たんぽぽ舎です。【TMM:No4348】 (11月19日東京新聞朝刊25面より)

 

「明日のハナコ」  本音のコラム 
 

             北丸雄二(ジャーナリスト)

 九月の福井県高校演劇祭で上演された福井農林高校『明日のハナコ』の台本を読みました。これが頗る(すこぶる)面白い。元国語教師の手になる女子高生二人の会話劇。演劇部の小夜子が自分の芝居への勧誘で下校途中のハナコに話しかけます。その会話が今どきの女子口調で快活キビキビ、ジェンダーフリー(笑)。


 小夜子の芝居はイジメに遭った男子の話。そのイジメは学校から会社、世界に繋がっています。彼の父親は建設会社の係長で、道路建設が絶滅危惧種の鳥への環境破壊になると上司に報告してイジメに遭ったのです。 


 それを伏線に話は別の台本、1948年福井大震災時のハナコばーちゃんの話、朝鮮特需や原発特需の話、忘れた頃に訪れた「3・11」からの美浜原発再稼働、そして一気に十万年後の世界での二人の会話に飛ぶのです。「女子高生なめんな」という台詞どおりのドライブ感で。


 演劇祭のTV放映でこの劇だけが除外されました。DVDも作らず台本も顧問が管理、生徒の手に渡らないようにするそうです。会話で差別用語が使われ、公開で生徒に抗議が来たら守り切れない、が表向きの理由。本音は政治的に過ぎて大人側が責められるから?


 「保護」を口実に若者が現実から目隠しされる。イジメも政治も、十万年後まで封印すれば忘れると高を括(くく)っているのでしょう。女子高生をなめてます。
           

      

 

━━━━━━━ 
【狂歌】ジングルベル順ぐり減ると非正規は 雇い止めあり 貯金などなし
            乱鬼龍の森羅万笑        転送歓迎 
━━━━