=たんぽぽ舎です。【TMM:No4267】「メディア改革」連載第71回=
 ◆ “五輪本土決戦”終戦で人災・コロナ地獄が到来

浅野健一(アカデミックジャーナリスト)


◎ 政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長「この状況での五輪開催は、普通はない」と断言した一営利企業IOCによるテレビ放映料確保のためと、菅義偉首相の選挙対策のために強行開催された“五輪本土決戦”(鎌田慧氏)が8日終戦を迎えた。
 専門家が警告したとおり、五輪開催でコロナの感染爆発が起き、「有事そのもの」「医療逼迫」が始まった。

 閉会式のあった8日、東京都の新規感染者は5日連続4000人を記録した。9日も月曜日としては最多だった。決戦の後に残ったのは、全国で7日連続(9日)の感染者1万人以上の地獄だ。


 菅首相は「国民の命が守れなくなったら、開催しない」と国会で公約していた。尾身氏は会見で、「最も深刻な危機に直面している。今は火事が燃え盛っている状態」と警告を発している。今は「火事」を消すことが不可能で、各地で医療崩壊が始まっている。

◎ コロナ禍の緊急事態宣言(4回目)下の開催とよく言われるが、東電福島第一原発事件での2011年3月11日午後7時3分に発出されたままの原子力緊急事態宣言の下で、「福島原発はアンダーコントロール」(安倍晋三氏)という大ウソと電通による賄賂で誘致した五輪だったことも忘れてはならない。

 また、コロナ禍で朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は不参加で、サモアも国内拠点の選手の参加を断念した。多くの競技で、代表を決める予選大会に参加できなかった国も少なくない。コロナ感染が分かって訪日できなかった有力選手、試合前に感染が分かり不参加のsE選手も数人いた。五輪憲章の「公平性」「フェアプレー」に反した大会の強行だった。

◎ 調布市山中湖で行われた自転車競技では、沿道に観衆が押し寄せ、札幌での競歩・マラソンでの沿道の密集はすさまじかった。五輪閉会式が行われた国立競技場周辺では、多くの人が密集して集まり、沿道には人があふれ返った。各地で五輪をテレビで見ながら飲食し、路上飲みをする光景が見受けられた。

 五輪開幕の7月23日の東京の感染者は1359人だったが、8月5日に5042人になった。五輪を開催できるぐらいだから大丈夫だろう。そんな気の緩みや政府の一貫性のない対応が今の事態を招いた。
 火事があちこちに広がるムラでの五輪マフィア主催の祭で、火消しは不可能な状態に陥っているのに、「成功」と言い張る菅氏は万死に値する。
 また、公共の電波で、「五輪と感染は無関係」とウソをまき散らす加藤浩次、三浦瑠璃、小倉智明、猪瀬直樹各氏ら御用文化人を糾弾する。


 ◆ 「IOC祭典強行で支持率最低」菅首相の思惑外れ

◎ 菅氏は8月10日午前、バイデン米大統領と15分、電話会談したとテレビ各局が伝えた。報道室と電通が共謀したぶら下がりで、菅氏はバイデン氏が五輪成功を祝福してくれたと披露した。どこまで対米隷従なのだ。今、必要なのは「燃え盛る火事」(尾身氏)の状態になったコロナ感染爆発と五輪開催の反省・徹底検証だ。ジャーナリズムは情報操作を無批判に垂れ流してはいけない
 五輪組織委の橋本聖子会長は10日午前、菅首相と官邸で会い、「政府には万全の体制で協力を頂いた」と謝意を表明。
 菅氏は「(東京五輪は)東京の選手が大活躍されたので、多くの国民に勇気を与えてくれた」と応じた。菅氏は8月9日の長崎での記者会見で「日本だから成功できた」などと語った。

◎ 9日午前の民放各局がコロナと五輪のどちらを優先して伝えるか見たが、日本テレビ「スッキリ」、テレビ朝日「モーニングショー」、フジテレビ「めざまし8」は、日本のメダル獲得と閉会式を先に取り上げた
 五輪開催に疑問を呈してきた「モーニングショー」も8時43分まで、銀メダルの女子バスケット選手をスタジオに招くなど五輪の話題だった。タレントの石原良純氏が「日本人の体力の強さを証明した」と述べ、弁護士の山口真由氏は「選手たちが五輪開催に感謝する言葉を発してくれた」などとコメントした。CMをはさんで、コロナの自宅療養者が全国で1万7812人を数え、都内の女性が第5波になって初めて自宅療養中に死亡したことを報じた。

 コメンテーターの玉川徹氏は「一部識者は重症者さえ見ればいい、感染者数を毎日伝えることに何の意味があるのかと言っていた。そういう方々はこの状況をどう見るのだろうか」「感染者が急増すれば、重症化率が低くても、遅れて出る。感染者数が増えている時に手を打たなければいけなかった。ところが今、なんらかの有効な手は何も打てていない。重症者、自宅療養者もまだまだ増えていく。本当に悲しい現実だ」とコメントした。

◎ 菅氏は五輪を開き、ワクチン接種を進め、10月21日までにある衆院選挙に勝利する賭けに出たが、朝日新聞が8月7、8の両日に実施した世論調査で、内閣支持率は28%と初めて3割を切った。
 不支持は53%。9日に発表されたJNN調査でも支持率は32・6%と、先月より10.1ポイント下がった。不支持は63.5%。五輪で支持率回復をという目論見は完全に破綻した。


 ◆ 菅首相が原爆式典で読み飛ばし、遅刻の大恥

 菅首相は8月6日の広島・平和祈念式典での挨拶で、原爆死没者を「ゲンパツシボツシャ」と読み間違えて言い直し、その後、「『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を着実に積み重ねていく」などと誓う重要な部分(1頁)を読み飛ばした。菅氏は式典後の記者会見で、読み飛ばしを陳謝した。

 菅氏は五輪閉会式で、IOCのトーマス・バッハ会長が、小池百合子知事と菅首相のフルネームをあげて謝意を表明した際、ポカーンと前を見つめるだけだった。居眠りをしていたように見えた。小池氏はバッハ氏に一礼し、菅氏に手で合図を送ったが、菅氏は無反応だった。
 菅氏は開会式でもバッハ会長の話の時に居眠りし、天皇の開会宣言の時に起立せず、小池氏が立つよう促し、遅れて立ち上がった。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100022241222173
 菅氏は9日に行われた長崎の平和記念式典では、1分遅刻して着席した。10日午前のぶら下がりで、陳謝した。菅氏と取り巻き連中の頭の中が「五輪と選挙」で一杯になり、心ここにあらず状態だ。

 五輪は開催してパラリンピックはやらないというのは、差別になるという見方もあるが、私は、五輪開催が誤っていたと認め、パラリンピックを中止することを求める。パラリンピック選手が感染すると健常者以上に危険だ。既に、訪日した選手の感染が複数報じられている。パンデミック下の祭典は中止するしかない。


 ◆ 次期総選挙で安倍・菅・自民、公明、維新体制に鉄槌を

 「五輪が始まれば、民衆の気持ちは変わる」「五輪で政権批判が薄らぐ」と自民党幹部がメディアに「仮名」で語っていた。
 2013年9月からの「五輪と政治」の経過をしっかり記憶し、日本の人民を愚弄し、人体実験に使った自・公・維の議員を次期衆院選で全員落選させよう。