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2021年12月19日 09:10沖縄タイムス

 

沖縄社会に迫るオミクロン株 入国後の“規制の穴”判明 接種済みなら基地内を自由に移動

 

 新型コロナウイルスの大規模なクラスター(感染者集団)が発生している米軍キャンプ・ハンセンで、18日も131人の感染者が確認された。「オミクロン株」かどうかは不明だが、軍属やその家族からは新たに同変異株が検出されており、基地内で広まっている疑いは強い。入国後は隔離されているとみられていた隊員らが、ワクチン接種を完了していれば基地内の移動などが認められていたという“規制の穴”も判明。日本人従業員らと接触していた可能性もあり、沖縄社会への「変異株侵入」が現実味を増している。

 

大規模クラスターが確認された米軍キャンプ・ハンセン=17日午後5時過ぎ、金武町

 

■接種者は隔離されず

 県によると、隊員は入国後、一定期間は基地外への外出が原則禁止されるなどの行動制限を受ける。しかしワクチン接種が完了している場合は規制が緩く、基地内であれば移動や施設利用が認められる。行動制限期間も10日間と短い。

 マスク着用も、接種完了者は義務付けられていなかったようだ。

 一方、県が昨年7月に確認した時には、入国後2週間は施設の中で隔離するという情報だったという。

 糸数公医療技監は「ワクチン接種が進み、行動制限の緩和につながったのかもしれない。変異株を基地の外に出してしまう可能性があり、規制を強化するように要請する必要がある」との認識を示す。

■これまで最多は72人

 18日に基地内で確認された感染者は、ハンセン以外も含めて133人。これまでの最多は昨年11月30日の72人で、大幅に上回った。基地外に居住する3人からはオミクロン株が検出されており、記者向け説明会では「市中感染が広がっているのでは」との質問も複数上がった。

 県も変異株への警戒感を強める。

 オミクロン株の感染者は、個室に入院させて他の患者から隔離。退院時には、PCR検査で陰性を2回確認する方針だ。濃厚接触者も自宅待機ではなく、管理が行き届きやすいホテルで療養してもらうという。

■気付くのが遅れたか

 県立中部病院の高山義浩医師(感染症内科)の話

 基地内でこれだけ多くの感染者が出てしまうと、沖縄社会への侵入ルートを同定することが難しくなる。12月初旬には流行が始まっていたが、米軍は気付くのが遅れたのではないか。

 部隊の入れ替わりで人の移動が増えると、感染拡大のリスクは高まる。米軍は今年1月ごろからワクチン接種を始めており、効果もかなり減弱していたはずだ。

 さらに接種済みであれば入国後すぐに基地内は自由に行動することができ、感染拡大の要因になった可能性がある。接種を終えていない人も自宅待機のため管理の目が届きにくかったと思われる。

 感染力を増しているオミクロン株について、在沖米軍と沖縄県側とでは危機意識に差があったのかもしれない。しかし、同じ地域に住む以上、沖縄県が渡航者や住民に求めているルールを守ってもらいたい。