=たんぽぽ舎です。【TMM:No4318】【TMM:No4319】「メディア改革」連載第78回=
◆ “棄民解散”衆院選(31日)、人民の総決起で自・公・維に鉄槌を
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
◆ 安倍・菅政権の独裁・専制の悪政隠蔽の岸田選挙管理内閣
◎ 衆議院選挙用の自民党の“表紙替え”で10月4日に就任した岸田文雄首相が14日衆議院を解散した。就任からたった10日後の解散というのは1954年の第一次鳩山一郎内閣の45日間を大きく上回る歴代1位の短さだ。
キシャクラブメディアは菅義偉前首相の辞意表明から1カ月半、自民党の大宣伝をしてきたが、報道各社の世論調査で、岸田内閣の支持率は朝日新聞の調査で45%(不支持率は20%)と、発足直後の支持率としては最低を記録。毎日新聞でも過去20年間で2番目に低い49%(同40%)と低迷している。
菅政権発足時より約20ポイントも低い数字で、人民は自公とメディアによる「自民党は生まれ変わった」という情報操作に騙されていない。
昨年9月には菅氏を党首に選んだ自民党議員たちによる「選挙の顔」チェンジは早くも化けの皮がはがれてきた。
◎ 総裁選での投票や国会での首班指名の風景を見て、自民党の衆参議員が381人もいると改めて知った。「勝手解散」で、議場で「バンザイ」を叫ぶ愚かな自・公議員を、31日実施の衆議院選挙で議会に戻してはいけない。来年7月の参院選でも自・公議員を落選させよう。
テレビと新聞は安倍晋三元首相が解散後、「安全保障の根本で全く違う考え方を持っている政党と協力するのは、選挙のためだけの談合協力だ」という政権反対党非難を報じた。
口利き事件で説明会見を開いていない甘利明自民党幹事長は「自由、民主主義の政権と、共産主義が初めて入ってくる(立憲による)政権と、どちらを選ぶのかという政権選択だ」と述べた。
「維新」の松井一郎代表も「外交防衛で意見が違う立民と共産の野合」と攻撃している。
しかし、自民党と維新こそ、異質な宗教を基盤に持つ公明党と権力維持のために醜悪な野合を続けているではないか。
自・公・維は悪質な反共攻撃で、立憲、共産、社民、れいわの4党の一本化に脅威を感じているのだろう。
◎ 岸田氏(広島1区)は総裁選で「民主主義の危機と叫び、「令和版所得倍増」「金融所得課税」「新自由主義からの脱却」などを訴えたが、首相に就任10日で、悪夢のような安倍・菅政権の延長政権に過ぎないことが明らかになった。
岸田氏は10月8日に国会で所信表明演説を行い、10月11~13日には各党の代表質問が行われた。岸田氏は「民主党政権時代の6重苦」などと政権反対党を攻撃する一方、モリ・カケ・サクラ・カワイ疑獄に関する再調査を拒否した。
岸田氏は「国民の声を聞く」と言うが、彼が傾聴しているのは党内の安倍晋三元首相・麻生太郎副総裁・甘利明幹事長らの声だ。
◎ 辻元清美・立憲民主党副代表は10月11日の衆院での代表質問で、森友事件を巡り文書改竄を強要され自死した財務省職員の赤木俊夫氏の妻、赤木雅子氏が岸田首相に送った手紙の全文を読み上げて、再調査を求めた。岸田氏は「財務省の調査や検察の結論が出ている」として再調査を拒んだ。
自民党広島県連の会長代理を務める中本隆志県議会議長は5日、岸田氏を官邸に訪ね、2019年参院選で河井案里元議員の陣営に党本部が1億5千万円を送ったことについて、「県民や国民は納得してない」と直訴、再調査と党本部からの正式な謝罪を求めた。
岸田氏は「必要であればしっかり説明する」としか答えなかった。
◎ 森ゆうこ立民副代表は10月13日、参院での代表質問で「岸田さんは3月、選択的夫婦別姓制度を求める議員連合の呼びかけ人になっていたのに、12日発表の自民党選挙公約にはない。経済政策もアベノミクスの延長で、安倍前首相が乗り移ったかのようだ」と批判した。
森氏は「総理は総裁選で、『民主主義の危機だ』と言ったが、安倍元首相の『桜を見る会』に関わる国会での118回の虚偽答弁は民主主義に当たるか、という辻元議員の質問に答えなかった」と追及した。
◆ 小野広報官更迭の説明もなしにやらせ会見は菅時代と同じ
◎ 岸田氏の国会答弁は、安倍・菅両氏の答弁と中身は変わらない。
岸田氏のメディア対応はどうか。岸田氏は就任以来、内閣記者会(永田クラブ、官邸キシャクラブとも呼ばれる)のぶら下がり取材に積極的に応じている。
首相のぶら下がりは、記者会からの要請で開かれるが、首相秘書官から持ち掛けるケースもあるという。
岸田氏は4日午後9時から、内閣発足後初の記者会見を行った。14日午後7時から、衆院解散を受けて会見した。岸田氏が1時間の会見を自民党の選挙PRに使った。
