◆ 一人でもできる運動 (東京新聞【本音のコラム】)

鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)


 東京・三多摩地区のいくつかの市議会でも、沖縄戦没者の遺骨混入土砂を基地などの埋め立てに使用しないことを求める陳情が採択されている。
 私の住む町は、歴代保守市長のもと保守系議員が多数を占めているのだが、先日、総務文教常任委員会で全会派一致して陳情を採択、月末に本会議採択の見通しにある。
 戦後七十六年がたっても戦場に眠る兵士の遺骨が家族のもとに帰れない。その現実がいままた戦争の悲惨さを痛みとともに思い起こさせる。

 土砂の採取にたいして、沖縄遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の代表・具志堅隆松さんが「犠牲者の骨や血がしみ込んだ土砂を埋め立てに使うなどあってはならない」と座り込んで抵抗してきた。


 沖縄の人たちばかりか、全国から派遣された兵士、朝鮮人、米兵が血を流して倒れ、骨は打ち捨てられたままだ。恐らくその人たちは皆戦争に反対しているであろう。
 それなのにようやく掘り起こされても、こんどは米軍基地の礎にされる。納得できるだろうか。

 具志堅さんは都道府県および市町村議会千七百四十三団体へ、国の埋め立て計画断念を求める要請文を送ってきた。大胆にして細心な運動である。

 さらに自民党総裁選候補者野党党首にどうするのか、と公開質問状を送付した。
 「是非とも戦没者の救済とご遺族の心情に沿った対応を希望します」(ルポライター)

『東京新聞』(2021年9月21日【本音のコラム】)