=たんぽぽ舎です。【TMM:No3896】「メディア改革」連載第28回=
◆ 安倍首相のコロナ会見に大疑問-官邸の手のヒラの中だ
森友事件 故赤木さんの妻の決起-首相・財務相は調査をされる側だ
浅野健一(元同志社大学大学院教授、アカデミックジャーナリスト)
自民党にはたくさんの衆議院議員がいるのに、識見、人格ともに秀でているとは思えない安倍晋三氏が2度目の首相になり、8年目を迎えているのは信じがたいことだ。党をまとめる二階俊博幹事長は「安倍氏の総裁4選を求める」と表明し、岩田明子NHK解説委員も「4選を望む声が強まっている」と公共の電波でヨイショしている。
自民党総裁の任期はもともと2期6年だったのを、2017年春に3期と決めている。自分が総裁を務めている時に、任期を延長する党規約改定を行うことは民主的な手続きに反する。それを来年9月にまた強行しようと言うのだから、ロシアの独裁者プーチン氏もびっくりだろう。
安倍首相は1月に始まった通常国会で、「桜を見る会」事件で、公選法・政治資金規正法違反が追及された。「桜を見る会」の前夜祭の会場となったホテルが「明細書はいつでも出せる」「宴会で個人との契約はあり得ない」などと野党調査チーム、メディアに証言したことから、首相の虚偽答弁が明らかになっていた。
安倍晋三首相の妻、昭恵氏が名誉校長を務めていた森友学園・安倍晋三記念小学校をめぐる公文書の改竄を命じられ、2018年3月7日に神戸市内で自死した財務省近畿財務局上席国有財産管理官の赤木さん(享年54歳)の妻が3月18日、「週刊文春」三月二六日号と大阪日日新聞で遺書を公表。元NHK記者の相澤冬樹氏の世紀の大スクープだった。
また、代理人の松丸正、生越照幸両弁護士が同日、日本国と佐川宣寿・元財務省理財局長を相手取り、約1億1千万円余の損害賠償を求め大阪地裁に提訴した。
赤木さんの妻は弁護士を通じ、「なぜ夫が死ななければならなかったのか、裁判で追及して真相を明らかにしたい。賠償金は何らかの形で世の中のために役立てたい」とコメントした。1人の女性の決起が政治を変えると思う。
首相は新型コロナウイルスの感染拡大と東京五輪の延期を利用して、一連の行政の私物化問題を消し去り、来年秋まで権力を維持し、国家統制を強め、壊憲を企んでいる。
報道機関は今こそ、安倍政権の暴政を徹底批判し、政治変革を求めなければならない。
しかし、安倍政権を監視すべき内閣記者会(官邸記者クラブ)が大政翼賛体制時代と同じように大本営発表報道を展開している。日本には世界標準のジャーナリズムが存在しておらず、マスメディアは安倍政権の共犯者になっていると私は思う。
首相の会見が国際標準の会見からかけ離れていることを指摘してきたが、安倍首相はコロナ問題で3回目の記者会見を3月28日午後6時から行った。
今度も土曜夜だった。今度は、午後7時からコロナ関係の会議日程を入れて会見に臨んだ。終わりの時間を区切って、約20分の首相演説の後、34分間の質疑応答で終了した。
前回より1分長かった。
質疑の最後の2人は、フリーの江川紹子氏とビデオプレスの神保哲夫氏だった。前回の岩上氏に続いてフリー記者計3人がそれぞれ7年間で初めて指名された。
2人は、フリーが指名されたのは「記者会見の正常化に向けた一歩」と自画自賛しているが、喜んでいいのだろうか。
詳しくは『紙の爆弾』5月号の拙稿を読んでほしいが、日本の記者クラブ(海外では、1930年代後半に設置された日本の記者クラブはkisha kurabuと訳される)における政治家らの会見は、国際標準の「記者会見」にほど遠い。
◆ 日本は記者クラブ制度を廃止せよ
国連人権委員会やEUなどが20年前から要請している
首相会見には、内閣記者会のメンバーとクラブと官邸が認めた人以外は参加もできない。
江川氏が会見に参加していることで、フリー記者にも完全開放されていると勘違いしている向きもあるが、ネットメディアやフリーが官邸の会見に参加できるようになったのは、鳩山由紀夫政権の時だった。
官邸のHPに明記されているが、新聞協会、雑誌協会、ネット報道協会の三団体の会員社に所属する記者、外務省の外国記者登録者、三団体に署名記事などを提供し、十分な活動実績のある者で、事前登録した記者だけが会見に参加できる。
内閣記者会が会見参加者を選別している。記者会には事務要員がおらず、官邸に入るためにセキュリティの問題もあるので、官邸報道室が受付を代行している。
首相官邸報道室が江川氏の会見参加申請を受け付け、内閣記者会が江川氏の会見参加を認めたことで参加しているのだ。大手メディア系フリージャーナリストなのだ。
国連人権委員会、欧州連合(EU)などは約20年前から日本政府に対し、キシャクラブ制度の廃止を要請している。
ところが、日本のマスコミ関係の労働団体や「左翼リベラル」勢力は、「キシャクラブは海外にもある」というデマをばらまき、「記者クラブの開放、改革」を提言している。彼らはキシャクラブの解体論を批判し、キシャクラブ制度を擁護している。
安倍自公政権は、「戦前を取り戻す」安倍首相の下で大政翼賛会を復活させ、治安維持法下で生まれたキシャクラブを動員して大本営発表体制を復活しようとしている。企業メディア、キシャクラブメディアは人民の敵になっていることを見抜かなければならない。
【お知らせ】
私は5年半前に治療を終えた下咽頭がんが再発し、今日(31日)に入院し、4月2日に喉頭・咽頭摘出手術を受けます。3週間の入院です。
その間、連載を休止します。病気を治し、再びジャーナリスト活動を再開し、たんぽぽ舎のアドバイザーとしても活動します。
I shall return!
今、東京の教育と民主主義が危ない!!
東京都の元「藤田先生を応援する会」有志による、教育と民主主義を守るブログです。