室蘭市は「専門家」の意見により「受け入れ」を
決めたと言うが、それ偏ってます!
会員および賛同者のみなさまへ
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
年始休暇中なので、今までのできごとを、見直してみようと思います。
青山室蘭市長は、「放射能付きPCB」の受け入れの判断をした切り札は専門家へのヒアリングの結果だった、と述べています。しかし、当初は専門家の名前も内容も一切非公表でした。
一方で「拙速に受け入れるべきではない」と、撤回を求めてWEB記者会見を行った有識者もいます。原子力市民委員会の茅野恒秀さん、大島堅一さんで、名前を明らかにし顔も見せての発言です。また、原子力市民委員会としての声明も、有識者13名が名前を連ねて出されています。http://www.ccnejapan.com/?p=12780
青山室蘭市長は、自分にとって都合のいい意見だけを聞いて判断したことになります。
市長が、より深くこの問題を考えようとするならば、耳障りな意見を言う人とも対話すべきです。そして、両方の意見を考慮しながら、独自の方策を練ることだってできるはず。
今からでも、一度判断を白紙に戻し、市民との対話も含めて、やり直していただきたいと思います。
さらにこの判断は、ここで終わる話ではありません。環境省は、わざわざ「放射性物質汚染対処特措法」を使うと明言しています。これが意味するところは、「次は8000ベクレル/kgまでのものなら法律違反にはなりません」「原発事故の影響を受けなかった室蘭で受け入れても何の問題ないので、他の地域でも受け入れてもらいます」となることです。市長も北海道知事も、原発事故で出た放射性廃棄物を全道・全国へばら撒くきっかけを作った首長になります。これは重い判断なのだと認識してもらいたい。
なお、当初室蘭市は2人の「専門家」という言葉を使っていましたが、12/23日以降は「有識者」に変更しました。低線量の放射線が人体に与える影響を専門に研究している人は非常に少なく、国際放射線防護委員会報告でも分からないとの見解です。
『吉田氏は主にごみ処理場の諸問題を研究されている方で、放射性物質の人体に与える問題を研究していませんし、放射性物質に汚染された廃棄物処理の専門家ではない。久下氏は、環境に放出された低容量の放射性物質の公衆への影響を疫学的に研究する人ではない。つまり、この問題の専門家とは言えないので、今回の室蘭処理への発言も一般的な話にならざるを得ない』 そのような指摘があり、「有識者」と変更したのだと思われます。
【参考】室蘭市のHPに名前と答申内容が出ています。
https://www.city.muroran.lg.jp/main/org3300/pcb_hukusima.html
ウォッチャーズブログ https://hairokinzokuwatchers.blogspot.com/
saiensuki@frontier.hokudai.ac.jp 柳田A(メール担当)(2022/1/1)
■【PCB】毎日新聞(2021.12.27)「深海に及ぶPCB汚染 二枚貝被害「もう一つの生態系」に影響も」
深海に及ぶPCB汚染 二枚貝被害「もう一つの生態系」に影響も
天然には存在しない有害物質「ポリ塩化ビフェニール(PCB)」による深海の汚染が予想以上に広がっている。餌を食べずに生きる貝からも検出され、陸から遠く離れた海域でも見つかった。浅い海とは独立した生態系を持つ深海で今、何が起きているのか。
海洋研究開発機構の研究チームは2019年8~9月、有害物質による汚染状況を調べるため、有人潜水調査船「しんかい6500」で相模湾・初島沖の水深約900メートルの深海底を調査した。海底から水が湧き出てミネラルが豊富な海域で、これらを栄養源にした生き物による生態系が広がる。太陽光が届き、光合成をする植物プランクトンなどが中心の浅い海の生態系からは独立した「もう一つの生態系」だ。
