=たんぽぽ舎です。【TMM:No4132】「メディア改革」連載第55回=
◆ 「文春」報道の菅正剛氏違法接待は贈収賄事件に発展か
モリ・カケ・サクラ疑獄と同じ構図
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
◎ 「週刊文春」のスクープで始まった菅義偉首相の長男の菅正剛・東北新社(東京都港区、二宮清隆社長)統括部長らによる総務省幹部4人の違法接待事件で、武田良太総務相は2月19日の記者会見で、正剛氏と会食した4人の幹部のうち、秋本芳徳情報流通行政局長と湯本博信官房審議官を20日付で官房付に異動させると発表した。事実上の更迭だ。
武田氏は「今回の異動とは関係なく、懲戒処分が必要であれば速やかに行う」と述べ、谷脇康彦、吉田真人両総務審議官も含め、懲戒処分を視野に入れていることも明らかにした。
武田氏は2月16日の衆院本会議などで、総務省で調査中にも関わらず、「行政が歪められた事実はない」「会食で放送事業の話が出ていない」と断言しており、彼自身の責任も問われる。
◎ 東北新社で総務省人脈を利用してきた正剛氏は、メディア事業部趣味・エンタメコミュニティ統括部長(デジタルメディア事業部長代理兼デジタルコミュニティ開発センター長)で、同社の子会社「囲碁将棋チャンネル」の取締役だ。
正剛氏の昇格人事は<【人事】東北新社(2020年5月1日)>と題してネットに出ている。
https://relocation-personnel.com/?s=%E8%8F%85%E6%AD%A3%E5%89%9B
正剛氏は元総務大臣政策秘書官で、菅首相の長男は世界中で正剛氏しかいないのに、2月19日の新聞各紙とテレビは「首相の長男」と仮名だ。
菅内閣は19日の閣議で、少年法改定案を閣議決定した。18・19歳の少年が凶悪事件で起訴された際、実名報道を容認する方針だ。
無罪を推定されている少年の実名を出すという政府とキシャクラブメディアが違法接待の主犯の実名を隠すのはダブルスタンダードだ。
◎ 秋本、湯本両氏が左遷されたのは、「週刊文春」2月25日号(18日発売)が<菅首相長男“違法接待”総務省局長「国会虚偽答弁」の証拠音声>と題した続報を載せたからだ。
これに先立ち、文春オンラインは17日夕、音声を公開した。
文春記事によると、文春取材班は12月10日、六本木の小料理屋で、正剛氏と木田由紀夫東北新社メディアサービス社長(東北新社取締役)が秋本氏を接待した際の会話を、近くの席で録音した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5614d8666b0627af8d987f5107c9e8263c6c92ce?fbclid=IwAR3_hzhZwkM_2tC4PyGfXutCwDmgDDuww1FySxfykLPfPDqEBVM7N0dxwAs
秋本氏は衛星放送等の許認可にかかわる情報流通行政局の局長。
秋本氏は衆院予算委員会で「会食の際、東北新社の事業について話題に上ったことは記憶にない」「衛星放送やスターチャンネル(東北新社の子会社が運営)について、話題になった記憶はない」などと繰り返し答弁。「会食はあくまで、本人または両親が東北出身者の懇親会」と釈明していた。
しかし、録音された音声を聞くと、東北新社の事業や衛星(BS)放送などにかかわる具体的な会話を正剛氏らと秋本局長が交わしている。
音声記録では、正剛氏が「今回の衛星の移動も…」と述べ、木田氏が「どれが?」と応じ、正剛氏が「BS、BS。BSの。スター(チャンネル)がスロット(を)返して」と説明している。
秋本氏は、元総務政務官の小林史郎衆院議員(広島7区)を名指して、「小林が悪いんだよ」「いやぁ、でも(小林氏は)どっかで一敗地に塗れないと、全然勘違いのままいっちゃいますよねぇ」と発言。
木田氏は「そう。でしょ?でしょ?あれ一回ね、(小林氏と)どっかで話そうとは思ってる」と応じている。
3人は六本木の割烹でBS放送「スターチャンネル」(2006年に認可、12月15日に放送認定更新)の話をしている。
また、広島の「宮沢家」を「金があるからな」などと揶揄する声も明瞭に入っている。宮沢家とは、広島出身の宮沢喜一元首相(宮沢派)のことだろう。これで、正剛氏の接待を受けた秋本局長の国会答弁が虚偽だったことが明らかになった。
◎ 総務省は2月18日衆院予算委理事会に提出した文書で、秋本氏が小林氏に関する発言を「私の音声かと思われる」と認めたと回答。「スターチャンネル」などの話題が出たことは記憶にないと証言したと報告した。
総務省は接待を受けた4人を中心に改めて聴取し、22日午前までに結果を報告するよう方針を示した。22日の予算委の集中審議に両審議官を出席させることも決めた。
正剛氏から接待を受けたのは、今夏の総務事務次官就任が確実視されていた谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官(国際担当)、衛星放送等の許認可にかかわる情報流通行政局の秋本局長、その部下で同局官房審議官の湯本氏の計4名だ。
2月18日のテレビ朝日「報道ステーション」は文春オンラインが公開した音声を放送した。
正剛氏、木田氏が秋本氏との会話で、秋本氏が元総務政務官の小林史郎衆院議員(広島7区)を名指して、「小林が悪いんだよ」「いやぁ、でも(小林氏は)どっかで一敗地に塗れないと、全然勘違いのままいっちゃいますよねぇ」と発言。木田氏は「そう。でしょ?」と応じている音声を流した。
TBS「NEW23」で星浩氏は「菅首相が、長男のことを『別人格』と言っている。それであればなおさら、真相究明に努力すべきだ。対応次第では、政権の危機になる」と述べた。
しかし、テレビ朝日と同様に、正剛氏は仮名だ。
◎ 報道各社は事件事故報道で、被疑者・死亡被害者の「実名報道ガイドライン」に固執してきた。
私人は匿名、公人(職務上の嫌疑)は顕名を原則にすべきという私や人権と報道・連絡会の提案(1984年)に対し、メディア用心棒学者(山口正紀氏の用語)、革新系弁護士を動員して、「匿名の危険性」をキャンペーンしてきた。
キシャクラブメディアは、自分たちの「実名報道原則」に照らして、正剛氏ら東北新社の木田氏や幹部をなぜ仮名にするのか、説明すべきだ。
◎ この事件は、公務員倫理法違反だけでなく、刑法の贈収賄事件に発展し、菅首相の親子を含む関係者が被疑者、重要参考人になる可能性が強くなった。
テレビは五輪組織委員会の新会長問題とワクチン接種ばかり報じているが、菅首相親子事件の方が重要だと私は思う。
https://wind.ap.teacup.com/people/15704.html