8/17(火) 9:21配信 佐賀新聞
<佐賀大雨>「2年前の比じゃない」高さ2メートルに水の跡 1.5メートルかさ上げして建て替え「まだ3カ月も住んでない」とぼう然… 武雄市、大町町
水が流れ込んできて、新品のゴザが散乱する店内。店主の村山直さんは「2年前の大雨で、新しくなった機械もだめになった」と嘆いた=15日午後2時ごろ、杵島郡大町町福母(撮影・鶴澤弘樹)
4日間にわたる大雨で深刻な浸水被害が広がった佐賀県武雄市と杵島郡大町町では15、16の両日、被災者が自宅や店に戻り、片付け作業を本格化させた。壁には2メートル近い高さまで水が襲った跡もあり、2019年の佐賀豪雨被災者は異口同音に「2年前の比じゃない」。降り続く雨に「もう水は襲ってこないだろうか。このままでは片付けも乾燥も進まない」と不安が漏れた。
武雄市北方町の国道34号に面した店では16日、強い雨の中でも片付けが続いた。「井手ちゃんぽん」の井手良輔社長(49)は「2年前は1メートル、今度は1・3メートル」と浸水ラインを示した。佐賀豪雨では約2000万円を借り入れて再開したが、今回は「借金はできる。ただ、豪雨のたびに同じことを繰り返すになるようなら躊躇(ちゅうちょ)はある。今後のことはもう少し考えたい」と厳しい表情を見せた。
近くの人形館ふじやの藤井信行社長(75)は「机の上のパソコンが浮いた。2年前にはなかったことで、水かさは30センチほど増した」と驚いた表情。全てが駄目になった約1500点の商品が散乱していた店の片付けを進めた。
武雄市橘町では佐賀豪雨より浸水範囲が広がり、避難所にも水が入った。自宅を2メートルの高さまで水が襲った同町片白の松尾まゆみさん(58)は「ここまで来るとは…。2年前はリフォームしたけれど、もうしきらん」と肩を落とした。
「2年前の倍」。大町町中心部の商店街で片付けに追われる多くの人たちから同じ言葉が漏れた。
何度も何度も店の泥をかき出していた森永写真館の森永裕子さん(58)は「この前より1メートルは高い。水が胸まで来てリュックも背負えず、大切な物だけ頭に載せて避難した。もう泣くに泣けない」とぐったりした様子。別の商店主は「今度は床上まできた。数十年に一度といわれた佐賀豪雨からたった2年。今の雨に合わせた抜本的な対策が必要」と訴えた。
大町町の下潟地区では被災の教訓からかさ上げして家を建て替えた人も多い。だが、今回はそれを上回る水が襲った。「1・5メートル上げて建て直し、まだ3カ月も住んでない。家電もみんな駄目」。水が引いてやっと16日から作業を始めた男性(33)は雨の中、ぼう然とした。
両親の家を片付けに来ていた灰塚新一さん(43)は「2年前に経験した以上の被害。板や畳を張り替え、節約、節約で暮らしていたのに」と嘆いた。1990年豪雨でつかり、1メートル以上かさ上げした。それでも2年前は床上10センチ、今回は70センチまで来た。「新たに保険に入っていたけれど、2年もたたないうちに使うことになるなんて」と話した。
今週も雨の予報が続き、家屋などの乾燥に欠かせない好天は見当たらない。浸水範囲も2年前より広がった大町町で商店主の一人は「片付けは進まないし、気分も晴れない。ボランティアも頼みたいが、コロナ禍でどうなるか…」と心痛した。(澤登滋、米倉義房、井手一希、小野靖久)
4年連続の内水氾濫「家を買ったときは聞いてなかった」
8/17(火) 9:54配信 西日本新聞
雨の中、浸水被害を受けた家具などを運び込む住民ら=16日午前10時45分ごろ、佐賀県武雄市朝日町中野(撮影・糸山信)
九州各地を襲った季節外れの記録的な大雨。浸水被害に見舞われた佐賀県武雄市や福岡県久留米市では、小康状態となった16日も住民の避難が続いた。大雨は17日以降も続くとみられる。被災した家屋の片付けも進まず、住民たちは疲労と不安が入り交じった表情で天を仰いだ。
【図解】内水氾濫とは
六角川の氾濫で浸水が拡大した佐賀県。国土交通省によると、推定約5800ヘクタールが浸水し、災害派遣要請を受けた陸上自衛隊が救助活動に当たった。16日で解消したが、武雄市の家屋被害は2019年8月の大雨を上回っており、住民生活に甚大な影響を及ぼしている。
「これまでだったら15日の晴天で避難は終了だったのに…」。武雄市文化会館に身を寄せる池上泰子さん(82)は、雨脚が時折強まる外を眺めてつぶやいた。
避難を始めたのは14日。一時は自宅の床上ぎりぎりまで水が押し寄せた。1人暮らしのため、これまでも大雨の際には避難所を利用してきた。今回は長丁場を見越し、段ボールベッド用に厚めのシーツなどを持ち込んだ。「気を緩めず、まず目の前の危機がなくなるまでとどまりたい」
大町町の総合福祉保健センター美郷にも多くの町民の姿があった。今村佳代子さん(80)は「一体、いつまで降り続くのか。もううんざり…」と疲れ切った表情。12日から避難しており「雨がやんでも自宅が片付くまで時間がかかる。しばらくはこの生活が続くかも」と話した。
水に漬かった畳など、災害ごみの搬出に追われる住民=16日午後3時半、福岡県久留米市(撮影・帖地洸平)
筑後川の支流の水がはけず周辺にあふれる「内水氾濫」による被害が4年連続で発生した久留米市街地でも、水にぬれた家財道具を片付ける市民の姿が目立った。
同市津福本町の女性(29)は「テレビや子どものおもちゃが駄目になってしまった」。自宅が床上浸水した同市梅満町の会社員の男性(39)も「10年前に家を買ったときは、こんなに浸水する場所とは聞いていなかった。車が故障したため何もできない」と困り果てていた。
同市や隣の小郡市などでは広範囲にわたり農地も冠水。被害の調査は進んでおらず全体像は分かっていない。ビニールハウスのコマツナやミズナが全滅した小郡市の40代の男性は「これまでで一番ひどい。昨年より30~40センチ水位が高かった。冠水対策のブロック塀を水が越えてきた」と嘆いた。
(糸山信、野村有希、木村知寛、内田完爾)
福岡県で15日、新たに681人の新型コロナウイルス感染が確認された。発表自治体の内訳は福岡市285人、北九州市79人、久留米市48人、県269人だった。
航空自衛隊春日基地(春日市)で隊員13人、トヨタ自動車九州宮田工場(宮若市)の従業員5人、飲食店「日本料理 茶寮このみ」(飯塚市)で従業員6人の感染が確認され、クラスター(感染者集団)に認定された。