◆ 学生が声を上げてはいけないのか!?
目黒九中ビラまき高校生弾圧に反撃を (『救援』から)
中国全人代常務委員会で「香港国家安全維持法」が可決・成立し、香港は一夜にして自由がなくなった。民主化活動家は逮捕され、民主派議員も逮捕された「一国二制度」は一夜にしてなくなり、市民の言論・表現の自由が奪われた。
しかしこれは「対岸の火事」では全くない。まさに同じころ、我が国でも平穏なビラまき活動に対する不当逮捕・弾圧が起こったのだ。
逮捕・長期勾留されていたIさんは七月二八日午前八時半頃、処分保留で釈放された。逮捕がら丸々二〇日間、不当に勾留されたことになる。
二〇二〇年七月八日午前八時、目黒区立第九中学校の近くの公道上で都立小山台高校の水泳授業のあり方を批判し、生徒の権利を訴えるビラを配っていた現役高校生Iさんが同校の高橋秀一副校長に「私人逮捕」され、警察に連行された。
被疑事実は「公務執行妨害」高橋の公務を妨害したというのだ。
勾留状などによれば、Iさんは高橋にビラ配布を「注意」された際、高橋を携帯電話で撮影しようとしたという。そしてその際に高橋に手で遮られた際に、高橋を殴打したというのだ。
しかし実際は真逆で、Iさんが高橋のビラまき活動への妨害行動を証拠として記録するため携帯電話で撮影していたら、高橋が自らぶつかってきて、「痛い痛い」などと言って警察を呼んだのだ。
その後、現場に来た警察官七名に囲まれ、警察車両に乗せられたIさん。彼は獄中で黙秘で闘いぬいた。
現役高校生相手に二〇日間勾留し続けるというのはあまりにも人権を踏みにじっている。釈放されたからといって、断じて許されることではない。
東京新聞の報道によると、Iさんを勾留した警視庁碑文谷警察署副署長松本俊彦は、Iさんの長期勾留の理由について「黙秘しているから勾留している」と述べ、Iさんが黙秘権を行使していることを理由に長期勾留していることを認めている。
また、七月一七日に行われたIさんの勾留理由開示公判で東京地方裁判所の佐藤薫裁判官は弁護士の求釈明にほとんど答えず、傍聴人から怒りの声が上がる場面もあった。これに対し、佐藤裁判官は退廷命令で応え、裁判所の警備員が一〇数人で傍聴人を法廷外に排除した。
このような「私人逮捕」がまかり通ってしまえば、公道上でのビラまきを誰も行うことができなくなってしまう。これは「表現の自由」、基本的人権の危機だ。
高校生が授業の在り方、学校運営に異を唱えただけで「転び公妨」で逮捕される。これでは学生たちは自分の周りで起きている切実な問題を社会に訴えることが一切困難になる。
今、文部科学省は「主体的で対話的な学び」を推進しているが、学校運営に声を上げただけで「逮捕」とか「生活指導」になるような学校で子どもたちが「主体的」な意思表示をすること、大人と「対話」することができるのだろうか。
ビラ配りを執拗に妨害し、あげく「ろくでもないやつ」などと発言することが、教育者として相応しい行いなのだろうか。
そしてそもそもの話として、高橋はIさんのビラまきを「注意」したとしているが、公道上のビラまきを誰かに注意されるいわれは全くない。
公道上でのビラまきは憲法で保障されている人間としての権利なのだ。
国民の人権を侵害するような「公務」は違法な権力行使でしかない。
こんなことを許していては、市民は逮捕されないように怯えて口をつぐむしかない。
今まさに香港で起きていることそのまんまである。
学校・警察・検察・裁判所一体となった大弾圧。現役高校生に国家権力のおぞましさ、恐ろしさを見せつけた一連の事件。
Iさんは釈放されたが、彼の受けた社会的・精神的ダメージははかり知れない。こんなことを許して良いはずがない。
逮捕・勾留した責任を徹底して追及していく。
私たちは今、コロナ戒厳体制下で全体主義に向かうのか、市民の権利を守るのか、そういった岐路に立っていると思う。
私たちがここで「僕は嫌だ」と声をあげなければ、私たちの人権はあっという間に奪われる。
今、声を上げる必要がある。今、NOという必要がある。できなければ明日の私たちの人権はない。
(日本自治委員会救援対策本部)
『救援 616号』(2020年8月10日)
今、東京の教育と民主主義が危ない!!
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