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中国新聞2021/3/18 23:17

危険性 真逆の決定【伊方原発再稼働へ 広島高裁容認】<上>揺れる司法判断

 

 

 

再稼働を認めた広島高裁の決定を受け、弁護団の記者会見で怒りをにじませる中村弁護士(左から2人目)たち(18日、広島市中区の広島弁護士会館)

 

 ■長引く審理 地域を疲弊

 

 山口県上関町長島沖に浮かぶ祝島。対岸の佐田岬半島に立つ四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)まで約40キロ。橋本久男さん(69)は18日午後2時すぎ、同原発3号機の運転を認める広島高裁決定を知った。差し止めの仮処分を申し立てた山口県東部の住民3人のうちの一人。「ショックで言葉が出なかった。福島であれだけの事故が起きながら」。

 

 この日の広島高裁の異議審決定は、「四国電の地震や火山リスクに対する評価や調査は不十分」などとして運転を差し止めた昨年1月の同高裁の仮処分決定を覆した。3号機を巡る仮処分の同高裁判断はこれで4度目。これまで2度も出た差し止め判断は、いずれも運転容認へと転じた。

 

 ただ、今回はこれまでと様相が異なる。地震や火山に対する安全性の評価が争われてきたが、この日の決定はそこに踏み込まなかった。「専門家の判断も分かれる」「裁判所は独自の科学的知見を有さない」。危険性の立証責任は住民側が負うとした異例の内容となった。

 

 ▽怒りをあらわ

 

 「四国電力の主張をそのままうのみにした、ひどい決定。司法の職務放棄だ」。広島市中区であった弁護団の記者会見で、弁護団共同代表の中村覚(さとる)弁護士は怒りをあらわにした。