◆ 都立小山台高校定時制の存続を求めて
   掛け替えのない学校を失くさないで!
 (『都政新報』)

小山台高校定時制の廃校に反対する会 多賀哲弥(元都立高校定時制教員)


 ◆ 3年間、募集停止を止めてきた

 東京都教育委員会は10月14日、都立高校の来年度の募集生徒数を決定しました。近年はこの教育委員会で1年先の募集停止校も予告していますが、14日には小山台(こやまだい)高校定時制立川高校定時制の募集停止予告はありませんでした。
 ということは、少なくとも2023年度までは生徒募集が続くことになります。
 都立夜間定時制4校の廃校問題を簡単に振り返ると次のような経過です。

 16年2月/小山台・雪谷・江北・立川の夜間定時制を募集停止時期未定で廃校にすることを決定。
 17年10月/雪谷高校定時制の募集停止を決定、江北高校定時制の翌年度の募集停止を予告。


 18年10月/江北高校定時制の募集停止を決定。
 19年10月/都教委に存続を求める請願(小山台分1万362筆、立川分1万2553筆)。
 20年10月/都教委に存続を求める請願(小山台・立川合同で1万3492筆)。
 21年10月/都教委に存続を求める請願(小山台・立川合同で2万9221筆)。
 19年から今年までの3年間、請願はその都度否決はされましたが、小山台と立川の募集停止の予告はなされず、生徒募集が続いています
 私たちの取り組みや都民の世論が、募集停止を食い止めていると考えています。


 ◆ 定時制ならではの「多文化共生」教育

 小山台高校定時制の人権教育、多文化共生の教育は都教委や文科省の指定校にもなり、実績を積み重むてきました。
 同校の「文科省人権教育研究指定校・研究報告」に記載されている取り組みを列記します(学校HPに詳細な記述があります)。

 ①学校設定教科「多文化理解」=「ことばと生活」で中国語や韓国語を学び、多文化への関心を高め、「世界と出会う」で日本文化の理解とともに、他国の文化を理解・尊童する人間をめざす。

 ②学校設定教科「市民科」=「社会参加」で、日本の選挙制度・健康保険や年金保険など社会保険の仕組み・労働法の基礎知識などを学び、日本人と外国人の生徒が共に社会に参加していくために必要なことを学ぷ。「共に生きる」は、お互いを尊重し合える態度を身に付ける学習で、自己表現の方法や他者理解の方法を学ぷ。また、外国につながる生徒の実態、生活上の課題、ヘイトスピーチ等について学ぷ。

 ③国語総合、地学基礎、世界史、現代文、日本史で別室での取り出し授業。

 ④授業前と放課後の時間帯に、大学院生・卒業生・退職教職員による日本語補習(週4回)

 ⑤外国につながる生徒や保護者の理解を助けるために、授業プリント等の教材や、保護者向けの配布物、掲示物等にルビ。

 ⑥通訳派遣の協力を得て、多言語保護者会を年2回実施。

 ⑦外国につながる生徒のために母語による相談会を月1回実施。

 他校では見られない取り組みの数々です。
 こうした実績もあって、入学する生徒の半数以上が外国につながる生徒だと言われています。
 私の知る小山台定時制の在学生も、教室にいろいろ国の人や言葉が交ざっていて楽しいと言います。


 ◆ 小山台定時制に代わる学校はない

 小山台足時制の教育は都教委も評価しています。それなのに、なぜ廃止なのか?
 都教委が理由としているのは「定時制の生徒が減っている」「勤労青少年は少ない」「チャレンジスクールへの希望者が多い」など定時制の一般論だけです。
 40校ほどある都立夜間定時制高校の中で「なぜこの4校を選んだのか」ということは一切説明していません。これが一番の問題です。

 都教委は、小山台定時制がなくなっても近隣のチャレンジスクールや定時制で「同じような教育が受けられる」と言っています。
 しかし、教育課程を見れは一目瞭然。他校では選択科目の一部に韓国語などがあるだけの散発的なもので、小山台のような総合的、系統的な教育課程にはなっていません。
 小山台の教育は独特のもので、他校の追随を許しません。小山台定時制に代わる学校はないのです。


 ◆ 都知事答弁の通りなら廃校を断念すべき

 先の教育委員会では、教育委員から

「小山台の多文化共生の教育は学校全体として体系的に取り組まれている。小山台が取り組んでいる教育活動を継承することが重要要である。どのような形で他の定時制に継承できるのか具体的な形を示してほしい」
「外国から働きに来ている保護着が義務教育を終えた子どもを日本に呼び寄せる例が増えている。彼らは日本語ができないので仕事にも学業にもつけない。調査して、都立高校で受け入れる対応を考えていく必要があるのではないか」

 などの意見が出されました。

 小池都知事も21年3月9日の都議会予算特別委員会で、「夜間定時制高校は勤労青少年だけではなく、不登校を経験した生徒、外国人の生徒などの学びの場となっている。社会人としての自立を促す上で重要な役割を果たしていると認識している」と答弁しています。
 教育委員の意見や都知事の答弁を生かすなら、定時制廃止を止める以外にありません。

『都政新報』(2021年11月2日)
(「都政新報」は東京における唯一の自治体専門紙です。都区市町村の職員や学校の管理職などが読んでる新聞で、都知事や都の幹部都議会議員も読んでいます)