◆ 軍事研究への突進 (週刊新社会【沈思実行】)
鎌田 慧 (ルポライター)
菅政権による、露骨な思想弾圧、「レッドパージ」と言うべき学術会議会員6人の任命拒否は、いまだ撤回されていない。憲法違反とも言える事態への強い抗議がつづいているが、菅首相は冷然と無視したままだ。
1949年に創立された日本学術会議は、50年4月の第6回総会において、
「科学者としての節操を守るためにも、戦争を目的とする科学の研究には、今後絶対に従わないと言うわれわれの固い決意を表明する。」
と決定している。
毒ガス研究、人体実験などおぞましい研究に従事させられた学者や医師の身を切られるような痛恨の想いは、日本帝国主義の台湾、韓国、中国にたいする侵略と植民化への反省を背景にしていた。学術会議の決定は、平和憲法を支える重要な決意だった。
安倍内閣を継承する、という誓約を担保して認められた菅内閣は、8月末2022年度の防衛予算の概算要求で、5兆4797億円を計上した。4月の「日米共同声明」で「日本は自らの防衛力を強化することを決意した」と明記させられているからだ。
そのこともあって軍事増強のための研究開発費が前年度比1141億円増の3257億円、過去最高を上回る金額となった。そればかりか、「後年度負担」という予算に表れない、支払い先延ばしの金額がある。
安倍政治での、カネに糸目をつけない米国製ステルス戦闘機F35AとB(一機100億円以上)を147機も爆買いする約束など、正常な政治家であれば、ぜったいできない大盤振る舞いだ。ミサイルもふくめて、装備費(兵器)のほとんどを、米国製で賄うことにしている。
日本の兵器産業への支払いが減った代償というべきか。
国産ミサイルの改良型、宇宙状況監視のレーダー装置の研究開発をふやす。三菱重工業など日本の軍需産業は、注文が減って、「研究開発費」の増強を政府に要求し続けてきた。民需にも応用できるからだ。
日本学術会議の崇高な誓い、「兵器の研究・開発の否定」をへ自民・公明政権は、暴力的な横車とカネの力で破ろうとしている。
『週刊新社会』(2021年9月14日)