◆ 「スーパーシティ構想」を斬る
   ~住民の意見を無視 (週刊新社会)

東京・大田区議 奈須りえ


 人工知能(AI)などの技術を活用した先端都市「スーパーシティ」構想の実現に向けた改定国家戦略特区法が5月27日、参院本会議で可決、成立した。
 全国で5カ所程度の地域を特区に指定する方針で、秋までに募集を開始し、年内の決定を目指す。計画を具体化し、実現するのは2022年以降になる見込みという。
 複数の分野にまたがる規制を一括して緩和することで、自動車の自動運転やドローン配送、キャッシュレス決済、オンライン診療などのサービスを同時に利用できる暮らしの実現を目指すとうたうが、監視社会に道を開く危険性も指摘される。
 「構想」の問題点を東京・大田区議の奈須りえさんに寄稿してもらった。

 ◆ トロントでは断念


 国家戦略特区法が改定され、国は特区を「スーパーシティ」にしようとしています。
 海外で先行している「スマートシティ」に似たネーミングなので、ICT(情報通信技術)を活用した利便性の高いまちをつくるのだろう、と思っている人も少なくないと思います。
 一方、内閣府がスマートシティの例として紹介しているカナダ・トロントは住民対話型と名付けられていますが、「2019年に再開発のマスタープランを発表するも、グーグル系列の私企業が個人情報を収集することに対し、近隣住民やメディアが強く反発し、住民への説明会を繰り返し開催したものの、計画は大幅に遅れている」と説明されていて、先日、グーグルの親会社が断念したと報道されました。
 住民と対話しながら作ろうとしたスマートシティは、住民の反対にあい、実現できなかったのです。

 ◆ 「ミニ独立政府」

 一方、国が作ろうとしている日本のスーパーシティは、企業に行政情報・個人情報・企業情報を駆便した事業を行わせるプラィバシーの権利の問題だけでなく、国家戦略特区法の仕組みで決めるので、認可を与えるのは一部の閣僚と有識者で、そこに住民の意思は反映されません
 これまでの国家戦略特区の問題は、特区の中だけ規制の例外を認めるという、国会の立法権が、一部の閣僚と有識者に与えられたことによる問題でした。

 今回の改定で、特区でのインフラ整備や住民福祉など、国や地方自治体が行っている事業の立案や執行について企業が提案し、一部の閣僚と有識者が認可することになります。
 国会の持つ立法権だけでなく、国や地方の行政権まで一部の閣僚と有識者が持つことになり、まさに竹中平蔵氏のいう「ミニ独立政府」が生まれようとしています。
 そうなると、上下水道などインフラ更新も福祉も事業者の手に委ねられる恐れがあります。

 今後の人口減少社会で私たちは、インフラの規模の縮小と医療・教育を含めた社会保障をどう維持するかが課題ですが、企業が利益を乗せてインフラ整備や福祉を担えば、企業の利益に税金が流され、身近な住民サービスが削られる恐れもあります。

 ◆ 「便利さ」はただではない 認可の前に止めよう

 国は、住民との合意形成をするといいますが、仮に合意されなくても首相が勧告できることになっていますから、認可されれば決まったも同然です。
 国は、スーパーシティの実現までに5年ほどはかかると言っています。
 企業も国も、スーパーシティの「利便性」についてマスコミを駆使して私たちに訴えてくるでしょう。それが国のいう合意形成なのだと思います。
 そうした「宣伝」に誘導されることなく、事業認可の前に住民運動により反対の意思を明確にし、止めなければなりません。便利さはただでは手に入らないのです。

 ◆ 個人情報保護の流れに逆行する

 共謀罪NO!実行委と「秘密保護法」廃止へ-実行委は、5月17日に出した声明「スーパーシティ法案を廃案にしよう!」で、構想は「世界のプライバシー、個人情報保護の流れに逆行する」と指摘する。
 声明は重大な問題点として、
  ①住民のニーズに基づいたものとならず、決定されたサービスを享受したくなくても、自分の情報やサービスの提供を拒否することができない
  ②住民の個人データが一元的に管理・利用され監視社会に道を開く危険性が高いこどを上げた。

『週刊新社会』(2020年6月23日)

 

 

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