<教科書比較私見②-4>
 ◆ 『私たちが拓く日本の未来』(総務省・文科省共作の副教材)が拡散している「請願権」隠し!
   皆さま     高嶋伸欣です

  「請願権」の定着・啓発を阻害している官僚組織による企みが次々と分かってきています。
 今回、問題にするのは高校生用副教材『私たちが拓く日本の未来』(B5.104p)とその『教員用指導書』(96p)です。
 これらは2015年9月に総務省文科省が協働で制作し、その秋に全国の国公私立高校の全学年生徒に配布(初年度370万部)され、その後も毎年の新入生(1年生)分の約120万部が配布され続けています。

 同『副教材』は、2016年6月19日から施行されることになった公職選挙法の改正によって、選挙権年齢が18歳に引き下げられたのに合わせ、高校在学中に投票することも想定して、政治的関心を高めるように仕向け、投票率の向上を意図して制作されたものとされています。


 内容は
  「解説編(選挙や政治の仕組み、憲法改正国民投票など)」
  「実践編(話合い・討論の手法、模擬選挙、模擬請願、模擬議会など)」
  「参考編(Q&A,学校における政治的中立の確保など)」
 の3編構成になっています。?

  *『副教材』『指導書』とも文科省のHPで公開されています。WEBではA4サイズですが、現物はB5だそうです。

 上記のように、「実践編」に「第4章 模擬請願(72~76p)」とあるので「やれうれしや!」と画面を開いてみたら、落胆。

 72pの第4章の冒頭から「模擬請願 議会に提出する請願書をまとめよう」とあって、”請願の宛先としての官公署は議会だけである”と、思い込ませる詐術がここでも堂々と用いられているのでした。

 『指導書』も同様で、自治体の一般執行機関(一般行政部門)や独立委員会などが官公署であり、議員の紹介や議会での請願採択などの手順が不必要であることに、気づきにくく仕組んでいる底意が見え見えです。

 そうした「底意」の存在を推定する根拠の一つが、請願に関する法規類を、「参考編」に全く掲載していないことです。
 憲法16条、請願法全文(6条までしかありません)、国会法(第9章 請願)、地方自治法(第7節 請願)などの条文どころか、これらの法規の名称さえこの『副教材』『指導書』には出てきません。

 何かといえば、文科省の”お手盛り文書”に過ぎない「学習指導要領」を「法律同然に一言一句を遵守しろ!」などと法規類をふりかざす文科省が、ここでは逆に「請願権」保証の法規に気付かせずに、「官僚天国」社会に若者を誘導する詐術を、総務省と共謀して『副教材』等に仕込んでいることになります。

 この事態が2015年から、今日まで是正されることなく全国に蔓延し続けているわけです。

 残念ながら、高校現場の教員の皆さんからは、この問題点を指摘した声を聴いたことがありません。逆に「実践編」での「模擬請願」を経験させた後に、そのノウハウに従った”マジ請願”を生徒がやりました、という実践報告が研究会などで公表されているそうです。
 高校現場の教員の皆さんが、「官僚天国」創りの詐術に取り込まれているようで、残念です。

 もともと、「請願権」のことを含め、主権者認識の育成は学校教育の主要な目標・役割で、特に社会科がその中心となる教科であるはずです。
 小学校の社会科の段階からそうした役割をきちんと果たされていれば、選挙権年齢が18歳からに引き下げられたとしても、慌てて高校生向けの副教材を作成するような必要はなかったはずです。
 総務省も文科省も本心から主権者意識の育成を目指しているのであれば、高校生用だけでなく中学生・小学生用の「副教材」を作成しなければならないはずです。でも、その様子はありません。

 ちなみにドイツの小学校では、社会に関心を向けるように促し、社会に向けての要望があるときはそれらをを発信する方法として、討論・意見集約から要望文書の作成・提出・公表、署名活動、集会、デモ実施などの段階を追った行動が可能であることが学べるカリキュラムになっているそうです。

 一方の日本では、社会科を中心とした憲法理念の啓発・定着を巧妙に骨抜きにし続けてきた歴代政権の下で、文科省は「虎の威を借るキツネの手法」を省内文化としてきた伝統(加戸守行・元文部省官房長の国会証言)に従い、主権者教育を二の次にしているのは明らかです。

