=たんぽぽ舎です。【TMM:No3983】「メディア改革」連載第37回=
 ◆ 検察幹部と賭博・ハイヤー送迎の記者を起訴猶予
   今も続く官報癒着・接待を調査し、人民は抗議を

浅野健一(元同志社大学大学院教授、アカデミックジャーナリスト)


◎ 私は6月11日、仲間48人で、黒川弘務前東京高検検事長、産経新聞の大竹直樹社会部司法キャップ・河合龍一社会部次長、朝日新聞の大島大輔経営企画室次長の4人を東京地検に常習賭博罪などで告発していたが、地検から7月10日夕、「税金の私物化を許さない市民の会」の田中正道共同代表に、4人を不起訴処分(起訴猶予など)としたという連絡があった。記者3人などの肩書は当時。

 

 


 7月12日、地検の検察官検事、田淵大輔氏から簡易書留で私にも処分通知書が届いた。


 地検の斎藤隆博次席検事は10日夕の臨時会見で、常習賭博は認めなかったが、単純賭博罪の成立を認めた上で、「娯楽の延長で、動いた金額も多くなく、既に辞職、停職処分など社会的制裁を受け、反省している」として4人を起訴猶予とした説明している。
 不起訴についての私の見解はFBの投稿を読んでほしい。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100022241222173

◎ 私たちを含め各地の市民や弁護士のグループが6件の同じ内容の刑事告発をしていた。地検の不起訴は、検察官と新聞記者との癒着による賭博を今後も黙認、放置するという近代国家ではあり得ない国家意思の表明だ。別の市民グループが13日、検察審査会に申立を行ったが、私たちも近く申立を行い、強制起訴に持ち込みたい。

 検察が不起訴にした背景には、政府高官や捜査幹部との賭けマージャン、新聞社の借り上げハイヤーでの送迎などのキシャクラブ記者の取材方法を肯定する大谷昭宏、池上彰、高田昌幸、田島泰彦、服部孝章各氏らの援護射撃がある。
 自称ジャーナリストと御用学者は、新聞界で今も続く旧態依然の取材対象者への「抱き付き取材」「夜討ち朝駆け取材」「肉薄取材」を、黒川事件があっても続けろと公言している。

◇ 元NHK記者の鎌田靖氏は5月23日のTBSの「ひるおび!」で、「NHKの新人時代、記者は警察官など取材対象者にあらゆる手段で食い込めと指導された。取材相手と仲良くするが、あくまでそれは仕事であって、一線を越えてはならないと教えられた」と語った。
 元読売記者の大谷昭宏氏、元NHKの池上彰氏らも、取材の手段に制限はないと言い切っている。

◇ 服部孝章・立教大名誉教授は5月23日の西日本新聞の記事で、次のようにコメントしている。
 <取材源と人間関係を深めて情報を取ることは重要で、時には違法すれすれの取材手法も行われているのが実情だ>
 <元毎日新聞記者の西山太吉さんが沖縄返還を巡る日米の密約を暴いた際は、外務省女性職員から情報入手した手法を、日本のマスコミは男女のスキャンダルとして批判したが、米紙ワシントン・ポストのブラッドリー編集主幹(当時)は逆に称賛した。(略)/最も懸念するべきは、賭けマージャンに目くじらをたてすぎて問題の論点がすり替わることだ。政府が黒川弘務東京高検検事長の定年を延長する閣議決定をしたこと自体が問題。マスコミは取材源に迫り、しっかり追及してほしい>

◎ 人民が検察ナンバー2と司法記者の常習賭博を徹底批判するのは当然だ。
 安倍政権の違法な閣議決定を追及することと、メディアを批判することは、同時並行で必要なのだ。
 また、西山さんのケースと、賭けマージャン官報接待を同列に扱うのは、西山さんの名誉にかかわり不適切だ。

 評論家の川本三郎氏もTBSが発行する『調査情報』8・8月号の「同時代を生きる視点」で、<ジャーナリズム、警察にとって「正義」とは何か―伊兼源太郎『事件持ち』>と題した記事で、警察と記者の「持ちつ持たれつの関係」を完全肯定している。
 川本氏は元新聞記者の伊兼氏の『事件持ち』(KADOKAWA)を事件報道をめぐる今日的なテーマに正面から向き合ったミステリーと評している。

 川本氏は記者も刑事も同じような「正義」への思いがあると指摘し、
 <記者には捜査権はないから、事件をいうには警察を深く取材するしかない。警察も、世論を考えれば新聞記者の協力が必要になる。両者の妥協点として記者クラブがある。/現在、批判されることの多い記者クラブだが、新聞記者出身の筆者は、その必要性をよく認識している>と述べる。
 <ともに「現場」で苦労している新聞記者と警察官のあいだに、ある時、一瞬とはいえ友情が生まれる時がある、それは、いわば、現場の修羅場を身を以て知っている者どうしの連帯感といえばいいだろうか>

◎ 映画評論、文芸論で著名な川本氏のあまりにも軽薄なメディア論に愕然とした。川本氏は1969年朝日新聞に入社、71年8月、「朝日ジャーナル」記者の時、菊井良治氏らが赤衛軍を名乗って起こした朝霞自衛官殺害事件に関わったとして逮捕され、懲戒解雇となった。
 この事件では京大助手だった滝田修氏も逮捕された。私が共同通信記者になった前後の事件で、今も鮮明に覚えている。川本氏の若い時の経験が全く生かされていない。
https://book.asahi.com/article/11576242

◎ 7月8日の朝日新聞にも、<特ダネとは・報道とは、理想追って 元記者・伊兼源太郎さん「事件持ち」>という記事が載った。
 <入社2年目の記者、永尾哲平は、受け持ちの警察署管内で起きた連続殺人事件を取材中、被害者2人に共通する知人に話を聞いた。知人に接触できなかった県警は、永尾の上司を呼び出し、特ダネと引き換えにその取材メモを見せるよう秘密裏に交渉する>
https://www.asahi.com/articles/DA3S14542035.html

◎ これが、記者と警察官の「正義」の実態だ。
 私がいた警視庁上野署、千葉県警の記者クラブ(記者室)にも、マージャン台、花札があり、賭けごとが行われていた。1987年に出版した『犯罪報道と警察』(三一書房)の第五章「記者と警察」に次のように書いた。
 <千葉県警クラブは県警の二階にあった。西側の畳部屋にマージャン台があったが、南隣の県庁ビル(八階建て)の三階以上の部屋から、クラブの中が丸見えだった。県庁職員の中から「真っ昼間からマージャンをしている。しかも金を賭けている」という“告発”があった。そこで中から外はある程度見えるが、外からは見えない緑色のプラスチック板を窓の上から三分の二のところに張り付けた>
 千葉県警本部捜査二課長(東大卒キャリア、20代後半)が昼間から参加し、賭けマージャンをしていた。川上紀一知事(元内務官僚)が知事室から記者らの賭けマージャンを目撃し問題にして、県警が血税を使って目隠しを付けた。
 隠し撮りで写真を撮っておけばよかったとずっと後悔している。

◎ 数年前に見た国土交通省の記者クラブにも、立派な娯楽コーナーにマージャン台があった。キャリア官僚とキシャクラブ記者の癒着はセクハラの原因にもなっている。
 日本にしかないキシャクラブを解体し、夜討ち朝駆けなどの旧態依然の取材体制の調査がいま必要だ。
 人民はキシャクラブを舞台に今も続く官報接待を監視し、みんなで当局と企業メディアに抗議しよう。

 

 

パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2

 今、東京の教育と民主主義が危ない!!
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