◆ 労働組合を悪人に仕立てた警察とメディア
   ~関西生コン事件を検証するシンポジウム
 (レイバーネット日本)

 


 11月12日夜、東京・連合会館で関西生コン事件を検証するシンポジウムが開かれた。今回は、「ジャーナリズムの視点から見た関西生コン事件」をテーマに3人のパネリストによる対話を海渡弁護士のコーディネーターで勧められた。(宮川敏一)

 ★ 刑事事件
 この1年で4件の一審判決が出た。
 4件目の武健一前委員長事件で恐喝とされた事件が無罪になった。しかし、他の3件は労働組合活動、産別運動に無知・無理解の不当判決だった。


 憲法28条(労働基本権)は、労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権))の規定が設けられている。

 【開会】 ★ 勝島一博(支援する会共同代表)


 憲法28条を無視した労働組合潰しをやめない。4年で八つの裁判があった。

 事件の本質を全国に広めよう。置かれている実態を全国で広めたい。世界は産業労働者組合が主流になっている。

 【コーディネーター】 ★ 海渡雄一弁護士(支援する会共同代表)


 難しい進行役ですが頑張っています。よろしくお願いします。関西生コン事件の真相を探るために3人の皆さんから発言をお願いします。

 【パネリスト】
 ★ 竹信三恵子(和光大名誉教授)
 関西生コン事件で延べ89人が続々と捕まり、それを聞いて「何それ?」と思った。「それって日本の話?」と聞いてしまった。私の周りでも皆、同じことを言う。
 日本には憲法28条があり、労働基本権がある。短絡して聞くと「暴力を振ったの?」など返ってくる。「それで捕まったの?」とみんなが言う。
 しかし、逮捕容疑の中で、暴力行為、傷害は一件もない。なんか変? 誰か取材で誰も書かないかな? 変だと思った。変だと思ったら自分で書かないといけないと思い取材がはじまった。
 労働運動がストやっちゃいけない。ストが業務妨害だったら何もできない。労働組合の手と足が縛られて行くのと同じ。
 労使交渉で賃金を上げることが見えなくなってきている。賃金を上げる企業に保証金を出すとか、これおかしくないですか?
 この問題は簡単だ。「産業別労働組合は労働組合じゃないんだ」とレッテルを貼る。産別行為の労働組合員を次々に逮捕をする。これは暴力団だと勝手に規定する。そうすると労働法に抵触せず、暴力団の違法行為として刑事事件で逮捕をする。
 とんでもない筋書きで行われてきた。憲法28条の解釈改憲をやられている。どっかで止めないと組合運動ができなくなってします。
 決めるのは警察だから、社会運動もいつもビクビクするしかない。そもそも社会運動は労使の力関係でやるもの。
 警察発表でメディアは動く。だから逮捕が続くと関西生コンは悪いと、事実に反して決めつけられる。SNSにしても悪宣伝が氾濫する。

 ★ 花田達朗(早大名誉教授)
 日本では労働運動というが、ドイツでは労働者運動という。運動の主語は労働者です。
 企業別労働組合も企業内労働組合です。企業の中にある。また、日本の産業別労働組合は労連を指している。ドイツ、欧州で言っている産業別労働組合と異なる。
 ドイツを例に取れば個々の企業と契約していない。労働者個人が任意で加盟する。個人加盟をする、これが産業労働組合。これがドイツでは労働者の組織源になる。
 関西生コンを例に取るならば、資本家は、そんな労働組合は困ると狙い撃ちにしている。関西生コン支部が行っているのは、日本の労働組合の原理原則を問いただすことになる。危機感を抱いている。
 ジャーナリスト組合の産業別労働組合がないから、関西生コン支部の攻撃を理解できない。だから書けない課題がある。

 ★ 北健一(ジャーナリスト)
 私も関西生コン支部に問題があり、警察が来たのかと当初は思った。関西生コン支部の人に実際に思ったことを書きなさいと言われ、取材がはじまった。
 武さんが逮捕されるとき、産経新聞は「大変なことになりますよ」と報道した。業者に恐喝、組合幹部逮捕と書かれた。「大変なことになりますよ」は関西生コン支部の幹部、組合員の声ではない。実際は生コン協同組合の人が言った。それら事実にないことが切り抜かれ報道された。
 関西生コン支部のコンプライアンスも「優しく静にやっている」全く犯罪でもなんでも無い。路上でチラシを配ることは犯罪ではない。
 取材すると労使関係から起因する。組合が業者をいじめたのでなく、関西生コン支部に入っている人たちの仕事を取り上げたことに原因がある。不当労働行為をした会社側に警察が加わり、組合を加害者に仕立てた。
 不当労働行為の被害者になった組合員が逮捕される逆転を起こした。刑事事件を検証すると意に反して労働組合に非はなく企業と警察のでっち上げが認められた。
 「そもそも事件など無いのに、警察が入り事件を作り上げた」「労働組合に悪人のレッテルを貼る」これが関西生コン事件の構図!
 資本に都合の悪い労働者運動を権力と一部のメディアが潰しにかかった事件だった。

 【閉会】 ★ 菊池進全日建連帯委員長
 本日は87名の皆さんにお越しいただき感謝しております。ユーチューブも視聴されありがとうございます。
 関西生コン支部事件は4年半の歳月を費やしました。延べで81名の組合員が逮捕され、66名が起訴されました。大がかりな弾圧事件にもかかわらず大きなメディアの報道はされずじまいです。
 しかし、一方で発信をしてくれる人もいます。本日、問題提起をしていただきました皆さんをはじめ、会場の皆さんと関西生コン支部の弾圧をもっともっと広め、これまで出された4つの不当判決を高裁で覆し、これからの4つの裁判でも勝利の判決を勝ち取りましょう。本日はありがとうございました。

『レイバーネット日本』(2021-11-14)
http://www.labornetjp.org/news/2021/1112hokoku