《The Interschool Journal から》
◆ 高校生「私人逮捕」 碑文谷警察署松本俊彦副署長質疑応答(全文)
平松けんじ
写真=警視庁碑文谷警察署(7月22日◇日本自治委員会撮影)
目黒区立第九中学校付近の公道上でビラ配りをしていた都立高校生が、同校の高橋秀一副校長に私人逮捕された事件で、ISJは7月29日、高校生を勾留していた警視庁碑文谷警察署の松本俊彦副署長に取材を敢行した。今回はその模様の全文文字起こししたものを公表する。
*****以下、質疑応答全文*****
ーーー7月8日午前8時、目黒区立第九中学校付近の公道上でビラまきをしていた高校生が、副校長にビラまきを注意された際に殴打したとして公務執行妨害で副校長に私人逮捕された件について伺いたい。まずちょっと簡潔に事実関係確認したい。高橋秀一副校長が警察に通報した時刻は。どのような内容の通報があったのか。
松本俊彦副署長:時間ですか?
ーーー時刻です。
松本俊彦副署長:ちょっとお待ちくださいね。
ーーーはい、どうぞ。
(しばらく間)
松本俊彦副署長:手元に詳しい時間はですね、ここでちょっとわかりかねるんですが、8時ごろにその事件が起きたということで、その後うちの署員が駆けつけて、引き渡しを受けたのがその後の時間になるんですね。
ーーー引き渡しを受けたのは具体的に何時ごろでしたか?
松本俊彦副署長:8時50分ごろですね。
ーーー8時50分ごろに引き渡しを受けたと。で、8時に通報があったということですね?
松本俊彦副署長:8時ごろに事件が発覚し…ちょっと待ってくださいね。ちょっとお待ちください。8時ごろに事件が発生してますので、その後に駆けつけて行ってますので、その後の時間で、ちょっと正式にはうちのほうで手元に控えがないんですが、その後の時間になるんですね。
ーーーなるほどなるほど。
松本俊彦副署長:事件自体は8時ごろということで聞いております。先生のほうからね。
ーーー引き渡しということなんですけれども。
松本俊彦副署長:そうですそうです。
ーーーこれは副校長先生が自らこの当該高校生の身柄を拘束し、取り押さえて、それを警察官に引き渡したということでよろしいですか?
松本俊彦副署長:そうですね。現場でね、先生から連絡があって、それでうちの署員が向かってそこで引き渡しをしております。
ーーーなるほど。で、副校長は具体的に当該高校生の体に手を当てて押さえるだとか、物理的に取り押さえる、物理的に拘束するということをしていましたか?警察官が臨場するまでの間。臨場した際、そのような状況にありましたか?
松本俊彦副署長:取り押さえてる状況はないですよ。
ーーー取り押さえてる状況はない。つまり物理的には拘束してないということですね?
松本俊彦副署長:それはね、一緒に居て、まぁその場で話をしてた。で状況があって、うちの署員から、署員がその先生から話を聞いてね、こういう事実がありましたということで引き渡しを受けてますんでね。
ーーーでも物理的に拘束していないんだとしたらこれ逮捕ではないんじゃないですか?
松本俊彦副署長:ん?拘束っていうか拘束っていう~がっちりその掴んで、腕をつかんでその体を握ってたとか、差し押さえ、押さえてた、そういう状況ではなかったという風に。ということですよ。
ーーーそれを今伺ったですが、よく特にNHKから国民を守る党がやってますけど、私人逮捕って言うと、N国党さんなんかが上げてる動画なんか見ると、実際に肩を抑えたりとかして逃げられないようにしてますよね。少なくとも。で、そういった状況が今なかったという風におっしゃったということは、これ「逮捕」してないんじゃないですか?まぁ通報があったということは事実だと思うんですけど
松本俊彦副署長:通報があって、え~とね、その辺はね、詳しく私現場行ったわけじゃないので、ちょっと確認しないとすぐにご回答できないんですけれども、どういう状況であったかというところが欲しいんですね?
ーーーそうですね。
松本俊彦副署長:現場に行ってね。
ーーーはい。
松本俊彦副署長:はいはい。え~ちょっとその辺詳しいところはね、確認しますんでね、ちょっとお待ちくださいね。ん~。
(しばらく間)
松本俊彦副署長:ちょっとお待ちくださ~い。
ーーーどうぞどうぞ。
(保留)
松本俊彦副署長:もしもし?
ーーーはい、どうぞ。
松本俊彦副署長:現場ではですね、先生とその逮捕された、I(※会話では実名)さんですか?これはあの、そういう状況があったんで、留め置いた。一緒にそこに居たという状況だそうです。
ーーー一緒には居たけれども、物理的に取り押さえていたわけではないということですね?