岸田氏は自民党本部で会見を開くべきで、内閣記者会が首相会見をボイコットすべきだった。
NHKのニュース枠を乗っ取って開かれた会見を、ネットにアップされた民放の動画も併せて見た。4日の会見の動画と文字記録は首相官邸のHPに載っている。
https://www.kantei.go.jp/jp/100_kishida/statement/2021/1004kaiken.html
◎ 官邸での首相・官房長官の会見は形式上、内閣記者会の主催だが、4日に内閣広報官に任命されたばかりの四方敬之・前外務省経済局長が司会を務めた。
私は、首相交代後、小野日子氏が内閣広報官を続けるか注目していたが、首相交代と同時に何の説明もなく、外務省に戻り、経済局長に就いた。菅氏の置き土産の栄転人事だ。
菅政権は安倍政権末期に広報官を務めていた山田真貴子氏を留任させたが、山田氏が総務省接待・贈収賄事件で突然辞任し、3月1日、小野氏に交代していた。小野氏は広報の仕事に向かない慇懃無礼な役人だった。
◎ 官邸HPの動画では、四方氏の氏名も出ていない。動画には四方氏の広報官就任の挨拶もない。一国のリーダーの広報官が交代しても、何の挨拶もないというのは民主国家ではあり得ない。
四方氏は会見の開始を告げ、岸田氏が冒頭発言した。プロンプター(原稿映写機)を使用したが、菅氏に比べると、日本語が聞きやすく、読み間違えもほとんどなかった。政治家としては普通のことだが、安倍・菅両氏の言葉が分かりにくかったため、聞くのが苦痛ではない。ただ、「話のつまらない男」と言われたとおり、新首相の言葉も心に響くことはない。
岸田氏は「信頼と共感が得られる政治が必要。国民との丁寧な対話を大切にしていく」と述べ、「成長と分配の好循環」「私の内閣は新時代を共に創る、『新時代共創内閣』」と強調した。
岸田氏は、国会会期末の14日に衆議院を解散し、衆議院選挙を19日公示、31日投開票の日程で行うと表明した時だけは、力が入っていた。選挙のために“表紙替え”で誕生した選挙管理内閣の責任者らしい振る舞いだ。
四方広報官は「これから皆様より質問をいただく。指名を受けた方はスタンドマイクに進み、社名とお名前を明らかにした上で、1人1問質問お願いする。この後の日程があるので、進行に当たっては協力をよろしくお願いしたい」と述べた。
記者には社名と氏名を名乗れと指示しながら、自分の名前は言わない。
◎ 菅氏の政権末期での会見では、広報官が「次の日程がある」と言うのは控えていたが、復活した。
四方広報官は「まず、幹事社から質問を頂きます。読売新聞、黒見さん」と指名。黒見記者は「イタリアのG20首脳会議、英国で開かれるCOP26)への対応はどうするのか」と質問。岸田氏は「リモート参加する」と答えた。
四方氏は「続きまして、日本テレビ、山崎さん」と指名。山崎記者は「コロナ対策の関係閣僚3人を全員交代させた狙いは」と質問した。岸田氏は「3人とも有能な人材」と回答した。
四方氏は「幹事社以外の方から質問を受ける。質問を希望する方は挙手を。それでは、どうぞ」と発言した。
「自席からの発言、再質問を控えて」という要請はしなかった。
◎ 名前を言わず指名を受けた毎日新聞の小山記者は「新しい資本主義の実現会議を作ると言ったがその内容は」などと質問した。小山氏は事前に官邸報道室へ質問内容を伝え、最初に指されると決まっていたのだろう。岸田氏は「成長と分配の好循環を作り、成長の果実をどう分配していくのかを取り組む」と答えた。
四方氏は「それでは、次、では、秋山さん」と述べ、日経新聞の秋山記者が質問した。小野広報官は、会社名と名前を呼んでいたが、四方氏は社名を省いた。秋山氏は「総裁選で訴えていた金融所得課税の見直しはどうなったか」と聞いた。岸田氏は「一つの政策である」としか答えなかった。
続いて、四方氏は「では、2列目の端の方、どうぞ」と名前も言わずに指名。中国新聞の下久保記者が核兵器禁止条約に関して質問した。
四方氏は「次、七尾さん」と指名。「ドワンゴ、ニコニコの七尾です。就任おめでとうございます。よろしくお願いします」。岸田氏は「よろしくお願いします。ありがとうございます」と応じた。七尾氏は必ず、首相におべっかをつかう。
四方氏は「では、杉本さん」と指名。産経新聞の杉本記者は朝鮮による拉致問題について質問。その後、共同通信の吉浦記者、テレビ東京の篠原記者、福島民友新聞の桑田記者が質問した。
◎ 続いて、四方氏は「では、前列の大塚さん」と指名。時事通信の大塚記者が「中国に対してはどのような外交で臨むか」聞いた。
