無罪確定の男性の指紋やDNAデータ、国に削除命令 名古屋地裁
名古屋地裁前に集まった支援者に「勝訴」を報告する原告側=2022年1月18日午後1時20分、名古屋市中区三の丸1丁目、山崎輝史撮影
無罪判決が確定した男性が、捜査で採取されたDNAや指紋などのデータの抹消と損害賠償を国と愛知県に求めた訴訟の判決が18日、名古屋地裁であった。西村修裁判長は国にデータの削除を命じた。原告側弁護士は「こうした判決は初めてではないか」と話している。
男性は名古屋市瑞穂区の奥田恭正さん(65)。
2016年10月、自宅近くの高層マンション建設に抗議していたところ、工事業者の現場監督を突き飛ばしたとして暴行容疑で現行犯逮捕された。
名古屋地裁は18年2月、防犯カメラの映像からも突き飛ばす行為はなかったと認定して無罪を言い渡し、確定した。
国は無罪確定後も指紋やDNA型などのデータを保管しているという。
奥田さんは同年7月、データの抹消などを求めて提訴した。
無罪確定後のデータ保管は、憲法が定める人格権の一部である、プライバシー権や自分の情報の公開範囲を決める権利の侵害だと主張。
根拠法や必要性、合理性がなく、将来罪を犯す可能性があると扱われるのと同じで、「屈辱的で、著しい人権侵害」と主張していた。
国側は、採取や保管は国家公安委員会の規則に従っており、その目的は特定の事件の捜査に限定されていないなどと反論していた。
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「手錠をかけろ」 自宅前に15階建てマンション建設 抗議中に逮捕
2021年11月1日 17時00分
マンション駐車場前に立つ奥田恭正と自宅(左奥)=名古屋市瑞穂区
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現場へ! 名古屋マンション紛争①
「手錠をかけろ」。鋭い声に、自分から両手を差し出していた。
2016年10月7日朝、名古屋市瑞穂区の薬局経営、奥田恭正(やすまさ)(65)は自宅前の高層マンション建設に抗議中、暴行容疑で愛知県警瑞穂署に現行犯逮捕された。現場監督を突き飛ばし、走行中のダンプに接触させたという疑いだ。
現場は電機メーカーの社員寮跡地。寮は3~4階建てだったが、マンションは市道沿いを15階建て、奥を6階建てにするという。
驚いた。父の代から住むのはほとんどが戸建ての住宅街だ。だが、市の都市計画では市道から20メートルは「近隣商業地域」で、高さ45メートルまで許されているというのだ。
説明会の録音が残っている。
日照や風の害は? 戸建てに…
■2020年8月23日 5時00分
現場近くの住民からもDNA 「拒否して疑われるの嫌」
八百屋、酒屋、精肉店など昔ながらの店が並ぶ東京都中野区の商店街。
この近くのマンションで2015年8月、住人の劇団員の女性(当時25)が殺されているのが見つかった。首を圧迫されるなどした窒息死だった。
警視庁の捜査で、被害者の手の爪の間から微量の皮膚片が見つかった。襲われた被害者が抵抗した際、犯人の皮膚をかくなどして爪に残ったものとみられる。
警視庁はこの皮膚片から抽出したDNAを鑑定し、DNA型を検出。このデータは警察庁の「遺留DNA型データベース」に登録されたとみられる。
事件は発生から約7カ月後、急展開をみせた。
「究極の個人情報」とされるDNAやその型の鑑定結果を、警察はどのように扱い、どう運用しているのか。DNA捜査の実態を追う。
周辺からいなくなった人物を捜…