《月刊救援から》
◆ 関西生コンの闘いへ 注目と支援を!
二〇二一年七月一三日、大阪地裁が武関生支部委員長に判決を宣告した。資本と権力が二〇一八年初頭から開始した関生支部に対する一連の組合つぶしの中の事件である。
委員長はじめ数十名の組合員に対する刑事裁判、労使双方からの多数の民事裁判、不当労働行に関する大阪府労委、中労委での審査、そして何よりも現場での熾烈な闘いが今も続ている。
弁護団声明は以下のとおりである。すべての読者に、関生支部の闘いへの注目と支援をあらためてよびかける。
〈弁護団声明〉
本日七月一三日、大阪地方裁判所第一一刑事部は、武建一関生支部委員長にかかる威力業務妨害・恐喝未遂・恐喝被告事件について、懲役八年の求刑に対して恐喝事件を無罪とした上、懲役三年、執行猶予五年を宣告した。
しかし、本判決には、以下に述べるとおり、いくつもの大きな誤りかあり、すべての事件が無罪とされるべきであった。
◆ 威力業務妨害事件について
威力業務妨害事件については、柳元副委員長、西山執行委員に対して、昨年一〇月八日に本日と同じ裁判所か判決を言い渡していた。
先の判決にはその産業別労働運動の無知・無理解に対して労働法研究者などから広く批判が寄せられていたが、本日の判決は先とほぼ同旨の内容の判決であった。
被告人らの行為について、弁護人が労働組合活動としての正当性を主張したのに対し、判決は被害者とされる企業には関生支部組合員が雇用されていないから、争議行為の相手方となる使用者と認めめられず、違法性が阻却される余地はないとした。そのため、関生支部が企業に協力して、中小企業の大同団結を勝ち取りその結果として生コン価格が大幅に値上げされたにもかかわらず、それか生コン輸送運貨の値上げや労働者の雇用・労働条件に反映されることがなかったため本件ストライキに至ったという、経緯・経過の一切について判決は言及しない。
しかし、労働組合員との間に雇用関係がなければ労組法上の使用者と認めないという本判決は、労働組合の活動を企業別・企業内に限ろうとするものである。企業別・企業内以外の労働組合も憲法が団結権・団体行動権を保障する労働組合であることを本判決は否定している。
◆ 恐喝未遂事件について
判決は、労働者や近隣住民の生命・身体をも危うくしかねない工事現場の法令違反を指摘するなどした組合員の一つ一つの行為については判断・評価することなく、すべては施工者てあるゼネコンに強い圧力を加え、生コン協同組合の員外村から員内社に生コン供給業者を変更させるために行われたから、恐喝行為に当たるとした。
そして、一連の行為を全体としてみると、対応に追われたゼネコン関係者の負担は重いなどとして、不公正な競争を排除する目的があっても正当化できない、公益に合致する結果を伴うとしても行為か正当化されるものではないとした。
この判断も、産業別・職業別労働組合か、大企業との関係で従属的立場におかれている中小企業協同組合と協力して行う産業政策運動の意義を見ようとしないものである。
判決は、ゼネコン関係者の負担を理由に、ゼネコンなどの労働安全衛生法令や道路運送車両法などに違反する行為を免罪している。
それだけてなく、中小企業等協同組合法が協同組合に独禁法の適用を除外した趣旨を無視している。
判決は、ゼネコンなとによる生コンの買い叩きを許し、結果として品質不良生コンが社会インフラに使用されることを助長する。また、生コン買い叩きが帰結する生コン産業で働く者の労働条件の悪化、労働者の地位の低下にも沈黙している。
◆ 恐喝事件こついて
恐喝事件が無罪とされたことは当然である。
判決が指摘したとおり、武委員長と湯川副委員長が恐喝行為を行ったと認めることができる証拠ははじめから何も存在しなかった。問題は、それにもかかわらず、あえて関生支部の委員長と副委員長が恐喝罪で逮捕起訴されたことである。
もともと、前述の恐喝未遂嘱件同様に関生支部と共謀して企業を恐喝した疑いがあるとして、本件の「被害者」とされている会者の代表者が警察から取り調べを受けていた。その取調の中で、同社が関生支部に一〇〇〇万円を寄付していたことが警察に判明した。そして、同社代表者は被疑者とされた恐喝事件では立件されず、かえって関生支部
委員長・副委員長を恐喝の加害者、同社を恐喝の被害者とする事件がつくり出されたのてある。
一連の弾圧は、関西一円の府県警がゼネコンや大阪広域協と連携して、労働組合つぶしを企図したものである。
本日の判決はそのことを認めなかった。しかし、恐喝事件の無罪判決は、関生支部組合員に対する一連の大規模な弾圧が、犯罪とすべきでないものを犯罪としてつくり出された弾圧であることを端的に示している。
弁護団は、判決に対して、即日、控訴した。
武委員長をはじめ被告人とされた全ての組合員の無罪を勝ち取るまでともに闘い抜く所存てある。
(弁護士永嶋靖久)
『月刊救援 628号』(2021年8月10日)https://wind.ap.teacup.com/people/16366.html#readmore