湧水(ゆうすい)の周辺では、体長10センチほどの二枚貝が密集していた。自分では餌をとらず、エラにすむ細菌が作る有機物を栄養にして生きているシロウリガイの仲間だ。チームはロボットアームを使って網状のスコップで貝を採集。実験室に持ち帰って調べると、貝に含まれる脂肪分1グラムあたり平均24ナノグラムのPCBが検出された。
PCBは人工的に合成された物質だ。水に溶けにくく、熱で分解しにくいなど化学的に安定していることから、電気機器の絶縁油など幅広く使われていた。一方、脂肪に溶けやすく、生物への毒性が高い。ヒトの体内に蓄積されると、色素沈着などの皮膚症状、関節の腫れなど多様な中毒症状を引き起こす。
日本では1968年、製造過程でPCBが混入した食用油による食中毒事件「カネミ油症事件」が起き、患者の子や孫への健康被害も指摘されている。国内では74年に製造や輸入、使用が原則禁止された。
だが、PCBの環境汚染は現在も続く。加えて、プラスチックごみが細かく砕けたマイクロプラスチック(MP)の表面に吸着しやすく、海洋生物がMPを誤飲することで体内に吸収される可能性も指摘される。食物連鎖を通して有害物質が蓄積する「生物濃縮」が起こり、浅い海の生き物の死骸を食べている深海生物にも蓄積されていくとされる。
チームの生田哲朗研究員によると、餌をとらないシロウリガイの仲間は、食物連鎖による浅い海の生き物との関わりはない。にもかかわらず、貝から検出された濃度は、海洋汚染が深刻な東京湾などの浅い海の生物より1~2桁ほど低いものの、浅い海と食物連鎖でつながった深海の動物プランクトンなどと同程度か、わずかに下回る程度だった。
シロウリガイの仲間に蓄積されたPCBは、海水にわずかに溶けた分が取り込まれたか、偶然体内に入ったMP由来と考えられるという。生田研究員は「PCBそのものやMPによる海洋汚染が深海まで及んでいる証拠だ」と話す。
東京湾から約350キロ南下した伊豆・小笠原海域の「明神海丘(みょうじんかいきゅう)」と呼ばれる場所で、水深1200メートルの深海底から採集した二枚貝も調査したところ、PCBが検出された。
人口の多い地域に近い初島沖の二枚貝からの検出は予想されていたもので、チームは初島沖と比較するため、汚染が検出されない場所として明神海丘を選んだつもりだった。しかも潜航時、しんかい6500に搭乗した生田研究員の窓の先には、目に見えるゴミのない「非常にきれいな」世界が広がっていただけに、検出は驚きだったという。今回の結果から、有害物質の汚染が従来の想定より広範囲に及んでいる懸念が強くなった。
東京湾から南に約350キロ、水深約1200メートルの海底「明神海丘」で、熱水噴出孔に集まる二枚貝「シンカイヒバリガイ」=海洋研究開発機構提供の動画から
17年には英アバディーン大の研究チームが、太平洋で最も深いマリアナ海溝など1万メートルより深い超深海の海底で採集された甲殻類のヨコエビからPCBなどの有害物質を検出したと発表した。海洋生物によるMPの誤食と食物連鎖を経て、有害物質が海溝底にまで到達した可能性が指摘される。
深海では、「海水は約2000年かけてゆっくり入れ替わる」とされる。太陽光が届かない暗黒の世界で、低温、高圧という極限環境で生物が独自の進化を遂げ、熱帯雨林にも相当する多様性があるとも言われる。
だが、深海の生き物は成長が遅く寿命が長いため、世代交代に時間がかかる。生田研究員は「一度影響を受けると回復には長いプロセスが必要で、場合によっては一部の生物の絶滅につながる可能性もある」と警鐘を鳴らす。
一方、今回の研究では光明が見える成果もあった。過去30年間に海洋機構の潜航調査で採集し保管していた二枚貝を、生田研究員らのチームが改めて分析したところ、10年や19年に採集された貝から検出されたPCB濃度は89年や98年のものの半分程度だった。
PCBは90年代ごろから国際的に使用が規制されるようになっている。生田研究員は「近年の対策が汚染の低減に有効とみられ、今後も続けるべきだ。人間が簡単には行けない深海で、人間が出したゴミや有害物質による汚染が常態化している。深海の汚染分布をより詳しく調べていかなければならない」と話す。【荒木涼子】