急がれる援助物資の輸送

 

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■1/20(木) 20:45 CNN.co.jp

 

トンガ首相、火山噴火は「かつてない災害」 NZ当局はさらなる噴火と津波を警告


大部分が灰に覆われたトンガの大地=17日

(CNN) 南太平洋の島国トンガのソバレニ首相は18日、同国沖で発生した大規模な火山噴火および津波により、「かつてない規模の災害」が引き起こされたと述べた。一方でニュージーランド当局は、さらなる噴火について警鐘を鳴らし、通信が途絶えている離島への支援物資輸送を困難にしかねないと指摘している。

映像で見るトンガの被害の様子

15日に起きたフンガトンガ・フンガハーパイ海底火山の噴火以来、同国政府は18日に初めて更新された公式情報で、3人が死亡、複数人が負傷したことを確認するとともに、被災地域の被害規模についての概要を明らかにした。

ソバレニ首相は、36人が居住するマンゴ島では全家屋が損壊し、フォノイフア島では現存する住宅は2棟のみで、239人が暮らすノムカ島でも甚大な被害が出ていると説明。「トンガはかつてない災害に見舞われた」と述べるとともに、同国の全域を覆うまでに「火山によるきのこ状の噴煙」が拡大し、全人口10万人超が影響を受けたと指摘した。同国はおよそ170の島々から構成され、うち36の島々に人々が居住している。

ニュージーランド外務省は18日、さらなる火山噴火の可能性について警鐘を鳴らし、津波のリスクを引き起こし得ると指摘。

この見解は、同国の地学研究センターである地質核科学研究所によるモデリングに基づいたもので、「最もあり得るシナリオは、数日から数週間にかけて噴火が続き、トンガとニュージーランドへの津波のリスクが続くというものだ」と述べた。

15日の噴火では、最大15メートルの津波が発生し、本島トンガタプ島の西海岸およびエウア島、ハーパイ諸島を襲った。

国連の報道官は、トンガ当局の初期評価により、人口の大部分が暮らすトンガタプ島で住宅100軒が被害を受け、50軒が損壊したことが分かったと述べた。同島では避難施設が開設されておらず、住み家を失った人々は多くの場合、親族の元に身を寄せているという。またエウア島では、89人が避難施設にいる一方、さらに外部の島々からの情報は乏しいままだとした。

急がれる援助物資の輸送
今回の壊滅的な状況についての詳細は18日、同国に近いオーストラリアやニュージーランドが実施したトンガへの偵察機の飛行によってはじめて明らかになった。

写真によれば島全土の集落は現在、かつての青々とした緑色から、厚い火山灰に覆われて灰色となり、多くの住宅が損壊もしくは全壊している。

赤十字社によると、海水および火山灰によってよどんだ水たまりが広がって飲料用の水源が汚染されているという。

また支援物資の輸送は、国際空港の滑走路を覆う降灰によって妨げられている。ニュージーランド当局は復旧支援のために、海軍の船舶2隻を派遣しているが、到着は21日になるという。

世界保健機関(WHO)の瀬戸屋雄太郎トンガ連絡事務所代表は、援助物資を積載した飛行機の到着は20日に到着すると考えていると述べた。

同代表は19日、CNNの取材に対して災害発生当時の状況を説明。「噴火の後は当初、屋根から雨のような音がしていたが、実際は雨ではなく、空から降ってきた小さな粒子だった」と話した。この粒子の後には非常に細かな火山灰が続き、翌朝までには「各所で2センチ積もった灰色の雪」といった様相を呈したという。現在も除去作業が続いており、救助隊員らは不足している安全な飲料水の配送に追われている。

国際赤十字・赤新月社連盟の太平洋地域代表部でトップを務めるケイティー・グリーンウッド氏は、「安全な飲料水へのアクセスを確保することは喫緊の最優先事項」とし、下痢やコレラといった疾病のリスクが高まっていると指摘した。

また同国は、新型コロナ感染症のパンデミック(世界的大流行)の間、感染例の報告が1件にとどまっており、オミクロン変異株が急速に拡大する国々から訪れた援助関係者が、新型ウイルスを持ち込んだ場合、同国初の流行が起きる懸念もある。WHOで太平洋地域における新型コロナ感染症の関連事項を統括するショーン・ケーシー氏によれば同感染症を地域社会にもたらすリスクがあるため、同機関はトンガに対して国際援助チームを派遣しない意向だという。

 

 

 


■1/18(火) 17:56 ナショナル ジオグラフィック日本版

 

トンガ火山噴火、何が起きたのか、1秒間に100回の雷


大量の雷、衝撃波、津波、年末に始まった噴火
2022年1月15日、トンガ王国の海底火山が恐ろしいほどの大噴火を起こした。日本の気象衛星が撮影したこの画像の右手に噴火の様子が確認できる。(PHOTOGRAPH BY JAPAN METEOROLOGY AGENCY VIA AP)

