◆ 市民が逆転で勝つ
名古屋高裁 愛知県警に賠償命令 (週刊新社会)
沖縄県東村高江周辺の米軍ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に愛知県警が機動隊を派遣したのは違法として、隊員の給与など約1億3000万円を当時の県警本部長に賠償させるよう愛知県に求めた住民訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁(倉田慎也裁判長)は10月7日、派遣手続きの違法性を認め、時間外手当の約110万円の賠償を命じた。
愛知県警は2016年7~12月、沖縄県公安委員会の援助要求を受け、オスプレイ配備を目的としたヘリパッド工事のための資材搬入の警備などに従事した。
愛知の他、東京、千葉、神奈川、大阪、福岡の5都府県の機動隊員も派遣され、派遣された沖縄で住民監査請求や住民訴訟が起きているが、請求が認められたのは初めて。
倉田裁判長は、判決理由で派遣決定が県警本部長の専決で処理された点について、「決定は愛知県公安委員会の実質的意思決定に基づいておらず、違法だと言わざるを得ない」とした。
判決は、「異例又は重要」と認められる場合には県警本部長の専決処分は許されず、公安委員会の議決が必要であるのに公安委員会の実質的な審議なしに専決処分で高江への派遣を県警本部長が命じたことは違法と認定している。
判決は、その前提として沖縄高江への派遣行為が「異例又は重要」なものに当たるかどうかを検討する。
その内容は、警察法2条から「政治的な中立性に対して疑念を投げかけられかねないものや、個人の権利及び自由の干渉の有無について批判を受ける恐れのあるものについては「異例又は重要」なものにあたるという基準を立て、現地に機動隊を派遣することは社会的に大きな反響を呼ぶ行為であり、米軍基地に関係した警備は「異例又は重要」なものにあたるから、県警本部長が専決で派遣したことは違法と断じている。
また、判決はその他にも、沖縄に派遣された機動隊員によって行われた車両の検問や抗議活動のビデオ撮影などを上げ、適法性、相当性に疑問が生じうるとしている。
原告弁護団は、判決が各地の地裁で同種事件の敗訴判決が続く中で高裁で勝訴したこと、公安委員会の形骸化を批判し、安易に行われている県警本部長の専決処分を違法としたこと、沖縄高江での機動隊員の行動の適法性について厳しく判断したことは高く評価すべきであるとする。
『週刊新社会』(2021年10月17日)