=たんぽぽ舎です。【TMM:No3913】【TMM:No3914】「メディア改革」連載第30回=
◆ コロナ禍、安倍晋三氏が首相である国難
浅野健一(元同志社大学大学院教授、アカデミックジャーナリスト)
◆ 「世界で最も手厚い支援」発言を撤回せよ
私は4月2日の喉頭・咽頭摘出手術から17日が経ち、順調に快復へ向かっている。病院でテレビを見る時間が多いが、NHK、民放ネット4局ともに、安倍晋三・自公野合政権の新型コロナウイルス感染対策の遅滞、迷走は失政という視点が全く見られない。
現在、日本で新型コロナウイルス禍が深刻化しているのは、
イ.安倍首相がレガシー作りのため、東京五輪の開催にこだわり、国内の感染者の数を抑えるためPRC検査を妨害した
ロ.習近平・中国国家主席の国賓来日のため、中国からの入国制限を取らなかった
―結果だ。初期対応の失敗は明白だ。
1月16日に国内で初の感染者が見つかり、19日には大韓民国(韓国)で最初の感染症例を確認。1月22日、WHOが緊急会議。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は中国からの観光客の受け入れを全面停止した。1月下旬、中国を中心にコロナウイルス危機が東アジアに急速に拡大した。
コロナ禍が東アジアにも拡大していた1月24日、首相は北京の日本大使館のHPに自ら登場、中国国民に向けて春節(旧正月)を祝い、訪日を熱烈歓迎する動画を公開した。
動画は1月30日に削除されたが、首相は2月4日、春節祝賀メッセージを政府インターネットTVにアップした。この動画は今も見ることができる。台湾などが中国からの入国禁止を決めた中、中国からの来日を呼び掛けたのだ。
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg18405.html
安倍首相は経済失速を懸念し、感染防止対策が遅滞した。4月7日に7都府県を対象に非常事態宣言を出し、外出自粛を要請した。
しかし、休業補償は全く不十分で、「国民へのお願い」しか言わない。
安倍首相は「休業に対して補償を行っている国は世界に例がなく、わが国の支援は世界で最も手厚い」と言い放っている。安倍氏はこの虚偽発言を撤回すべきだ。
安倍政権は16日、緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大すると決定した。
首相はまた、新型コロナ対策として、「国民1人当たり10万円の現金を一律給付」するため、今年度補正予算案を組み替える方針を決めた。9日前に閣議決定していた「困窮世帯限定の1世帯当たり30万円の現金給付」は取りやめた。
公明党の山口那津男代表が「一歩も引かない決意」と連立離脱をちらつかせて要求したのを受け入れたもので、閣議決定後の予算案組み替えは前代未聞だ。
「現金10万円給付」は政権反対党が提案していたが、安倍氏が今最も頼る今井尚哉補佐官が反対していた。14日から16日にかけての朝令暮改は官邸が機能していないことの証明だ。
NHKは16日、「ニュース7」を延長し、宣言が全国に拡大され、1人10万円支給が決まったニュースを伝えた。安倍氏の広報官のような岩田明子が登場し、首相が言ったことを鸚鵡返しした。「NHKは岩田記者を出すな」という運動が必要だ。
非常事態宣言を全国に拡大したのは、「1人10万円支給」へのドタバタ政策変更の理由付けとしか思えない。安倍首相は、現行法の緊急事態宣言では、海外のような強い規制はできないと強調し、改憲で緊急事態条項を入れようとしている。コロナ禍を壊憲に利用する連続放火魔による火事場泥棒だ。
IWJが13日に配信した<日刊IWJガイド2020.4.13日号~No.2769号>の<新記事紹介>に<コロナ禍で緊急事態宣言!見えてきた「安倍独裁」へのシナリオ!?岩上安身が引き出した総理の「本音」を痛烈解説!2020.3.27ジャーナリスト浅野健一氏インタビューから>が載っている。
https://youtu.be/dgIXL0EHIi4
◆ 安倍首相が「記者クラブ」議論呼びかけ
以下はIWJガイドの引用だ。
(4月7日の)緊急事態宣言に先立って開かれた衆院議院運営委では、日本維新の会の遠藤敬議員が、「現行憲法は、未知のウイルスとの闘いを想定していなかった。憲法改正による緊急事態条項の創設が不可欠だ」と主張。
安倍総理は、待ってましたとばかりに、「新型コロナウイルスへの対応も踏まえつつ、国会の憲法審査会の場で、与野党の枠を超えた活発な議論が展開されることを期待したい」と応じた。
安倍氏の頭の中には、政権の維持と五輪、憲法改「正」しかない。高級飲食店での会食、お好みの各界有名人とのゴルフができなくて、いらいらしているのだろう。
こんな人間がこの時期、日本のリーダーであることは最大の不幸だ。一秒も早く安倍政治を終わらせ、緊急人民統治体制をつくろう。
安倍首相は緊急事態宣言を全国に拡大した翌日の17日、午後6時から官邸で内閣記者会主催の記者会見を開いた。ウイルス禍が始まって5回目の会見だった。
私はNHKで安倍首相の会見を見た。首相はいつものように、プロンプターを使って約20分演説した。
幹事社の代表質問があった後、NHKは数人の記者が質問を終えたところで中継を止め、またあの岩田解説委員が出てきた。その後、官邸HPの動画で会見を最後まで見た。
長谷川栄一内閣広報官幹事の司会の質疑応答に移った。長谷川氏に指名された記者はスタンディングマイクまで進み、マスクを外して質問する前回と同じ形式だ。
参加者は前回から29人に制限された。IWJによると、内閣記者会の幹事業務ができる常駐19社は1社1名、その他の記者会メンバーとネット・フリー枠から抽選で10人が選ばれたという。
終盤で指名されたフリーランス記者の畠山理仁氏は緊急事態宣言下の選挙について聞いた後、「この記者会見は、参加する記者、質問の数が限定されている。このように限定されている形の記者会見を可能にしている現在の『記者クラブ制度』について総理はどう考えているか。それから、よりオープンな会見を開く考えはあるか」と質問した。
安倍首相は「記者クラブのあり方については、まさに、時代の流れにおいて、今までのメディアが全てカバーしているかと言えば、そうではない時代になり始めましたよね。その中でどう考えるかということについては、まさに、皆様方に議論をしていただきたい。
ただ、自民党政権の中でこうした形で、(記者クラブ問題で)ご質問を頂いたのは初めてのことだと思う。こうした形で、できる限り皆さんの質問の機会も確保していきたい。皆さんの質問を全て受けていると何時間にもなってしまうので、ある程度は限らせていただきたいが、なるべくそうした機会は増やしていきたい」と回答した。
このやりとりを報道したキシャクラブメディアはない。まさに、記者が記者を差別するキシャクラブ制度をどうするかは報道界の問題だ。
報道界の労使は民衆と共に、キシャクラブ問題をどう解決するか真剣に取り組むべきだ。
評論家の佐高信氏は12日のTBS「サンデー・モーニング」で「休業補償を渋っているのは財務省」「安倍首相は、森友学園問題で財務省に大きな借りをつくっているので、財務省の顔色をうかがわないといけない」と指摘。
「安倍さんが首相になり、こんな時期に安倍さんがリーダーであることが日本の非常事態だ」とコメント。
休業補償については「トランプに押し付けられたからの武器の爆買いをやめれば、財源はある」と述べた。
全ての報道関係者は、佐高氏の視点に立って、人民の生命を守るための政治体制をつくるための提言をすべきだ。安倍クローニズム(縁故主義)政権を1秒でも早く倒し、人民統治の政治体制をつくろう。