経済開発への支援ホンジュラス政府の「国家ビジョン 2010‐2038」は「貧困対策」、「雇用の創出」、「産業の近代化・効率化・競争力強化」や「持続的かつ環境保全に配慮した開発」など 22 の 重点項目を掲げ、地方自治体・地域住民の参加を促しつつ、地域のニーズに合ったより 効果的な開発を重視している。我が国は、貧困削減や脆弱な産業構造の改善、及び自然 災害に頻繁に見舞われる同国の防災に重点をおいて支援を行う。 

1 一人あたり国民所得(GNI):2390 米ドル(19 年、世界銀行)

 2 ジニ係数:0.505(2017 年、中米諸国内で最大の数値)、貧困率:都市部世帯 33.0%、村落部世帯 55.2%、重度の貧困率:都市部世帯 9.7%、村落部世帯 32.1%(2018 年国立統計局データ)

 

 3. 重点分野(中目標)

 (1)地方開発 国内における経済的・社会的格差が大きく、地方の貧困度合いは都市部よりも一層深 刻であることから、特に地方産業の発展とそのために必要な人材育成などを中心に支援 を行い、地方経済を活性化させ、深刻な貧困問題の緩和及び地方から都市部、国外への移民抑制を図る。また、保健医療や初等教育などの分野においては、他国や国際機関なども支援を実施しているところ、我が国としてもこれと連携しつつ支援の実施に努める。 

(2)防災及び環境・気候変動対策 国土の 8 割が山岳地帯であり、また近年気候変動の影響が疑われるハリケーンや渇水 などによる自然災害3が頻発していることから、防災・災害対策を中心とする体制・イン フラ整備を支援する。

 

4. 留意事項 

(1) ホンジュラスにおける援助協調は、1999 年に開催された中米の復興支援にかかる支援国会合開催以降本格的に開始された。援助国会合4などで SDGs 及び「国家ビジ ョン 2010-2038」に沿った援助の実施にかかる合意が行われるなど、ドナー間での援助の協調・調和化への流れが確立しつつある。 

(2) ホンジュラスに対する開発協力の案件形成・実施に当たっては、他国や国際機関 との連携も念頭に、中米北部の移民発生の根本原因である貧困、治安

5、災害等の分野 における課題に対処すべく戦略的な対応に留意する。

 (了)

 

 

 

対メキシコ国別開発協力方針(案) 

2021 年 6 月 

1. 当該国・地域への開発協力のねらい メキシコは中南米地域における第二の経済大国であり、民主国家として政治的に安定している同国の持続的な成長は、域内全体の安定と発展にとって重要である。また、 同国との間には 400 年以上に及ぶ交流があり、同国における日系人の数は約 7 万 6 千 人と、中南米の中でも 3 番目に多い。同国は対外的な経済自由化を推進しており、2005 年の日本・メキシコ経済連携協定(EPA)発効以降、両国の経済関係は飛躍的に発展している。同国に進出する日系企業も、自動車関連企業を中心に中南米で最も多い。 また、同国は TPP11 締結国であり、2020 年には議長国を務めるなど、自由貿易を推進 している。メキシコは、我が国と基本的価値を共有する戦略的グローバル・パートナ ーであり、今後も、同国と我が国との外交・経済関係は一層深化することが期待され る。 メキシコは高中所得国と呼ばれるまでに経済成長を遂げているが、依然として国内に大きな社会格差、貧困問題を抱えており、雇用・所得状況の改善、食料自給率の向 上・貧農救済、福祉環境の向上等が重要課題となっている。さらに、同国は中米諸国から米国を目指し、同国を通過する移民受入れが負担になっている他、同国からも米国を目指す移民が発生している。 これらの課題に対し、メキシコ政府は「国家開発計画 2019-2024」を策定し、弱者 支援、福祉環境向上を中心とした社会政策、国内市場の強化、国内インフラ整備(道 路、港湾、鉄道、エネルギー等)及び貧困解消のための中小規模農家への支援といっ た経済政策を長期目標として掲げている。 我が国としては、メキシコの持続的な社会・経済成長が同国の発展や包摂性向上につながるよう、協力を行う。

 

 2. 我が国の ODA の基本方針(大目標)

:包摂国家の実現に向けた持続的な社会・ 経済開発への支援 我が国は、国内産業強化や貧困対策に資する協力を通じ、社会・経済の発展に伴う 国内の課題解決に貢献し、また地域の連結性向上に資する協力を通じ、同国と中南米 域内の発展に寄与する協力を行う。これらの協力の成果は、SDGs の達成に影響・寄与 することから、これらの目標との整合性を考慮しつつ、協力を実施する。

 

 3. 重点分野(中目標) 

(1)経済の伸展に伴う社会課題 メキシコの社会・経済の発展に伴い、格差拡大が顕在化していることから、国内産 業強化及び包摂性向上に資する支援を実施する。産学官の連携等さまざまなアプロー チから総合的に取り組む。 

① 中小企業支援・地方での所得向上:裾野産業を構成する中小企業の技術力向上お よび人材育成等に向けた協力を実施する。また、農村部を含む地方での所得向上に 向けた協力も行う。 

② 持続的開発を阻害するリスクの緩和:気候変動を含む地球規模課題(生物多様性 の保全、森林減少等)及び地震を中心とした災害への対策能力強化への協力を行う。

 ③ 社会的弱者支援:医療技術の向上に資する協力、高齢化社会への対応に向けた協 力を行う。また、同国南部の貧困対策への協力も行う。

 (2) 域内の知恵の連結性強化(三角協力) 2018 年 12 月に我が国が提唱した「日・中南米連結性強化構想」を踏まえ、知恵の 連結性強化に向けて、日本メキシコ・パートナーシップ・プログラム(JMPP)を活用 し、中米北部 3 か国(グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル)等の中南米地域 に共通の開発課題を解決するための三角協力を行う。 域内共通課題に貢献すべく、中南米地域が抱える開発課題に対し、メキシコが提供 可能な援助リソースと第三国のニーズのマッチングを図り、必要な技術協力人材の育成、および援助実施能力の強化等に向けた協力を行う。 

4. 留意事項

 (1)ジェンダー平等と包摂 「国家開発計画 2019-2024」にある三本柱の一つとして「福祉」、横断軸の一つとし て「ジェンダー平等と包摂」が謳われており、女性・高齢者・障がい者・先住民・移民といった社会的弱者への協力、及びエンパワメントに留意する。

 (2)官民連携の促進(日本企業の海外展開支援) 民間企業、政府、教育機関の参画による産学官連携を重視した事業や、日本企業の製品・技術の紹介及び関係民間企業のマッチング等に引き続き取り組んでいく。 

(3) 日系社会との連携強化 未来の日系社会を担う人材の育成を強化し、日系社会との連携促進を図る。 

(了)

 

 別紙: 事業展開計画