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7/1(木) 20:12配信 文春オンライン

 

《千葉・八街“飲酒暴走“児童5人死傷》不祥事隠しで2度社名を「改名」 容疑者の勤務先親会社は7年前にも死亡事故を起こしていた!

 


「コンビニ袋いっぱいの缶ビールとカップ酒が…」千葉・八街“飲酒暴走”児童5人死傷《整備員が見た梅沢容疑者のトラック車内》  から続く

【写真】南武運送のごみ箱裏には、大量の缶ビールの空き缶が…

 6月28日の午後、千葉県八街(やちまた)市で、トラックが下校中の小学生5人の列に突っ込み児童2人が死亡した事故。危険運転致死傷罪で千葉地検に送致された運転手の梅沢洋容疑者(60)の呼気からは、基準値以上のアルコールが検出された。

南武の”不都合な真実”とは…?
30日午前、送検された梅沢容疑者 撮影・宮﨑慎之輔 ©文藝春秋

 業界関係者からは「勤務前のアルコール検査は常識」といった意見も聞こえるが、梅沢容疑者の勤務先である南武運送の親会社「南武」の担当者は30日「運転手の飲酒の検査はしていなかった。私の覚えている限りではこの事件の他に現場で人が死亡したような事故はありません」と説明した。

 しかし、関係者の証言から浮かび上がったのは、安全管理を杜撰にしてきた南武の“不都合な真実”だった――。実は、南武は7年前にも死亡事故を起こしていたというのだ。同社をよく知る人物が語る。

「2014年8月には『南武』の前身である『南武建設』が現場を管理していた東京都江戸川区のマンション建設現場で死亡事故が起きています。40kg以上の鉄筋が220本も倒れ、従業員3人が下敷きになりました。30歳だった男性と、29歳のキューバ人男性の2人が死亡し、40代の男性が重傷を負う大事故でした。普通なら建築用の鉄柱は完成してから現場に届けるのですが、トラックの積み荷を軽くするために鉄柱の中身が空洞のまま運び、それを現場で完成させる作業中に鉄柱が倒れたことが原因です。事故後は社内の空気がかなりどんよりし、会長や社長と会っても事件について聞ける空気ではなかったようです。

 当然、現場で人が死ぬような会社には皆頼みたくないから、その後、南武建設の仕事は激減しました。この事故がきっかけで『南武建設』は、現在の名前である『南武』に名前を変えたようです。親会社とはいっても『南武』と南武運送は日ごろからほぼ業務内容も一体化していて、南武運送の代表取締役は『南武』の会長が務めています」

 実は、南武には長い「改名」の歴史がある。

 1992年に「知念興業」から「南武建設」へ。そして、前述の事故後の2015年に「南武建設」から「南武」に再び社名を変えた。


「安さ第一主義」の中で、まかり通っていた“違法行為”
「『南武』は不祥事がある度、イメージを払拭するため、名前を変えていたのだと思います。『南武』の会長は昨年に旭日双光章をもらい、業界団体の理事長も務めた有名人。ですが、1992年に脱税で有罪判決を受けています。それもあって『知念興業』から『南武建設』へ名称を変え、その後、前述のようにマンション建設現場の事故を起こした後にも再度、名前を変更している。つまり、不祥事は今回が3度目。全く反省はしてなかったのでしょう。会長自らがホームページ上で『蓄積したノウハウを生かして、信頼を得るべく努力していきたい』と語っていたようですが、またこんな事故を起こすなんて…」(同前)

 事故の裏に透けて見えるのが、南武の「安さ第一主義」だ。

「トラックの積載量は、基準の1・5倍はあったと思います。仕事を頼むと、いつもタイヤが潰れた状態で運んでくるんです。人件費を浮かせるため、一度に大量の荷物を運んでいたのでしょう。そんなわかりやすい違反をする会社は滅多にありません。

 また、運送会社で使う事業用の自動車はナンバープレートが緑色をしていますが、これは国道交通省から事業許可をもらった会社の車両ということです。それに対して今回の事故を起こした車両が付けていた白ナンバーは自家用車としての登録で、事業として許可を取ったものではない。もちろん違法ですが、同社が白ナンバーで客の荷物を運んでいるのを見かけることもありました」(別の関係者)

運転手の休みは年間わずか「68日」
 運転手の労働環境もかなり過酷なものだったようだ。

「梅沢容疑者は日曜日の定休日以外、とにかく働き詰めでした。振替休日もあったかもしれませんが、日曜日にも働いていた姿を見たことがあります。特に南武は休みが少なく、年間で68日しかない。労働基準法で定められた法定休日では、1日8時間勤務の場合で年間105日となりますが、それと比べると圧倒的に少ない。私は大型の免許を持っていましたし、とりあえず働かなきゃと頭を下げ、短期で仕事をもらっていた時期もありましたが、ハードで続きませんでした。今思えば、あんな事故を起こす前に辞めてよかったと思います」(元従業員)

本社では未成年参加で酒を飲むことも…
 また、東京都江戸川区にある本社では、社内での飲酒も日常茶飯事だったという。

「会社は事務員を除けば、完全に男社会。社内の空気はTHE・昭和です。すぐに辞めていく人も多かったですね。東京本社の周りには飲食店もないので、よく社員同士、社内食堂で酒を飲む姿も見ましたよ。高校を出たてで鉄筋工になったばかりの未成年の男の子も集まって飲むこともありました。飲んでいたのは何かを漬け込んだ、泡盛です。おそらく泡盛好きの会長の自家製だったと思います。特にそれで会長や社長が注意をする姿を見たことはありません。もともと悪いことだと思っていなかったのではないでしょうか。

 会長と社長は石垣島出身で、同郷の有名ボクサーとも知り合いです。会社の運動会には彼もよく参加していたようです。飲み会後に会長がレクサスに乗って帰宅する姿を見たこともあります。安全を謳うポスターは社内のあちこちにありましたが、それが現実でした」(別の元従業員)

梅沢容疑者と社長の交流は…?
 もともと梅沢容疑者が南武運送で働き始めたきっかけは、自身が経営していたガソリンスタンドだったという。

「南武の社長は農家で使い、余った肥料をガソリンで薄め『エコ燃料』として販売する『南武エナジー』という会社も長く経営しています。『このエコ燃料は儲かるからいいぞ』と社長が周囲に豪語していたのを覚えています。ガソリンスタンドを経営していた梅沢容疑者と社長はその時から交流があり、梅沢容疑者は2005年にガソリンスタンドの経営を廃業し、南武運送で働き始めたと聞いています」(梅沢容疑者の知人)

 7年前の死亡事故や、社内での恒常的な飲酒について南武に質すべく質問状を持参したが、社の従業員は「定例のマスコミ対応以外はしない。社長も警察に呼ばれて会社にいないので、質問状を置いていくのも不可」と答えるのみだった。

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