松本俊彦副署長:そうそう。強制して取り押さえたわけではない。
ーーーでもそうなってくると、例えばその高校生自身が自らその場にとどまってた可能性もあるわけじゃないですか。
松本俊彦副署長:そうですね。
ーーーそれは当然考慮されました?
松本俊彦副署長:え?
ーーーそれは今「そうですね」っておっしゃったということは、その可能性もあるということですよね?
松本俊彦副署長:ん?何がですか?
ーーーですから高校生が自分自身の意思で、自発的な意思で、例えば警察官が来るって言ったときに誤解があるからその誤解を解くとかそういう目的で、説明する目的で現場にとどまっていたという可能性だってあるわけじゃないですか。
松本俊彦副署長:とどまってたんですね。だからね。
ーーーとどまってた。つまりそうなってくると、結局これは「逮捕」じゃないん…「逮捕」じゃないんのではないかという。
松本俊彦副署長:いや暴行を受けたという事実はありますので、だからそれについて私人逮捕になりますんでね。
ーーー警察としては物理的に取り押さえてなくても、現場にとどまっていただけでも、これ私人逮捕になるという認識なんですね?
松本俊彦副署長:うん。だから暴行を受けたというね、訴え出がありますんでね。
ーーーなるほどなるほど。わかりました。で、副校長が当該高校生をですね、私人逮捕した時刻って具体的に何時でしょう?
松本俊彦副署長:8時ごろというふうに聞いてますよ。
ーーー8時ごろということですね。
松本俊彦副署長:はい。
ーーーわかりました。副校長は例えばその、さっきも私人逮捕の話でN国党の話出しましたけど、N国党の立花党首なんかはよく「逮捕します」と宣言するじゃないですか。副校長は当該高校生に対して私人逮捕をするという旨を宣言されましたか?
松本俊彦副署長:うーんと、それはですね、えー、ちょっとはっきり聞いてない。ちょっとお待ちください。
ーーーどうぞどうぞ。
(保留)
松本俊彦副署長:もしもし?
ーーーはい、どうぞどうぞ。
松本俊彦副署長:特にね、私人が逮捕しますというような言動というのはありません。
ーーーないですか。わかりました。
松本俊彦副署長:はい。
ーーーさっき暴行されたという通報があったから警察官駆けつけたということなんですけれども、
松本俊彦副署長:そうです。
ーーー被疑事実としては公務執行妨害であると聞いてるんですが、なんで暴行されたという通報で公務執行妨害なったんでしょうか?容疑が。
松本俊彦副署長:公務員だからです。敢えて言えば。
ーーー公務員だから。それは警察官が公務執行妨害であると判断をしたということなんですね。
松本俊彦副署長:公務執行妨害という判断をしたっちゅうのは、警察官が、相手が教員だから公務執行妨害ということで告げて逮捕してますよ。
ーーーなるほどなるほど。で、警察官がつまり公務執行妨害であると判断した?
松本俊彦副署長:そうですね。
ーーーなるほどなるほど。わかりました。で、副校長がですね、当該高校生の身柄を拘束した地点というのは具体的にどこなんでしょうか。またその場所は目黒区立第九中学校の校門前の公道上または学校の敷地内なんでしょうか。
松本俊彦副署長:学校の敷地内じゃないですよ。
ーーー学校の敷地内ではない…。
松本俊彦副署長:道路上。
ーーー校門の前の道路上ですか?
松本俊彦副署長:校門の前ではないですね。
ーーーつまり学校からどれくらい、校門からどれくらい離れた場所だったんですか?
松本俊彦副署長:4,50m離れた場所ですね。逮捕場所は。
ーーーなるほどなるほど。
松本俊彦副署長:警察官が引き渡しを受けた場所はですね。
ーーーじゃあ警察官が当該高校生の身柄の引き受け、引き渡しを受けて、拘束をして、警察車両に載せたのはその地点ということですね?
松本俊彦副署長:そうです。
ーーーなるほど、わかりました。で、この校門から4,50m離れた場所ということになってくると、具体的に副校長が行っていた公務っていうのは何なんでしょう?
松本俊彦副署長:学校警戒じゃないですか?学校の周辺警戒をやってて、そういう事実があったから、公務中ですからね。だから公務としての仕事というのもありますよ。
ーーーなるほどなるほど。そういうことだったんですね。
松本俊彦副署長:そうですね。
ーーー周辺警戒と今おっしゃいましたけど、副校長先生はこれを毎日なさってるんですか?
