8/21(土) 16:06京都新聞

 

社説:自宅療養者急増 医療確保に手を尽くせ


 新型コロナウイルス感染の急拡大で医療機関などに入院できず、自宅療養を余儀なくされる患者が増加し続けている。

 厚生労働省によると、全国で9万6千人(18日現在)に上っている。1週間で約2万2千人増え、1カ月前から9倍に膨らんだ。

 自宅で亡くなった人も1月から今月16日までに91人に上る。

 政府はきのう、緊急事態宣言を京都など13都府県に拡大した。

 新規感染者数は全国で連日2万5千人を超え、重症者数も最多を更新し続けている。増加が止まる兆しは見えない。こうした現実が、病院などにアクセスできない患者を大量に生んでいる。

 助けられるはずの命を救えない状況を放置してはならない。政府や自治体はあらゆる手を尽くし、全ての患者に十分な医療の手を差し伸べる必要がある。

 千葉県では、中等症相当と認定され自宅療養していた妊婦が入院先が見つからないまま早産し、赤ちゃんが死亡した。少なくとも9カ所の医療機関に受け入れ要請したが、より症状の重い患者がいたため入院できなかったという。

 同県内では、入院先が5日間見つからず自宅待機していた男性が死亡した。東京都内では、救急搬送に5時間以上かかった事例が50件以上あったと報告されている。

 入院できない患者の容体を的確に把握し、適切な医療につなげる仕組みづくりが欠かせない。

 京都市は、医師が在宅の患者を電話で診察する取り組みを始めるという。京都府は、入院が必要なのに搬送先が決まらない感染者を一時的に受け入れ、常駐する医師が酸素投与などを行う「入院待機ステーション」を設置した。

 政府も、自宅療養者にオンライン診療を行った場合の報酬を増やし、入院待機ステーションへ医師を派遣した医療機関への補助金を増額するなどの方針を示した。

 入院が困難な状況の中、在宅患者への医療を支える点では有効な措置といえるだろう。

 ただ、病院外で患者を診るのは本来は例外的な行為のはずだ。

 政府や自治体がなすべきは病床の確保・充実である。ステーションなどの支援を理由に、その手を緩めることがあってはならない。

 感染拡大が続く現状を、専門家は「災害級」と指摘する。病床確保に加え、ホテルなどの宿泊療養施設の拡充が早急に必要だ。

 調整に当たる保健所の機能増強も欠かせない。政府、自治体は総力を挙げて取り組んでほしい。