 選挙権年齢の18歳への引き下げは、若者層の保守化に目を付けた自民党筋の思惑によって拙速に決定されたものだと、指摘されています。
 ところが、拙速さ故に自民党筋から「高校教師による『偏向教育』の対策が必要だ」などと指摘され、文科省が、「対応する副教材を作ります」と国会で答弁したことで、作成に追い込まれたのが今回の『副教材』です。

 そのことを如実に示しているのが『指導書』の内容です。
 前出の「模擬請願」の節で平然と「議会宛請願」のみの指導法を展開した後、巻末の24p(全巻96p)を費やして「指導上の政治的中立の確保等に関する留意点」をあれこれと並べ立てています。「あれもだめ、これもだめ」というきめの細かさで、「これでは『べからず集』」(『読売新聞』2015年9月30日)という声があがる程、教員のやる気を奪うものになっています。
 自民党筋は大満足でしょう。主体性とはおよそ無縁の文科省ならではの迎合ぶりです。

 その文科省の迎合姿勢を見透かしていたのが総務省で、生徒用『副教材』に「官僚天国」を支えている詐術「議会宛請願権案内」の盛り込みを文科省に受け入れさせ、学校現場への浸透に”文科省著作”ということで見事に成功している、と私には読めます。

 そしてもう一つ。先のメールで、都道府県など地方自治体のHPが、横並びで「官公署への請願案内」を「議会宛請願案内」にすり替える詐術を横並びの全国一律で行っている現状について、背後にそうさせている何かの”力”の存在が推認される、と指摘していた件です。

 ここでいう”力”の一つとして、私は「総務省(旧自治省)の幹部官僚たち」を想定しています。旧自治省の前身は「旧自治庁」そして、敗戦時の「旧内務省」にさかのぼります。

 「旧内務省」は国民を震え上がらせた思想統制機関の特高警察をはじめ、国民の諸権利を奪うことを主任務の一つにしていた組織で、その「内務省」の主流を引き継いだと自負していたのが「自治庁」です。

 敗戦時の内務省幹部の実務官僚の一人だったのが、自民党衆議院議員になった奥野誠亮氏です。同氏は、敗戦時に全国を駆け回り、”不都合な証拠資料は焼け!”と指示し、「従軍慰安婦」関係の資料を抹殺したことを自慢げに、内務省OB会の座談会で語ったことで知られています。
 奥野氏は、自民党の保守派の重鎮として文部大臣、法務大臣を歴任しました。そうした「旧内務省」官僚の人脈が現在の総務省にも引き継がれているであろうと想定されます。

 そのように想定した時、思い浮かぶのは「民は官僚に従っていれば良い」という戦前同様の「官僚天国」を維持するためには、「請願権」の活用に気付いていない社会状況をこのままにして、ウソはつかないけれど、ごまかしの詐術で切り抜けられるところまで、知らぬふりをしようではないか、という「阿吽の呼吸」を全国に広げる役割を誰かが果たしているはずという想定です。

 その想定に合致する存在が、現「総務省」内の「旧自治省、旧内務省」の人脈であることを、今回の『副教材』『指導書』が証明してくれた!

 これが私の想定する”力”です。
 勘繰り過ぎでしょうか?

 ともあれ、全国の高校現場では『副教材』を逆手に利用して、このメールに再度添付している資料にある憲法16条や請願法の条文などと照らし、生徒が「官僚天国」の詐術を見抜いて、「だまされているのではないか」と気づく学習機会を創られることを期待しています。

 <お願い> 上記の『副教材』『指導書』はどちらもWEBで公開されていますが、現物は現職の教員以外、入手できません。
 私は目下、東京都杉並区教委と請願を不当に扱った件で法廷の争いをしています。また体力・気力が続けば、国会法と地方自治法の議会宛請願に議員の紹介が必要としている規定は、憲法違反だという違憲訴訟を、起こすことも考えています。
 それらの訴訟で、上記の『副教材』『指導書』を証拠(書証)として提出するため、できればそれぞれ複数部数を今のうちに入手しておきたい、と考えております。
 学校現場でこれらの余分があって提供して頂けるようでしたら、宜しくお願いいたします。外出を控えていますので、お手数ですが着払い等の扱いで送って頂ければ幸いです。

宛先は
 167-0054 東京都杉並区松庵 1-6-9    高嶋伸欣です

  以上 高嶋の私見です   ご参考までに        拡散・転送は自由です

*「請願権」についてはまだ続きます。

 

 

パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2

今、東京の教育と民主主義が危ない!!
 東京都の元「藤田先生を応援する会」有志による、教育と民主主義を守るブログです。