◆ ~琉球弧・宮古島に近づいてくる「戦争」 (立川テント村通信)

ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会 清水早子

 


画像 長周新聞


https://www.chosyu-journal.jp/heiwa/16322
 ◆ 先行する部隊配備

 2019年3月26日、100台以上の軍用車両と共に宮古島へやって来た警備部隊380名が、上野千代田地区の陸自宮古島駐屯地に新編成された。
 それに先立つ3月4日、軍用車両が陸揚げされる平良港で、私たち約30名の市民が車両の前に立ちはだかり、制服警官に排除されるまで早朝から8時間足止めした

 2020年3月26日、ミサイル部隊が新たに千代田に編成された。新設の第302地対艦ミサイル中隊約60名、中距離地対空ミサイル中隊を含む「第7高射特科群」が長崎から本部ごと約180名、増員の警備部隊約100名、計約340名の隊員


 12式地対艦誘導弾発射装置搭載車両、03式地対空誘導弾発射装置搭載車両など7セツト、関連車両など多数が配備された。
 3月21日、私たちは大阪や東京からの応援も得て、市内を抗議のデモ行進し、基地正門ゲートを封鎖させる抗議を延べ人数約100名で行った


 ◆ 民家に近すぎる弾薬庫

 部隊配備に間に合わせるように建設が強行された千代田の基地内の施設は、造成工事開始から2年で8割がたが完成したが、格納庫となる倉庫や緊急時にはヘリパッドになるグラウンドは手つかずのままである。
 千代田から南に15キロほど離れた保良地区では、計画では3棟の弾薬庫が建設予定とされていたが、防衛局は敷地の全部の所有権の取得はまだできず、2棟の弾薬庫が建設中である。
 千代田の基地内には防衛省が「作らない」と言っていた弾薬庫が作られた

 2019年4月1日、全国紙のほとんどが新元号「令和」の記事で一色の日に、東京新聞は一面トップで「宮古島住民だまし討ち」と弾薬庫建設を報じた。
 この弾薬庫に一番近い民家は100mの距離もない。また保良地区の弾薬庫は、180軒余りの集落の最も近い民家まで250mだ。

 規制するはずの火薬取締法は、70年も前の1950年に施行されたもので、「基地の弾薬」は対象にしていなかったものであり、まして「ミサイルの弾薬」など念頭にないものであり、地城住民の安全の根拠法として役に立たない。


 ◆ 未解決の基地問題と忍び寄る「迷彩色」

 弾薬庫の他に、千代田にも保良にもある「活断層」
 千代田の燃料タンクの地下の「空洞」と「軟弱地盤」の放置。
 地城の祈りの場「ウタキ」への通行権のはく奪。
 廃排水処理による地下水汚染のおそれ。
 空自野原基地のレーダーから放射される電磁波による健康被害の懸念

 …それらの課題はどれも何の対処もされていない。地域住民の命や生活の安全など全く考慮されていない。
 そして、今後発生するだろう大きな問題は、軍事訓練の拡大とそれに伴う物理的・心理的にかかる負荷である。
 大きなミサイル発射装置搭載車が市民の買い物するスーパー前の道路を、一般車両すれすれに通り過ぎる。一方、コンビニで戦闘服のまま買い物する自衛隊員。
 戦後75年、戦争の痕跡が薄くなった島の生活の日常に「迷彩色」の戦争の空気が再び忍び寄る。


 ◆ 米軍・海兵隊の再編と自衛隊の「敵基地攻撃能力」保有論

 2020年版の防衛白書で、「陸上配備型迎撃ミサイルシステム『イージス・アショア』の撤回」が明記され、代わりに「敵基地攻撃能力の保有」提言が登場。
 この動きと連動するように自民党の国防議連は「宮古島の下地島空港の自衛隊使用」を河野(当時)防衛大臣に申し入れ、宮古島市地元の誘致派も記者会見し「自衛隊機の下地島空港配備容認」を示した。

 7月24日のロイター通信は、「2027年までに沖縄に海兵沿岸連隊を設置する」と伝えた。米海兵隊は今後抜本的に再編される。
 中国のミサイル能力向上によって西太平洋における米軍の空や海での優位が揺らぐ中、これまでのエアーシーバトル戦略から新たに海兵隊が追求している作戦は、分散された小規模の部隊で機動的に要衝となる離島を占拠し、一時的な即席の基地を構築、制海権の確保や中国軍の海洋進出を拒否しようとするものだ。
 海兵隊は、移動式のミサイルである高機動ロケツト砲システムや無人機・無人艇、サイバーといった最新の技術を駆使しようとしている。
 まさに自衛隊の「島喚防衛」「離島奪還」作戦と符合・合致する。現に、旧米共同の大規模な実働演習を行っている。