 2021年末、南太平洋の島国トンガで、海面から顔を出していたある火山島フンガトンガ・フンガハアパイが噴火を始めた。当初は灰色の噴煙と控えめな爆発が起こる程度のもので、トンガの住民以外に気付く人もほとんどいなかった。


 年明け早々にいったん活動が穏やかになったが、その後一転して激しくなり、高く上がった火山灰の柱は、記録的な量の雷を発生させた。「1分間に5000~6000回、つまり1秒間に100回の雷が発生するようになったのです。信じがたい量です」。気象測定を行うフィンランドの企業ヴァイサラ社のクリス・バガスキー氏はそう述べている。

 そして1月15日、火山は凄まじい爆発を起こした。大気は吹き飛ばされ、衝撃波となって音速に近い速さで島から放射状に広がった。ソニックブーム(衝撃波に伴う音)は、2000キロ以上離れたニュージーランドでも聞かれ、衝撃波は最終的に地球を半周して1万6000キロも離れた英国にまで到達した。

 人々を震え上がらせたのは、その後すぐに発生した津波だった。津波は火山から数十キロ南、首都ヌクアロファがあるトンガタプ島を襲った。通信は遮断され、街は洪水に見舞われた。規模は小さかったものの、津波は広大な海を越えて北米太平洋岸北西部にも押し寄せた。

 同火山の地史に関する最近の研究によると、今回のような激しい活動は、およそ1000年に一度しか起こらないと考えられている。願わくば、最も激しい噴火はすでに終わったと考えたいところだ。しかし、たとえそうだったとしても、すでに被害は生じている。

 トンガにとって「これは壊滅的な打撃になる可能性があります」と語るのは、米スミソニアン協会の火山学者ジャニーン・クリプナー氏だ。「現時点では、わかっていることよりも疑問の方がはるかに多い状態です」。それでも、地殻変動や地質学的な要因と、それが今後の火山にどのような影響を及ぼすかについて、科学者たちが知っていることを以下に紹介する。

強力な火山が集まる場所


 フンガトンガ・フンガハアパイは、南太平洋の火山密集エリアに位置している。周辺の火山は、波の上に顔を出しているものも、海底にあるものも含めて、激しい噴火を起こしやすい傾向にある。過去には、噴出物が都市ほどの大きさに広がったり、火山がそれ自体を吹き飛ばしてすぐに新しい島が形成されたりといった事例もあった。

 これほど多くの火山がひしめいているのは、太平洋プレートがオーストラリアのプレートの下に継続的に潜り込んでいるためだ。プレートがマントルの超高温の岩石の中に潜っていくと、プレート内部にあった水分が分離する。その水分の働きによってマントルが溶けることで、ガスを含んだマグマが大量に生成されて、爆発的な噴火を起こす条件が整う。

 フンガトンガ・フンガハアパイも例外ではない。島は幅19キロ超の海底火山の先端に位置し、噴火によってときに新たな陸地が海面に顔を出しては、浸食によって再び削られていった。2014~2015年の噴火では、安定した島が形成され、じきに色とりどりの植物やメンフクロウが見られるようになった。

 2021年12月19日に再び噴火を始めたときには、何度か爆発を繰り返し、高さ16キロの噴煙が立ち上ったが、「異常な様子は何も見られなかった」と、英ブリストル大学の火山学者サム・ミッチェル氏は言う。それからの数週間で、火山からは、島の広さを50%拡大させるほどの溶岩がたっぷりと噴出した。やがて新年を迎えるころには、火山は落ち着きを取り戻したかのように見えた。

 しかし先週、事態は一変した。

大噴火


 火山活動が激しさを増し、噴煙からは大量の雷が発生するようになっていった。火山から雷が発生するのは、噴煙中の灰の粒子がお互いに、あるいは大気中の氷とぶつかって電荷を発生させるためだ。

 トンガの噴火による雷は、当初からヴァイサラ社のグローバル雷検知ネットワーク(GLD360)によって検知されていた。最初の2週間は、1日に数百~数千の雷が記録されることもあったが、これはとりたてて異常なことではない。

 ところが14日から15日にかけては、火山によって発生する放電が数万回に及び、ある時点では1時間で20万回を記録した。2018年に起こったインドネシアの火山島アナククラカタウの噴火で見られた放電が1週間程度で34万回だったことを考えれば、この数の凄まじさがわかるだろう。

「自分の見ている数字が信じられませんでした」とバガスキー氏は言う。「火山では普通はあり得ない、とんでもない数字です。あの夜、地球上であれほどの電気を帯びた場所はほかにありませんでした」

