◆ 五輪が終わった (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
東京五輪が終わった。開会式当時、東京のコロナウイルス感染者は一日千四百人弱だった。が、閉会式の八日は四千人強と三倍になった。菅首相は「五輪が感染拡大につながっているとは考えていない」と強弁する。
感染者を減らすのが、安全・安心を願う首相の最大の任務のはずである。
金メダル最初の獲得選手に電話をかけるのをNHKでみて、「セコイ」と感じて「金鵄(きんし)勲章を授与する気分か」とこの欄で書いた。
それどころか、金メダル全員に祝辞を贈っていた、というからその利用主義があくどい。
ところが、小池都知事とともにバッハIOC会長から「功労金章」を授与されている。国や都の貴重な資金を大量に浪費した最大の責任者が功績を讃(たた)えられ、恥ずかしげもなく表彰される。
初めのうちは「コンパクト五輪」など殊勝なことをいいながら、経費はうなぎ上り、一兆六千億円と倍以上になった。
この無責任、利己主義、無論理の頽廃(たいはい)が安倍・菅内閣と続く間に、社会にどこか投げやりな気分が濃くなった。これほど反教育的な政治はない。
コロナ変異株猛威のなかで、二十四日からパラリンピックが始まろうとしている。
東京五輪一色となったマスコミは、安保法制に続く「重要土地規制法」の成立や人権侵害などの脅威を喚起させなかった。バッハ会長と菅強欲内閣は日本を破滅させる。(ルポライター)
『東京新聞』(2021年8月10日【本音のコラム】)