◆ メディアリテラシーの重要性 (週刊新社会【青年note】)
   愛知 石川翼

 数年前、「うどんや蛞蝓亭(なめくじてい)」という店の店主が、「国際信州学院大学」の教職員に予約を無断キャンセルされ料理が無駄になったとSNSに投稿しました。
 近年は食品ロス問題に関心が高まっており、同大学は閲覧者から厳しい批判を受けました。

 しかし、この話は後に事実ではないことが明らかになりました。
 無断キャンセル以前に、そもそも蛞蝓亭(なめくじてい)も、国際信州学院大学も実在しなかったのです。
 全くの作り話を多くの人が信じ込んでしまったわけです。
 これを、よくできた作り話と評する人もいれば、悪質なデマと評する人もいます。
 確かに、大学の公式HPまで作られ、手の込んだ内容ですが、視点を変えれば、「もっともらしく装えば、人は簡単にフェイクニュースに騙される」という事例とも言えます。


 この事例は、店も大学も現実には存在しないのに、架空の大学に対する怒りや批判は現実に起き、挙句の果てには類似名称の大学にまで無断キャンセルを批判する電話が寄せられました。
 つまり、無から有が生まれました。
 こうした大衆心理を悪用すれば、架空話から世論が作られることは十分に起こりえます。

 既に騙されてしまった人を「蛞蝓亭なんて店はありません」「国際信州学院大学という学校は実在しません」と事後に説得するのは、あまりに困難かつ非効率です。
 大切なことは、メディアリテラシーを向上させ、そもそも不確かな情報に騙される人を減らすことではないでしょうか。

『週刊新社会』(2021年11月17日)

 

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