四方氏は「次の方、瀬戸さん」と指名。報知新聞の瀬戸記者は「現在の新型コロナ対策分科会を解散し、一から別のメンバーで作り直すのか」と聞き、岸田氏は「分科会を解散することは全くない。観光ほか、他の分野の有識者会議を別途作っていく」と答えた。
四方氏は「それでは、大変恐縮でございますが、次の日程との関係で、あと2問とさせていただく」と述べた。これは前任者のやり方と同じだ。「では、前列の一番端の古川さんですか」。西日本新聞の古川記者は「共創内閣は非常に抽象的で伝わりにくい」と質問した。
四方氏は「最後に畠中さん」と指名。
四方氏は「それでは、以上をもちまして、本日の…」と会見を終了させようとしたが、フリー記者枠で参加した畠山理仁氏が自席から「すみません。コロナとデジタルのことで伺いしたいのだが」と発声。不意を衝かれた四方氏は「では、最後の質問で、よろしくお願いしたい」と指名なしの質問を認めた。
畠山氏はコロナ禍での選挙について聞いた。「低投票率は政治不信に原因があると考えるか。投票率を上げるための制度、デジタル活用し、ネット投票とか、政治の側が整備すべき制度があるのではないか」。岸田氏は「政治不信もあると思う。様々な提案の何ができるのか、これを不断に考えていく」などと詳しく答えた。
四方氏は「それでは、以上をもって、本日の記者会見を終了させていただく。御協力ありがとうございました」と言って、会見を終了した。
前任の小野氏は「挙手している方は、メールで質問を送ってくれば、総理が書面回答する」と言っていたが、四方氏は言わなかった。
◎ 午後9時1分に始まった会見は、9時35分からの補職辞令交付までに終える予定だったが、最終的に倍の時間となり、15人の質問に答えた。岸田氏がフリーの畠山氏の自席からの質問に応じたのは極めて異例だ。ぶら下がりでは、若い番記者が広報官の仕切りを突破して質問することはあったが、最近の記者会見では前例がない。
岸田氏は記者の質問を聞く際、メモを取り、質問事項を聞き直す場面もあったが、これは、質疑応答に台本があることをごまかす芝居だろう。官邸側は質問する記者から質問内容を事前に仕込んでいる。
岸田氏の2回目の会見となった14日の会見は62分。12人が指名された。
https://www.kantei.go.jp/jp/100_kishida/statement/2021/1014kaiken2.html
◆ 総選挙に向け自民宣伝隊に成り下がった内閣記者会
◎ 岸田氏の冒頭発言はすべて自民党総裁としての選挙方針だった。幹事社の日本テレビの山崎記者が「予算委員会を開催せず解散に踏み切ったが、3日間の代表質問で有権者が十分な判断材料を得られたと考えるか」と聞いた。岸田氏は「衆院議員の任期は21日までで、議員の空白はできるだけ小さくしなければいけない」と答えた。
新潟日報の横山記者は「東京電力の柏崎刈羽原発では、テロ対策の不備など失態が相次いで発覚し地元の不信感が高まっている。福島第一原発事故を起こしながら、今なお不祥事を繰り返す東電に原発を再稼働する資格があるか」と質問。
岸田氏は「再生可能エネルギーの割合を増やすことは重要だが、再エネの一本足打法では安定供給や価格の問題に十分対応できない。原子力規制委員会の検査をクリアできるかを見ていく」と答えた。
14日の会見では、多数の記者が挙手を続ける中、四方氏が「大変恐縮だが、ただいま挙手している方は、後ほど一問、担当宛てにメールで送ってください。後日、書面にて回答させていただく」と述べ、「以上をもって、本日の記者会見を終了させていただく」と述べ、強制終了した。
岸田氏は会見の後、午後8時33分から自民党選対委員長と打ち合わせ、9時34分、「報道ステーション」に生出演するためテレビ朝日に着いている。記者会見より、選挙の相談と企業メディアに出ることを優先する。民主主義の国ではあり得ないことだ。
◎ 岸田氏は総裁選で、菅氏の言葉の発信力不足を批判していたが、岸田氏も記者に聞かれたことに具体的に答えない。日本語は菅氏よりましだが、中身は薄い。
岸田氏の2回の会見は、コロナの緊急事態宣言解除後に行われたが、安倍元首相が昨年4月7日の記者会見でコロナを理由に導入した、狭い部屋で参加者を制限した会見のまま開かれた。
従来は広い会見室で、約100人が参加していたが、参加制限がかかって以降は、参加者は29人(記者会常勤幹事社19社と、記者会非常勤幹事社・専門紙・雑誌・ネット・外国メディア・フリーから抽選で10人)と絞られてきた。記者会は制限撤廃を求めたのだろうか。
岸田政権のメディア対応は安倍・菅政権と変わらない。
自民党一強政治とキシャクラブ制度が存続する限り、権力とメディアの癒着構造は1ミリも動かない。