《金銭授受の現場写真も》「私は甘利明氏に現金50万円を渡しました」建設会社幹部が告発、“口利き依頼”の決定的証拠
甘利明氏 ©文藝春秋
自民党の岸田文雄新総裁のもと、10月1日、新幹事長に就任した甘利明氏(72)。甘利氏は2016年、都市再生機構(UR)と補償交渉をしていた建設会社側から、当時の秘書が少なくとも現金500万円、そして自身も100万円、口利きのための現金を受け取っていた疑惑で、経済再生担当相を辞任した。10月1日の共同記者会見で関与を否定した甘利氏だが、いったい、どのような疑惑だったのか。「週刊文春」が、証拠や写真などともに報じたグラビア記事を再公開する。また、金銭授受の当事者が実名で詳細を語った6ページの特集記事は 「週刊文春 電子版」 で限定無料公開している。(初出・「週刊文春」2016年1月28日号 年齢・肩書き等は掲載時のまま)
【写真】50万円を甘利氏に渡し終えた後のツーショット
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「この日、私は甘利大臣に現金50万円を渡しました」
こんな衝撃告白をするのは、千葉県白井市にある建設会社『S』の総務担当者、一色武氏(62)。下の写真で甘利明TPP担当大臣(66)と握手している当人である。
甘利氏と言えば、菅義偉官房長官、麻生太郎財務大臣と並び、安倍政権の中枢を担う一人。TPPの大筋合意では、粘り強い交渉で米側からタフネゴシエーターと恐れられた。だがその甘利氏に、政権を揺るがす重大疑惑が浮上した。
2014年2月1日午前10時半、神奈川県大和市の地元事務所で甘利氏と会った際の様子を、一色氏が振り返る。
「大臣と面会したのは、当社とUR(独立行政法人都市再生機構)の補償交渉をめぐる案件で、口利きをお願いするためです。私が資料をお見せしながら案件について説明した後、現金の入った封筒を渡すと、大臣は『ありがとう』と言って、封筒を受け取りました。後になって『受け取っていない』と否定されないために、面会する3日前の1月29日、私は横浜銀行東海大学駅前支店で50万円をピン札に両替しています」
現金授受の現場で笑う甘利氏の秘書
その50万円のピン札をコピーしたのが、下の写真だ。
甘利事務所と一色氏の金銭授受はこれだけではない。一色氏はURの案件で複数回にわたり口利きを依頼し、13年以降、大和事務所所長の清島健一氏(公設第一秘書)や、政策秘書の鈴木陵允(りようすけ)氏にも現金を渡してきたという。
小誌は今回、現金授受の決定的現場を押さえた。下の写真をご覧いただきたい。大和市内の喫茶店において一色氏と清島氏が対面したのは、15年10月19日のこと。一色氏が周囲の目を気にしながら現金20万円を手渡すと、清島氏はニヤッと笑い、傍らに置いたジャケットの内ポケットに仕舞ったのだった。
一色氏はこう続ける。
「証拠として残したメモを見ると、昨年だけで2人に210万円は手渡しています。会うたびに、キャバクラやフィリピンパブで接待もしている。これだけ賄賂を渡していれば、甘利大臣が当社のために動いてくれると信じていました」
政治家や秘書が口利きの見返りに報酬を受け取った場合、あっせん利得処罰法違反にあたる可能性がある。なお、証言の詳細は 「週刊文春 電子版」 で限定無料公開している。
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10/2(土) 9:06日刊ゲンダイDIGITAL
金銭授受疑惑の甘利明氏が自民幹事長就任 元検事・郷原弁護士は「このままだと示しがつない」
2016年、金銭問題の記者会見で辞任を表明した甘利明経済再生担当相(当時)/(C)日刊ゲンダイ
野党は手ぐすねを引いて待っているようだ。
立憲民主、共産、国民民主の3党国対委員長は1日、自民党幹事長に起用される甘利明税制調査会長(72)の金銭授受問題を調査する「野党合同チーム」を来週にも設置する方針を固めた。
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甘利氏の疑惑とは、都市再生機構(UR)との補償交渉を巡り、建設会社から口利きを頼まれた当時の秘書が現金500万円などを受領し、経済再生担当だった甘利氏本人も大臣室などで100万円を受け取っていた問題だ。問題が発覚した2016年当時、甘利氏の疑惑は、あっせん利得処罰法の適用対象になる「ど真ん中のストライクに近い事案」と強く指摘していた元検事の郷原信郎弁護士に聞いた。
――甘利氏の幹事長就任を聞いて、どう感じましたか。
全くとんでもない話。ふざけるな、という思いです。
――問題発覚後、甘利氏は閣僚を辞任。「睡眠障害」を理由に国会を欠席し、そのまま公の場から姿を消しました。
甘利氏は当時の会見で、自分の疑惑について第三者員会が調査して説明する――と言っていました。その後、「(甘利氏の説明によると)元東京地検特捜部の検事である弁護士」が、秘書や経理担当者などの関係者から直接聴取し、関連資料を確認した結果をまとめたという「報告書」をもとに疑惑を否定したのですが、結局、その弁護士名も調査の詳細な内容も明かされませんでした。つまり、いまだに何も分からないままです。
――甘利氏と秘書はあっせん利得処罰法違反と政治資金規正法違反の疑いで刑事告発されましたが、東京地検は不起訴としました。
不起訴と言っても内容や理由が全く分からないのです。客観的に検証する材料が何も示されていないのは変わりません。
つまびらかに調査内容を公表すべき
郷原信郎氏(C)日刊ゲンダイ
――1日の新執行部の会見でも、記者から問題を問われた甘利氏は「事情を知らされていなかった」「根耳に水」と言っていました。野党は早速、追及チームを立ち上げる予定ですが、甘利氏自身はどうするべきだと思いますか。
まずは調査したという第三者委の弁護士名、報告書の内容をつまびらかに公表するべきでしょう。このままだと示しがつかなくなる。今後、政治資金問題が指摘されても、何も説明せずに公の場から姿を消し、よく分からない第三者委の調査をもとに潔白だといえばいい――となりかねません。「幹事長もやっていますよ」と言われたら、どうするのでしょうか。