 今回の噴火では、なぜ記録的な数の放電が生じたのだろうか。

 水があると雷が発生する確率は高くなると、米ニューメキシコ州ロスアラモス国立研究所で火山の音響を研究するキャサリン・マッキー氏は言う。マグマの中にとらわれた水が激しく熱せられて気化し、マグマが何百万個もの小さな破片となって吹き飛ばされる。その粒子が細かく、数が多いほど、より多くの雷が発生する。

 ドイツ、ミュンヘン・ルートヴィヒマクシミリアン大学の実験火山学者コラード・チマレリ氏によると、水蒸気はまた、噴火の熱によってまたたく間に気温の低い大気の高層にまで運ばれ、そこで氷になる。これによりさらに多くの粒子が供給され、雷の発生につながる。

 ただし、現時点ではまだ、今回の噴火がこれほどの雷を発生させた理由を断言することはできない。

トンガ火山噴火、何が起きたのか、1秒間に100回の雷
1/18(火) 17:56配信

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ナショナル ジオグラフィック日本版
噴火の前兆
 驚異的な量の雷のほかにも、火山の壊滅的な爆発の前兆は存在した。15日の朝には、衛星画像によって、島がもはやかつての姿を留めていないことが明らかになっていた。島の中央部が、おそらくは爆発の勢いが増したせいで消失していたのだ。

 やがて大爆発が引き起こされると、衝撃波は猛烈なスピードで地球上を駆けめぐった。その後すぐに津波が発生し、これはトンガ諸島の島々に衝突した後、太平洋のかなたへと広がっていった。

 米ウェスタンワシントン大学の地震学者・火山学者であるジャッキー・キャプラン=アワーバック氏は、この爆発には「信じ難いほどのエネルギー」が込められていたと述べている。ただし、津波の正確な原因を突き止めるには、まだ十分なデータが揃っていない。

 こうした現象が発生するには、大量の水を移動させる必要があり、これは水中爆発か、火山から突然大量の岩石が海に落下する崩落現象、あるいはそうした要素が複合的に作用したときに起こる。

 キャプラン=アワーバック氏は、結論はまだ出ていないとしつつも、これほどまでに強烈な爆発と津波が、たった一つの、比較的小さな火山島から発生したという事実は、「この噴火の驚異的なパワーを物語っています」と述べている。そして、主要な津波の原因ではないものの、衝撃波自体もまた、別の大きな波を生み出す引き金となった。急速に移動する空気が波に衝突し、その力によって水が押しのけられたこの現象は、メテオ津波(気象津波)と呼ばれている。

 ニュージーランド、オークランド大学の火山学者シェーン・クローニン氏はブログで、なぜ今回の現象がこれほどまでに激しいものになったのかを探る手がかりは、内部のマグマが生み出すパワーが時間とともに高まる、火山の化学的性質にあると述べている。

 ほかの多くの火山と同様、フンガトンガ・フンガハアパイもまた、大規模な噴火が起こった後には、改めてマグマ溜まりにマグマを再充填する必要がある。同地域で最後の大噴火が起こったのは1100年前のことであり、それ以来、マグマが蓄積されていった。マグマ溜まりがほぼ満杯になると、少量のマグマが火山から漏れ出し、おそらくはこれが2009年以降の噴火の背景にあったと思われる。

 しかしながら、「いったん再充填されれば、大量のマグマがガス圧を上昇させ始め、小さな噴火による放出が追いつかなくなっていきます」とクローニン氏は言う。そのままの状態はもはや保てず、そこに溜まっていた溶けた岩の大半が一度の爆発で一気に放出される。

トンガの未来は
 トンガ王国の人口はおよそ10万人であり、その4分の1が首都に住んでいる。「現在判明していないことの中でもいちばん大きな問題は、トンガの人々がどうなっているのかがわからないことです」とクリプナー氏は言う。ミッチェル氏もまた、今回の噴火は「トンガにとって、信じられないほどの壊滅的な被害をもたらした可能があります」と述べている。

 そして、「噴火はこれで終わりなのか」というだれもが知りたがっている質問に対して、クリプナー氏はこう答えている。「わたしたちにはわかりません」

 これほどの勢いの噴火であれば、火山の浅いマグマ溜まりをうまいこと吹き飛ばし、溶融した内容物を迅速に放出させた可能性はあると、ミッチェル氏は言う。今回の噴火については、今後火山学者たちによって徹底的な研究が行われ、それは将来的な噴火への理解を深め、その影響を軽減するために役立てられるだろう。

 しかし、現在はまだ、今回の噴火がどのような展開を見せるかを確実に知ることはできない。今はただ、だれもがフンガトンガ・フンガハアパイを油断なく見張っている。

文=ROBIN GEORGE ANDREWS/訳=北村京子



https://news.yahoo.co.jp/articles/f1bcb9d5cc38faa3384fffe9a3331ad6dd10c242?page=1