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■文春オンライン ©共同通信社

3/10(水) 16:12配信

 

内部文書入手 NTTが総務大臣、副大臣も接待していた

 総務省事務方ナンバー2の谷脇康彦総務審議官が3月8日に更迭されるなど、波紋を広げているNTTの総務省への接待問題。今回、NTT側が、官僚を接待していた“迎賓館”で、大臣、副大臣ら総務省に関係する政治家に対し、繰り返し接待を行っていたことが「週刊文春」が入手したNTTの内部文書からわかった。現職中に接待を受けたのは計4人、延べ6件。また、NTTは総務省の政務三役(大臣、副大臣、政務官)を退任した政治家にも接待を繰り返しており、計15人、延べ41回にのぼる。

【画像】総務大臣、副大臣がNTTから接待を受けたレストラン内部

 NTTは役員の選任や事業計画などについて、総務大臣から認可を受けて経営されている。

 総務大臣在任中に接待を受けていたのは野田聖子衆院議員と高市早苗衆院議員。野田氏は、2017年11月22日に立川敬二NTTドコモ元社長らから、2018年3月29日に村尾和俊NTT西日本社長(当時)らから接待を受けていた。いずれも場所は東京・麻布十番にある「KNOX」。NTTグループの関連会社が運営し、年間の施設利用料(年会費)を支払っている会員企業は4割引きで利用できるNTTグループの接待のための施設である。

 高市氏は2019年12月20日と、2020年9月1日に、いずれも澤田純NTT社長、島田明同副社長、秘書室長の3人から接待を受けていた。場所は同じくKNOXだった

 情報通信などを担当する総務副大臣在任中に同様の接待を受けていたのが、坂井学衆院議員(2018年6月29日)と、寺田稔衆院議員(2020年9月14日)だった。坂井氏は現在、菅内閣の内閣官房副長官を務めている。

 高市氏の携帯に連絡すると、次のように答えた。

「食事をしたのは事実です。ただ……」
――大臣在任中、NTTの澤田社長から接待を受けたのでは?

「澤田さんと2回食事をしたのは事実です。ただ、向こうから折半の金額を聞いて支払い、領収書をいただいた。あのときは秘書が『NTT側から1万円の会費でお願いしますと言われています』と。万が一、消費税などでオーバーしたら気分的に嫌なので、1人5500円の衣料品のお土産を私費で買い、先方(3名)にお渡ししました

――高いワインを飲んだ?

「それは分からない。私はお酒を控えているので、その場を白けさせないように口を付ける程度ですから。ただ、総務省の案件で頼まれたことはないです」

 さらに翌日、書面でも補足説明があった。「会食を伴う意見交換は、行政の公平性に疑念を持たれることのないよう、すべて完全割り勘、又は全額当方負担を徹底していた」とし、NTTからの2回の接待でそれぞれ1万円を支払った領収書(宛名は自民党奈良県第二選挙区支部)のコピー2通も送られてきた。

 同じく大臣在任中に2度の接待を受けた野田氏の事務所は「調査中。いつ回答できるか分からない。締め切りに間に合わなければ『回答がなかった』で構わない」とした。

 寺田氏は「会食の時点で2日後の総務副大臣退任が決まっており、一般的な話が中心の慰労会でした。代金は先方が負担しました」などと答えた。坂井官房副長官は「週刊文春」の確認取材に対して、回答しなかった

 NTTが、通信行政に職務権限や影響力を持つ政治家や高級官僚に対し、集中的に接待を繰り返していた実態が浮き彫りになった。

 その問題点について、元東京地検特捜部検事の若狭勝弁護士が語る。

政務三役として職務権限を持つ者が接待を受け、その席で職務権限に絡む話が出ていれば、何も請託(お願い事)がなくても単純収賄罪に該当する可能性があります。例えば、携帯料金の値下げという懸案がある中で『どうなんですか?』と聞かれた大臣や副大臣が『こういう形になりそうだ』という会話をするだけで、実際に機密を教えたり行政を歪めたりしなくとも、単純収賄の構成要件を満たす。告発されれば捜査が始まりますが、起訴されるかどうかは接待の回数や金額によって決まります」

 3月11日(木)発売の「週刊文春」では、谷脇氏らを接待していた鵜浦博夫NTT前社長との一問一答や、携帯料金値下げとNTTのドコモ完全子会社化を巡る菅首相の言動、澤田社長と菅首相の深い関係などについて5ページにわたって詳報している。

 

「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年3月18日号

 

 

 

 

■3/10(水) 19:43配信 朝日新聞デジタル

総務省、少なすぎる会食の届け出 「接待隠し」が横行か


 総務省幹部が所管する通信・放送分野の東北新社とNTTから高額な接待を受けていた問題で、民間の所管業界を受け持つ他省庁に比べ、総務省は利害関係者との会食の届け出がかなり少ないことが内閣人事局の資料でわかった。意図的に届け出をしない「接待隠し」があった疑いもある。

【写真】ツイッターのプロフィル欄には「役人だけど堅くないっす」。接待問題をめぐり、総務審議官を更迭された谷脇康彦氏は、省内では「ミスター携帯」「異能の存在」などと言われていた。

 国家公務員倫理法にもとづく倫理規程では、利害関係者が飲食費を負担する接待を禁じているほか、1人1万円超の利害関係者との会食は割り勘であっても事前に届け出る必要がある。

 主な省庁の直近5年間(2015~19年度)の届け出数をみると、最多の農林水産省が計413件、次いで多い経済産業省は計350件だった。

 件数の多さは、農林水産業や製造・流通業など所管業界の実態把握が政策遂行で重視されるからだ。農水省は「生産者の声を政策に反映するため、会食回数は多い」(担当者)としつつ、同省でも鶏卵業者による幹部接待が発覚したことから「ルールに従って襟を正したい」。18年度以降に年100件超と激増した経産省は「意見交換は萎縮せず積極的にし、届け出も徹底させている」(担当者)という。

 金融庁では、90年代の旧大蔵省の接待汚職によって倫理法令ができた経緯もあり、検査・監督の担当部局の全職員にとって金融機関側が利害関係者にあたると内規で定める。担当者は「過去の苦い経験を踏まえ、金融機関との接触には気を使っている」と話す。

 一方、総務省は過去5年で8件。17年度は1件で、18~19年度はゼロだ。届け出数の少なさに「え、本当?」と驚く他省の人事担当者もいた。財務省や国家公安委員会より下回るが、発覚した接待だけでも、実態にそぐわないのは明白だ。

 東北新社の接待では、約40件のうち半数超が1人1万円を超えた。NTT側の接待は4回すべてが1万円超だが、どれも届け出はなかった。届け出がゼロの18~19年度にも、山田真貴子・前内閣広報官(元総務審議官)が東北新社から7万円超、谷脇康彦・前総務審議官がNTT側から2回、計8万円近い接待を受けるなど、多数の接待が確認されている。