中国新聞2020年11/28(土)
案里被告秘書の上告棄却 最高裁決定 案里被告の失職濃厚
最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は28日までに、参院議員の河井案里被告(47)=公選法違反罪で公判中=が初当選した昨年7月の参院選広島選挙区で、法定を超える報酬を車上運動員14人に払ったとして公選法違反(買収)の罪に問われた公設第2秘書立道浩被告(55)=広島市安佐南区=の上告を棄却する決定をした。関係者によると、決定は25日付。懲役1年6月、執行猶予5年の一、二審判決が確定する。
【年表】河井案里被告陣営の公選法違反の経過
広島地検は、立道被告が連座制の適用対象の「組織的選挙運動管理者」に当たると判断している。広島高検は判決確定から30日以内に案里被告の当選無効などを求める連座訴訟を広島高裁に起こし、勝訴すれば案里被告は失職する。関係者によると連座訴訟はほぼ検察側が勝訴しており、失職が濃厚という。
一、二審判決によると、立道被告は昨年7月19~23日、案里被告の夫で衆院議員の克行被告(57)=公選法違反罪で公判中=の政策秘書だった高谷真介被告(44)=同=らと共謀。車上運動員14人に対し、法定上限の2倍に当たる1日3万円の報酬を支払い、計204万円を渡した。
一審の広島地裁では、弁護側が立道被告は従属的な立場にあり、「ほう助犯」で罰金刑が相当だと訴えたが、6月16日の地裁判決は立道被告を遊説責任者だったと認定。「違法報酬の支払いを前提とする遊説活動に主体的に関与した」と認め、執行猶予付きの懲役刑を言い渡した。立道被告は控訴したが、8月31日の広島高裁判決も一審判決を支持して控訴を棄却。立道被告が上告していた。
案里、克行両被告は大規模買収事件の公選法違反容疑で逮捕される前日の6月17日に自民党を離党した。
□2020/11/27
自民本部、河井夫妻を特別扱い 1日7500万円、夫妻だけの交付日も 19年政治資金報告書
2019年6月10日、河井夫妻が代表の党選挙区支部へ計7500万円の振り込みを記す自民党本部の政治資金収支報告書
自民党本部が2019年7月の参院選の公示前、元法相の河井克行被告(衆院広島3区)と妻の案里被告(参院広島)=ともに同党を離党=の二つの党選挙区支部に提供した計1億5千万円のうち半分の7500万円が6月10日に振り込まれ、しかも同日の交付金支出先は河井夫妻だけで特別扱いされていたことが27日公開された19年分の政治資金収支報告書(総務相所管の中央分)で分かった。
党本部が支出計上した支部交付金の一覧によると、都道府県連や党支部への支出日には複数の交付先が記録されたケースがほとんど。党支部への1回当たりの交付額で4千万円以上は克行被告側への6月10日分だけで突出し、参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で公選法違反罪に問われている河井夫妻への厚遇が改めて裏付けられた。
問題の昨年6月10日は克行被告が支部長の党広島県第三選挙区支部に4500万円、案里被告が支部長の党県参院選挙区第七支部に3千万円が振り込まれた。
参院選に向けた河井夫妻への資金提供は案里被告の党支部に対する4月15日の1500万円が最初。党本部主導で擁立が決まった約1カ月後で、既に公認されていた候補者へ「選挙対策費」と「公認料」の名目で提供された合計金額と同額だった。案里被告側への2回目は5月20日の3千万円。6月10日の夫妻への7500万円を挟み、最後は同27日、克行被告の党支部に3千万円だった。
この3千万円は党費や献金からなる党の一般会計から支出され、それ以前の1億2千万円は税金が原資の政党交付金だった。
当時党総裁だった安倍晋三前首相は1億5千万円について「買収に使われていない」と強調するばかりで使途の詳細を明らかにせず、今年9月に辞任。菅義偉首相も先の党総裁選で「総裁になれば責任を持って対応したい」と述べたが具体的な動きを見せていない。
▽克行被告関係2団体、収支の大半「不明」
昨夏の参院選広島選挙区を舞台にした大規模買収事件で公判中の元法相、河井克行被告の資金管理団体「日本の夢創造機構」と、同被告の後援会長が代表を務める政治団体「河井克行後援会『三矢会』連合会」が、2019年分の政治資金収支報告書で収支の大半を「不明」としたことが27日、分かった。
両団体は18年分からの繰越金としてそれぞれ約10万4千円、約2万3千円を計上した以外は、寄付や土地などの資産も全て「不明」と記載。会計責任者の秘書らの名義で添付した宣誓書で、検察当局に関係書類が押収されたことを理由に挙げ、「返還された時には報告書を訂正する」と記している。
18年分の報告書では、日本の夢創造機構が約1285万円、河井克行後援会「三矢会」連合会が約9万円の収入を計上していた。