=たんぽぽ舎です。【TMM:No3905】「メディア改革」連載第29回=
 ◆ コロナ「緊急事態宣言」は初ではない。
   「9年前に発出されたままの原子力緊急事態宣言に次いで2回目」と報道すべき

浅野健一(元同志社大学大学院教授、アカデミックジャーナリスト)


 前回の記事の末尾で、筆者の下咽頭がんが再発し、3月31日から3週間入院するため、連載を休止すると書いたが、4月2日の喉頭・咽頭摘出手術(約7時間)が成功し、術後も順調なため、連載第29回の記事を送る
 コロナウイルス感染で医療が危機にある時、私が国立がん研究センター東病院で治療を受け、こうして病床から再び発信できることを喜んでいる。

 ◆ 無能ネオファシストに私権制限権限を与える惨禍
 がん研東病院に入院してから、テレビを見る時間が多いが、4月8日朝から夜中まで「新型インフルエンザ特別措置法(2013年施行、今年3月16日改正)に基づく緊急事態宣言」のニュースばかりだった。


 宣言の対象は、東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県で、期間は1カ月
 大本営発表報道の復活のような各局の報道では、「初の緊急事態宣言」「これまで経験したことのない緊急事態宣言」などと伝えている。
 しかし、東京電力福島第一原発事件で、日本政府(菅直人首相)は2011年3月11日午後7時18分、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力非常事態宣言を発出し、それは現在まで続いている。解除される見通しもない異常事態だ
https://www.kantei.go.jp/saigai/pdf/kinkyujitaisengen.pdf

 原子力災害特措法は1999年9月の東海村JCO臨界事故を契機に制定された。
 新型インフル特措法・緊急事態宣言は初めてだが、「緊急事態宣言は初めて」という報道は誤報ではないか。「9年前に発出されたままの原子力緊急事態宣言に次いで2回目」と報道すべきだ。
 今回の緊急事態宣言を初めてということで、原子力緊急事態宣言が今も解除できていない重い現実を隠蔽しているのだ。今、この1カ月、核とウイルスの二つの緊急事態宣言が出ていると伝えるべきだ。

 安倍首相は9日午前の諮問委員会で承認を得たとして、国会の衆参・議院運営委員会で、特措法に基づく緊急事態宣言に関する質疑を行った。夕方の閣議で宣言発出を決定した。対象の7都府県には私の住む千葉県も入っている。
 「専門家の諮問会議を開いて政策を決める」というやり方は加計学園獣医学部の時もそうだった。「手続きを踏んでいる」という偽装だ。
 キシャクラブメディアは、宣言が出ても、罰則はないし、要請しかできないから何も変わらないと言いながら、「世間」は出すべきだと強調している。理性を失っているとしか思えない。

 ◆ 内閣記者会と官邸がクラブメンバー以外は10人に限定

 安倍首相は午後7時から官邸で緊急事態宣言に関する記者会見をおこなった。
 首相会見は、形式的には内閣記者会の主催になっている。コロナウイルス感染での会見は4回目だ。
 これまでは土曜日午後6時だったが、この会見は7時開始。NHKのニュース7に合わせたのだろう。
 官邸報道室と内閣記者会と協議して、いつもの会見場とは違う部屋を使った。会見参加者同士の距離をとるためだという。内閣記者会メンバー以外の外国メディア、雑誌協会、フリーの参加希望者は、アミダクジの抽選によって計10人に限定された

 インディペンデント・ウェブ・ジャーナル(IWJ)の岩上安身代表によると、内閣記者会と官邸報道室がアミダクジを代行しておこなったという
 岩上氏は7日昼過ぎに、当選と分かった。「正直、喜べない。当選もあれば落選もある、というこのアミダでの抽選というやり方自体、おかしい」。岩上氏によると、新しい会場は前のホールよりずっと狭かったという。
https://twitter.com/iwakamiyasumi/status/1247414331425218560

