検査の実施状況 地域によって大きな開き 新型コロナウイルス

 

新型コロナウイルスの検査について、NHKは都道府県ごとの実施状況を調べました。感染者が相次いだ神奈川県や東京、和歌山県では、先月26日までの10日間に600件以上行われていた一方で、感染者がいなかった地域では数件にとどまるなど地域によって大きな開きがあったことが分かりました。専門家は「感染者が多い地域の検査を別の都道府県が代わりで行うなど、全国で協力体制を整えていくべきだ」と指摘しています。

NHKは全国の放送局を通じて、検査対象が拡大した先月17日から26日までの10日間に実施された新型コロナウイルスの検査件数を調べました。

その結果、全国の都道府県で10日間に国の実施分を除いて、少なくともおよそ4500件の検査が行われ、1日当たりの平均はおよそ450件となりました。

地域別に見ると、神奈川県で少なくとも811件、次いで、東京都が704件、和歌山県が609件、千葉県でおよそ300件、愛知県で182件などとなっていて、感染者が相次いで確認された地域が多くなっています。

国内で、感染した人が最も多く確認されている北海道は、期間中の詳しい集計ができていないということです。

一方、岩手県では4件、高知県で7件、青森県で12件、群馬県で13件、徳島県で14件などと感染者が確認されていなかった地域では検査件数が少なくなっています。

また、都道府県の中には、症状などから保健所が検査を見送ったケースがあると回答したところも複数ありました。

厚生労働省によりますと新型コロナウイルスの検査は、現在、各地の衛生研究所や民間の検査機関、それに大学などで1日合わせて4030件ほどが可能になっています。

感染症対策に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「検査の件数は感染者数や保健所のマンパワーなどによってどうしても地域で偏りが出てくる。和歌山の検査を大阪が協力したように、検査が比較的少ない地域が代わりに行うなど日本全体で協力しあっていく必要がある。そのためには国が率先して協力体制を整えてほしい」と話していました。

現場で混乱も「国の方針一貫せず」


都道府県の中には、ウイルス検査をめぐる国の方針が一貫しておらず、現場でどう対応していいか混乱しているなどと話すところもあります。

このうち東京都は、検査対象についてどこまでを含めればよいのか国の対応が一貫しておらず、混乱を招いていると話しています。

また、検査体制を整えようと民間の検査会社を探したものの、国としか契約しないと門前払いされたこともあったといます。

さらに、人手不足を訴える自治体もあります。保健所の職員は、今の時点でも相談を受け付けたり、ウイルス検査の検体を医療機関に受け取りに行くなどしてフル稼働で対応しているため、さらに検査が増えれば体制が成り立たないという声があがっています。

また、相談センターには、いまだに症状がない人から検査を受けたいと求められることがあり、相談や受診の目安が十分周知できていないと指摘する意見も出ています。

「簡単には検査数増やせない」

新型コロナウイルスの検査を受けたくても受けられないといったケースが相次ぎ、国は検査体制の拡充を図っていますが、検査を担っている研究所からは、質を保つのが難しいため、簡単には検査数を増やせないという声が出ています。

全国に83か所ある地方衛生研究所の1つ、川崎市健康安全研究所には新型コロナウイルスの疑いがある検体が連日、およそ20件届けられ、5人の専門の職員が交代で週末も検査にあたっています。

研究所では、検体が届けられると、職員が2人1組で、検体の番号などを記録したあと、二重扉で隔離し、室内の気圧を低く保って、ウイルスが漏れ出さないようにした特別な検査室に持ち込みます。

検体に試薬を入れて、ウイルスを抽出する作業は、新型コロナウイルス専用にしている検査室1室だけでしかできません。続いて、遺伝子の断片を大量に増やして検出する「リアルタイムPCR」と呼ばれる装置に入れて分析しますが、全体の検査の過程でおよそ5時間かかるということです。

研究所では最大で1日40の検体を検査できますが、となりあった穴に少しでも液が混入すると結果を誤るおそれがあるため、穴を1つずつ空けて液を入れることにしていて、実際に検査できるのは半数の20件程度だということです。

川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「限られたスタッフで、休みなく検査をしている状況だ。検査の正確性や安全性が損なわれるリスクがあり、簡単に数を増やすことは難しい」と話しています。

電話相談の専用窓口 少なくとも8万3000件余り

また感染が疑われる人からの電話相談に応じる専用窓口「帰国者・接触者相談センター」に寄せられた相談は、先月26日までの10日間に少なくとも全国で8万3000件余りに上り、このうち「帰国者・接触者外来」を受診することになったのは少なくとも1358件となっています。

ただし、16の都道府県は外来の受診件数については非公表や未集計だとしていて、実際にはこれ以上の人たちが受診しているものと見られます。

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200303/k10012311861000.html?utm_int=all_side_ranking-access_005

 

 

休校措置とらず「政府の説明は整合性なし」 

和歌山 九度山町

 

政府の要請を受け、全国の多くの学校で臨時休校が始まる中、和歌山県九度山町は授業を続けることを決めました。町長は「学校を臨時休校としながら学童保育を続けるという政府の説明には整合性がないと感じた」と話しています。

九度山町では政府が要請する臨時休校について対応を検討し、休校の措置はとらず授業を続けることを決めました。

町内には小学校と中学校が2校ずつあり、教育委員会によりますと、給食の準備が整うまで授業は当面午前中のみとしますが、週内には通常どおりの授業を再開させる予定だということです。また、卒業式については規模を縮小して実施することにしています。

九度山町の岡本章町長は「学校を臨時休校としながら、学童保育を続けるという政府の説明には整合性がないと感じた。町民からも続けてほしいという声がたくさん届いている。子どもたちにはふだんどおりの生活を送ってもらうことが、いちばんよいと考えた」と話しています。

中学3年生の男子生徒は「中学校生活がこれで終わるかと思っていたけど、友達にきちんとお別れのことばを伝える時間ができたのでよかった」と話していました。

“保護者の負担大きい”石川 輪島は休校見送り

石川県輪島市では保護者の負担が大きいうえ、学童保育などでの感染拡大も懸念されるとして、2日からの小中学校の休校を見送り、2日朝も子どもたちが登校しました。

このうち輪島市横地町にある河原田小学校では、2日朝もランドセルを背負った全校児童およそ40人が登校しました。

中にはマスク姿の児童もいましたが、子どもたちは、学校の玄関に立つ先生に「おはようございます」と元気よくあいさつしたあと、それぞれの教室に向かっていました。

輪島市には市立の小中学校が合わせて12校ありますが、市の教育委員会は、保護者の負担が大きい上、学童保育などでの感染拡大も懸念されるとして、2日からの休校は見送りました。

そして市の教育委員会で今後の対応をさらに検討した結果、保護者が希望する児童については学校で受け入れて自習してもらうなどの対応をとったうえで、今月9日から23日まで市内の小中学校を休校とすることを決めました。

河原田小学校の小向敦子校長は「今のところ、子どもたちはふだんと変わらず、不安を感じている様子はないと思います。児童の健康を第一に考え、対応していきます」と話していました。