東京都再任用更新不当拒絶裁判
◎ 弁 護 団 声 明

 1 本日,東京高等裁判所第5民事部は,2015年3月31日をもって退職となった東京都下の教職員3名(以下「控訴人ら3名」という)が,違法な再任用更新不当拒絶に対して国家賠償を求めた事件について,控訴を棄却する判決を言い渡した。

 2 東京都教育委員会(都教委)は,定年退職まで無事に勤め上げ,定年退職後も再任用教育職員として誠実に職務を遂行してきた控訴人ら3名に対し,再任用教育職員の任期満了まで約2か月という直前の時期になって唐突に何ら理由を示すこともせず再任用教育職員の任期の更新をしないこと(以下「再任用不合格」という)を通告してきた。
 これに対し,控訴人ら3名は,都教委による違法な再任用更新不当拒絶の再発防止のために,控訴人ら3名に対する再任用不合格がいずれも違法であるとして国家賠償請求訴訟を提起した。


 3 本件訴訟の第一審の審理において,都教委は,控訴人ら3名の再任用不合格の理由を初めて明らかにしたが,そのいずれもが曖昧かつ取るに足りないものであった。
 とりわけ,控訴人ら3名について,管理職の不合理かつ不適切な指示ないし方針に従わなかったことを挙げていたことが特徴的であったが,これは教育現場に対する過度の締め付けを行って「物言えば唇寒し」の状況を作り出し,上意下達の教育の在り方に従順な教員を厚遇しようとする都教委の不当な教育行政の現れに他ならないものであった。

 これに対し,控訴人ら3名は,教職員,生徒,保護者らの多数の陳述書や元同僚の教員による証言など,多岐にわたる証拠を提出し,客観的に見て控訴人ら3名の教育実践が優れたものであったこと,法理論的にも控訴人ら3名に対する都教委による再任用更新不当拒絶が違法であることを明らかにしてきた。

 東京地方裁判所民事第19部による第一審判決は,都教委の公正選考義務を認めつつ,控訴人ら3名の請求を全部棄却するものであったが,控訴人ら3名は,控訴審での闘いの継続を選択し,控訴審の審理においては,岡田正則早稲田大学法科大学院法務研究教授の鑑定意見書を提出するなどした結果,これまでプラックボックスとなっていた再任用選考の合格点,推薦書と面接評定票の配点割合,各評定結果に対する配点等の合否判定基準の詳細な内容を初めて明らかにすることができた。

 4 しかしながら,東京高等裁判所第5民事部は,またしても控訴人らの請求を極めて不合理な理由で退けたのである。
 裁判所が東京都下における教育現場の実態に対しておよそ無理解であることを自ら暴露したものであるといわざるを得ない。
 今回の東京高等裁判所第5民事部による判決は,管理職の意に少しでも沿わない言動をした控訴人らに対する「見せしめ」にお墨付きを与えるものであり,断じて容認することができない。

 5 弁護団は,都教委による違法な再任用更新不当拒絶を告発した教職員を守り抜く覚悟であり,定年退職後の教職員の幸福追求権,生存権,言論の自由を守るため,引き続き闘いを継続していく。

以上

 2019年8月28日
東京都再任用更新不当拒絶裁判弁護団
弁護士 吉峯真毅
 同  吉峯裕毅
 同  高橋拓也
 同 大井倫太郎
 同 大河原啓充
 同  倉都雄規