もし当たったら即死…人口密集地帯に落ちた国内53番目
どこかの都市に大きな隕石が落ちて悲劇的な大惨事に
なってしまうかどうかは分からない
警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識その358
島村英紀(地球物理学者)
7月に関東地方の広い範囲で火球が見えた。満月よりも明るかった
という証言もある。火球は強い光を放って移動した。
人口の多いところだから、多くの人が寝静まっている午前2時半で
起きている人が多く、神奈川・平塚で動画を撮った人もいた。
火球と同時に、千葉・習志野で大きな音がした。住民が驚いて外に
出たところ、子供のこぶし大の石がマンション2階の廊下に転がっ
いた。
その後、中庭でもう一つの破片が見つかった。石の大きさは4.5
と5センチ。重さは63グラムと70グラム。破片同士がかみ合う
元々は一つの隕石(いんせき)だったと見られる。今回見つかった
破片のほかに、複数の破片が広範囲に散らばっているかもしれない
これらの破片は、放射性物質の特徴から、落下して間もない隕石
であることが判明した。
国内で見つかった隕石はこれで53番目。2018年に愛知・小牧
発見された「小牧隕石」以来だ。小牧隕石は民家の屋根に落ちて穴
開けた。大きさは10センチ、重さは550グラムと今回より大き
もちろん、これらの隕石が当たったら即死だ。
インドでは2016年に南部のタミルナド州の大学構内で大きな爆
あり、深さ約60センチのクレーターが出来た。大学のスクールバ
運転手1人が死亡、3人が負傷した。州の首相は落下したのは隕石
だったと発表し、州政府は「隕石が原因」として家族に弔慰金を
支給した。
しかし、後の専門家の調査で、隕石ではないのではないか、という
ことになった。青みがかった色は宇宙からの物体の特徴には一致し
し、隕石は地面に落下した時点で発火したり爆発したりはしないと
のが根拠だ。
人が死んだ最古の信頼できる記録は1888年、現在のイラク北部
スレイマニヤ付近に落下した隕石の記録だ。これはオスマン帝国の
文書に記録されている。
人は死ななかったが、最近の大きな隕石は2013年にロシア西南
チェリャビンスクに隕石が落ちたものだ。隕石は17メートルの大
だった。衝撃波で東京都の面積の7倍もの広い範囲で4000棟以
建物が壊れ、1500人もが重軽傷を負った。
いままで地球に落ちてきた隕石は3万個を超える。2000年から
の間に26個の大きな隕石が落ちてきた。
これら大きな隕石が地球に衝突したときのエネルギーは、TNT火
にしてどれも1000トンから60万トンの威力があった。都市を
大変なことになったに違いない。
最近の研究では、巨大な隕石が落ちてくる頻度は、これまで考えら
ていたよりもずっと高いことが分かってきている。
今回の隕石は首都圏の人口稠密地帯だった。幸い人は死ななくて隕
も小さかったが、これは偶然の幸運のおかげだ。
しかし、今後はわからない。この幸運がいつまで続くのか、そのう
に人が亡くなったり、どこかの都市に大きな隕石が落ちて悲劇的な
大惨事になってしまうかどうかは分からないのである。
(島村英紀さんのHP http://shima3.fc2web.com/
「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より7月31日の記事