 午後7時からの会見はNHKで見た。テレビ東京は独自路線かと思ったが、民報ネット5局が一斉に首相会見を生中継した。官邸に統制された日本の「言論の自由」も緊急事態だ。
 安倍氏は今回もプロンプターを使い、「国民を代表して」「国民を守る」などを連発して、日本のやり方で進めると強調した。
 安倍氏は最近、コロナウイルス対策を「人類の闘い」と位置付け、見えない敵に打ち勝った平和の祭典として五輪を開催すると言っている。
 過去の侵略戦争を「聖戦」と捉え、基本的人権、個人の尊厳などの民主主義的な概念を「西洋キリスト教文明の産物」と見なすこの男に「人類」を語る資格はない。

 昨年11月に発覚した「桜を見る会」疑獄などで追及を受け、顔がくしゃくしゃになっていた安倍首相に艶が戻った。日本と世界での見えない敵との闘いに酔っている。
 安倍首相は自民党改憲草案とは別に、自身の改憲案を示しており、その柱が「9条に自衛隊を明記」と「緊急事態条項」の導入だ。まさに火事場泥棒だ。彼の頭の中では、今回の宣言は、改憲後の緊急事態宣言のリハーサルなのだろう。

 3月18日に赤木俊夫さんの妻昌子さん(仮名)の遺書公開と国賠提訴で再燃した財務省公文書改竄、東京高検検事長の定年延長など様々な疑獄事件に蓋をすることができるのだ。行政を私物化し、違法な政策を強行しても、「起訴されなければ何の問題もない」と言い張れるので元気が戻った。ウイルスまで私物化するとんでもない政治屋だ。

 会見には諮問委員会の尾身茂副座長が同席した。安倍氏は冒頭、医療従事者の奮闘に「国民を代用して敬意を表する」と述べ、「人と人との接触を7割、8割削減」できれば、2週間後にピークアウトできると語った。

 首相の演説の後、長谷川栄一内閣広報官が前回と同様、「質問希望者は挙手し、声はあげないようにしてほしい」と注文を付けた。これも、記者会と談合があったのだろう。
 質疑応答では、幹事社の共同通信東京新聞の記者が最初に質問。
 その後、長谷川氏の指名で、NHK、時事通信、テレビ朝日、日経、フリーの江川紹子氏、日本テレビ、西日本新聞の記者が質問。

 長谷川氏は「予定の時間がきている」として、会見を終了しようとしたが、多数の記者が手を挙げたために続行。ニコニコ動画の記者とイタリア人記者が質問。まだ記者たちが手を挙げていたが、次の予定があるとして打ち切りを表明。長谷川氏は質問書を送ってくれれば回答すると言って散会した。

 安倍氏はNHKの「ニュース9」に生出演し、民放をはしご出演した。長谷川氏の言う「次の予定」はテレビ出演だった。
 これは海外ではあり得ない。首相、大統領の記者会見は民主主義国にとって、最も重要な場だからだ。
 記者会見を打ち切って、首相の選んだメディアの個別取材を受けるのはあり得ないことだ
 海外なら、記者側が次の記者会見をボイコットするだろう。
 日本最大のキシャクラブである内閣記者会の解体なしに、日本のジャーアリズムは創成できない

 岩上IWJ代表は3月27日夜、<「日本の記者クラブ問題を話したい!」岩上安身による咽頭がんに立ち向かうジャーナリスト浅野健一氏インタビュー!>という題で、フルオープンで中継してくれた。4時間を超える対論だった。
 IWJのHPでダイジェスト版を無料で見ることができる。
 ぜひIWJの会員になって、全編を見てほしい。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/470970?fbclid=IwAR2L_XliKl4s_2uLwj0VurXO7yr-TzDB_KDgp-MtXJioMHueVyFPK-py_Yo


 ※ ≪事故情報 編集部≫より
 浅野健一氏の4月2日の手術は成功し、順調とので連絡でした。よかったです。
 その上、病床からメールマガジンの連載原稿をいただき、感謝致します。

 

 

パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2

 今、東京の教育と民主主義が危ない!!
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