松本俊彦副署長:それはわかりません。それは本人に聞いてください。
ーーーわかりました。はい。で、この副校長先生はですよ、その高校生というのはビラをまいていたという状況なんですが、そのビラの配布をしていた高校生に対して注意をしていたと。で、注意をしていたら撮影をしてきたから、手で遮って、公務執行妨害という話だというふうに聞いているんですが、この注意をしていた地点というのは学校の校門前なんでしょうか?それとも…敷地内ではないとさっきおっしゃったので、校門前なんですか?それとも校門から離れた場所だったのか。
松本俊彦副署長:その逮捕の場所ですね。
ーーー逮捕された場所なんですね。
松本俊彦副署長:うん。
ーーーその注意というのはどのような態様だったというふうに・・・まあ態様って言うと同音異義語で聞き間違えるかもしれないので…
松本俊彦副署長:(笑)
ーーー要するに注意の、どのような注意をしたかってことですね。
松本俊彦副署長:それは本人に聞いてください。わかりません。
ーーー警察としては注意をしていたというふうに・・・
松本俊彦副署長:注意をしていたという事実しか聞いてないんですね。
ーーーあ~なるほどなるほど。注意の詳細までは聞いていないわけなんですね。
松本俊彦副署長:はい。
ーーーわかりました。わかりました。で、この注意ということなんですけど、ビラを配布をしていた事に対する注意だと聞いていますか?
松本俊彦副署長:そういう風に聞いております。
ーーーなるほどなるほど。で、こうなってくるとですよ、いわゆる公道上のビラまきというのは憲法21条により保障されてる表現の自由の範疇だと思うんですけれども、これに対してただビラを配ってた人に対して注意をするというのは適法な公務執行だと言えるというふうに警察は考えているんですか?
松本俊彦副署長:そういうことでは、私のほうではわかりませんけれども、暴行を受けた事実ということで、公務執行妨害ということで、逮捕しておりますんでね。
ーーー副校長が執行していた公務が適法かどうかについて警察は評価していないわけですね?
松本俊彦副署長:ん?評価してないと言うと?
ーーーだから要するに警察としてはその副校長に対する暴行があったから公務執行妨害で取ったという風におっしゃったわけですから、
松本俊彦副署長:そうです。
ーーー要するに副校長が行っていた公務がそれが本当に適法か適法じゃないかという判断は警察ではしていないということですね?という確認です。
松本俊彦副署長:うーん、ですから暴行の事実について、逮捕ですからね、それについての公務執行妨害として引き渡しを受けたんで、警察でね。身柄を拘束したと。これ以上でも以下でもありません。
ーーーつまりこれ以上でも以下でもないということは、結局副校長がどのような公務をしていて、それが本当に適法かどうかというところまでは警察は見てないということですね。わかりました。
松本俊彦副署長:いや、ですから、公務っていう時間でありますし、本人も身分も公務員という事実がありますんでね、それを公務員としての公務執行妨害罪という事実がありますんでね。
ーーーなるほどなるほど。わかりました。で、捜査過程においてですよ、刑事課が担当されたと。
松本俊彦副署長:はい。
ーーーその後警備課に担当が移ったと聞いているんですが、担当が移った理由は何なんでしょう。
松本俊彦副署長:そういうのは警察の中での仕事ですからそういうのはお答えできません。
ーーー答えられない。わかりました。当該高校生は、その現場で公務執行妨害という被疑事実で逮捕されています。
松本俊彦副署長:はい。
ーーーでも、しかしながら、現場で逮捕されてるわけじゃないですか。暴行云々というのは結局現場で起きてるわけですよね。
松本俊彦副署長:そうですね。
ーーー当該高校生の自宅を警察、警備課は、家宅捜索をしていると。14日に。で、家宅捜索をした理由って何なんでしょうね。
松本俊彦副署長:黙秘をされて全然捜査が進まないということですね。
ーーー黙秘をされて全然捜査が進まないから家宅捜索をして、証拠物件を押さえようということで捜索されたんですね?