 ◆ 米軍の戦略と連携する自衛隊の次世代兵器導入

 政府は2020年12月18日、敵の攻撃圏外から対処できる「スタンド・オフ・ミサイル」の国産開発閣議決定した。
 国内で改良中の陸上自衛隊のミサイル「12式地対艦誘導弾(SSM)」の射程を5年かけて現行の150キロから900~1000キロに大幅に広げ、陸海空のいずれからも発射できるよう計画を変更する。敵基地攻撃に転用可能な装備である。
 SSMがすでに配備された宮古島に導入されるという。

 専守防衛の域はすでに逸脱している。違憲の国策であり、「平和憲法」はとっくに骨抜きにされている。

 さらに、新しい兵器として防衛装備庁は、「高速滑空弾」の開発を行い、2025年度には宮古・石垣に部隊配備すると言っている。
 これは従来のミサイル戦争に代わる次世代兵器であり、超音速のマッハ5で発射すると宮古ー石垣間を数分で敵を撃ち落せるという。

 その地対艦誘導弾の中間誘導に、宮古島にも管制局が作られている準天頂「みちびき」の情報システムが使われる。
 まさに宮古島は、日米軍事要塞諸島の最前線基地であり、その「司令部」なのである。

 7機の測位衛星である「みちびき」の管制局は全国7か所あり、そのうち5つは種子島から石垣島まで南の島々である。
 「みちびき」には米国防省の監視用センサーを搭蔵ずることが2019年日米で合意されている。
 南方の島嘆戦争の舞台が調えられてミサイル車両作動訓練いる。


 ◆ 下地島空港の軍事利用が再浮上

 米軍、海兵隊の再編が自衛隊の防衛戦略の背景にあり、注目すべき接点は「下地島空港の軍事利用」である。
 本土復帰前の60年代に計画され、熾烈な反対運動に後押しされて当時の琉球政府と日本政府は「下地島空港は軍事利用しない」という「屋良覚書」を交わした。

 1979年に開港した下地島空港は、開港以来2006年までに、米軍機の強行飛来が300回以上に及ぷ。2005年には島民の決起で自衛隊誘致策動を白紙撤回させた闘いの歴史がある。
 3000mの滑走路を持つために、「軍事的要衝」と日米に狙われ続けてきた下地島空港の軍事利用が再浮上してきた。宮古島の軍事要塞化の総仕上げとも言える。


 ◆ 現代の治安維持法=「重要土地規制法」の舞台も宮古島

 今、菅政権はコロナ禍のどさくさに紛れて、沖縄の基地反対運動つぶしの策動として「ドローン規制法」で目隠しし、今国会に上程される「重要土地規制法」で手も足も縛ろうとしている。

 琉球列島全体の基地司令部機能の置かれる宮古島では基地周辺集落は全戸が「特別注視区城」になり、規制の対象となる。
 国策に逆らう者の私権の制限、私有財産の収奪と個人情報の一元管理の権限を首相に集中させることを目論んでいるこの上なく危険な立法化である。

 戦争に向かう有事法制化、まさに現代の治安維持法であり、独裁国家・専制政治に向かっている。
 個人惰報収集のために公安警察、自衛隊情報保全隊、内閣調査室が暗躍することが可能になる。住民の監視、密告など疑心暗鬼が渦巻き、住民の分断が図られ、戦争に向かう空気がさらに深化・醸成されていく。


 ◆ 今秋の沖縄での日米共同大訓練に反対しよう!

 菅はこのコロナ第4波の高まりの最中に、国内では無為無策で放置し、バイデンのご機嫌取りに訪米し、共に「台湾危機」を作り出す共同声明に調印した。
 米中2大国の覇権の思惑の中で、米国の先兵として忠誠を誓う日本は、今秋、沖縄で大規模な日米共同訓練を行うという。米軍が宮古島へやって来ることも想定される。
 この大規模な日米共同訓練に反対し、これを止める闘いに立とう!

『立川自衛隊監視 テント村通信 第518・519号』(2021年4月1日・5月1日)