松本俊彦副署長:うーんとねぇ、いろいろ理由はあるんで、それ以上はお話はできません。
ーーーなかなか難しいということですね。
松本俊彦副署長:はい。
ーーーわかりました。わかりました。で、今回、家宅捜索の際にいわゆる事件と関係のない文書類が押収されたという風な話なんですけれども、事件と、公務執行妨害事件と関係のないビラ類を押収した理由は何なんでしょうか。
松本俊彦副署長:そういうのはお答えできません、捜査上差支えがありますんでね。
ーーーわかりました。で、今回あの警察としてですよ、副校長や教員等に当然調書取られてると思うんですけれども、ある種その副校長側の言い分をそのまんま信用して長期勾留したというふうにも見える部分があるんですけれども、それは何故なのかなと。
松本俊彦副署長:そういうのは捜査上の過程になりますんでね、まさに今捜査してますんでね、そういうのはお答えできませんよ。
ーーーわかりました。今回、公務執行妨害ということですけれども、ビラ配布をしている人に対してこういった逮捕とか勾留というものをやってしまうと、憲法上の国民の権利を委縮させかねないとは思うんですけれども、今回例えばこれ暴行だったら確かに何でしょう。そういう事案があり得るってことは考えられると思うんですけど、公務執行妨害で逮捕というのは非常に異例だと思うんですけれども、異例なんでしょうか、これは。
松本俊彦副署長:いやいや異例でも何でもないですよ。普通、通常の捜査で、通常の事件としての取り扱いになりますよ。
ーーーなるほどなるほど。わかりました。で、被疑事実は公務執行妨害ということなんですけれども、今回被疑者とされた高校生を7月8日から28日の午前まで20日間勾留された
松本俊彦副署長:ええ。ええ。
ーーーということなんですけれども、20日勾留したのは何ででしょうか。
松本俊彦副署長:勾留は検事の判断ですから、警察の判断ではございません。
ーーー警察の判断ではない。でも東京新聞の記事によれば、松本副署長は、当該高校生が黙秘をしたことを理由に勾留をしたという風に言ってる
松本俊彦副署長:いやいやそれは逮捕したっちゅうことですよ。勾留したってことはね。逮捕をしましたということです。
ーーー逮捕をしたと。
松本俊彦副署長:逮捕、勾留したということです。黙秘があったんで、逮捕、勾留した。
ーーー黙秘があったから逮捕、勾留した。逆に言うと黙秘がなかったらこれは釈放されてたってことですか。
松本俊彦副署長:それは可能性はありますけれども、その辺はお答えはできません。
ーーーなるほどなるほど。黙秘をしたことに云々ということはこれ結局勾留をするかどうかということは検察官が判断をしたということなんですね。
松本俊彦副署長:そうですね。勾留するかどうかはですね。
ーーー今回、先ほど逮捕の状況の際にですよ、高校生が自らとどまっていた可能性もあるということだったんですけれども
松本俊彦副署長:ええ。ええ。
ーーーもしそうだとすると、むしろ逃亡とか罪証隠滅の恐れってないように思うんですけれども、そこのところについて何でしょう、勾留理由開示公判に行ったときにいろいろ聞いた話によれば、逃亡だとか罪証隠滅の恐れがあるということだったんですが、当該高校生は実家で暮らしているという風に弁護士さんも言っていたし、逃亡の恐れはないんじゃないかということだったんですけど、警察としては逃亡、罪証隠滅の恐れについてはどのように認識されてたんでしょうか。
松本俊彦副署長:だから黙秘をされて全然話をされないんでね、それは罪証隠滅の恐れがあるという判断は警察ではせざるを得ないんですね。
ーーー黙秘をするとこれは罪証隠滅の恐れになると警察では判断せざるを得ない。
松本俊彦副署長:そうですね。
ーーーなるほどなるほど。で、現在、当該高校生は釈放されていますね?
松本俊彦副署長:されてますね。
ーーーはい、わかりました。で、警察としては現在は当該高校生について、その公務執行妨害の被疑事実、犯罪が実際にあったと考えていますか?
松本俊彦副署長:実際にあったというか、そういう風に犯罪があったから拘束したんですよ。
ーーーでも今釈放、結局処分保留で釈放されちゃってますよね?
松本俊彦副署長:ええ。そのだから事実が判明しないまま、もう何も話、黙秘で話がかたされないんで、それは勾留がね、もう満期を迎えてますんでね、それはもう釈放せざるを得ないですよね。
ーーーなるほどなるほど。そういうことだったんですね。
松本俊彦副署長:はい。
ーーーわかりました。いろいろ教えていただきまして…。
松本俊彦副署長:すみません、もう一度お名前と所属を教えていただけますか。
ーーーはい。私、インタースクールジャーナルの平松と申します。
松本俊彦副署長:平松様ですね。
ーーーはい、そうです。
松本俊彦副署長:フルネームで教えてください。
ーーーインタースクールジャーナル、平松けんじと申します。
松本俊彦副署長:平松何さんですか?
ーーーけんじと申します。
松本俊彦副署長:けんじ様ね。はい、わかりましたー。
ーーーすみません、長々とお話伺ってしまって申し訳ございません。
松本俊彦副署長:とんでもございません。
ーーーご丁寧にお答えいただきありがとうございました。それでは失礼いたします。
(終)
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『The Interschool Journal』(2020年08月05日)
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