2019年03月21日木曜日河北新報の記事2つ。
■<福島県>最大クラス津波の浸水想定公表 高さ22m超、面積は震災時の1.3倍
福島県は20日、数百年から1000年に1度とされる最大クラスの「レベル2津波」が発生した場合の浸水想定をまとめた。沿岸10市町の浸水面積は1万4296ヘクタールで震災時の1.3倍。津波の高さは最大水位で22.4メートル、最大遡上(そじょう)高は23.5メートルに達する。県によると、想定公表は岩手、宮城を含む東日本大震災の被災3県で初めて。
公表したのは県内14海岸の最大津波高と23区域に分けた浸水想定図。津波高の最高は相馬海岸(相馬市)だった。他に大熊海岸(大熊町)は最大水位21.8メートル、最大遡上高23.2メートル、鹿島海岸(相馬市、南相馬市)は最大水位22.1メートル、最大遡上高22.8メートルなど。最小は磐城海岸(いわき市)で最大水位9.7メートル、最大遡上高10.5メートルとなった。
全体の浸水面積は干潮時だった震災時より広がった。いわき市小名浜は沿岸市街地の大半が被災し、浪江町は国道6号以西の市街地にも波が到達する。新地町は町域の21.0%、相馬市は14.1%が浸水する。
浸水想定は震災を教訓とした「津波防災地域づくり法」に基づいてまとめた。巨大地震で満潮時にレベル2津波が発生し、地盤沈下して防潮堤も壊れる最悪の条件下を想定。津波は三陸沖を震源とする東日本大震災のモデルと、房総沖を波源とする茨城県モデルの二つを採用した。
全国では既に35道府県が公表し、震災の被災3県は取り組みが遅れていた。
福島県内の自治体は今後、避難計画の見直しなど津波対策強化が求められる。ただ、震災後の施設再建が進んだ地域もあり「復興まちづくりに影響する」との戸惑いの声も出ている。
県河川計画課の矢内誠一郎課長は「震災から8年がたち、復興が進む自治体が津波避難を本格的に考える時期に差し掛かっている。各地の防災計画策定に役立ててほしい」と話した。
[津波の高さ]最大水位と最大遡上高の二つがある。最大水位は海岸線での津波の最大の高さ。最大遡上高は海岸到達後に陸地をはい上がった地点を含めた最大の高さ。福島県の津波想定は、いずれも東京湾平均海面を基準(標高0メートル)として算出している。
■<福島県津波浸水想定>復興まちづくりに影響も
福島県が20日、最大級の津波による浸水想定を公表したことを受け、東日本大震災で被災した沿岸自治体は避難対策の強化を図る見通しだ。東京電力福島第1原発事故で住民が避難した区域では、浸水想定域で進む復興事業もあり、丁寧な説明が必要になる。
広野町は町域の2.8%が浸水区域と想定された。町が復興拠点に位置付けるJR広野駅東側は、防災緑地(高さ10.7メートル)が整備されたものの一部が浸水する。地元行政区長の根本賢仁さん(72)は「避難の意識を常に持とうと改めて感じた」と語った。
町は2014年から津波避難訓練を続ける。今回の想定を踏まえ、町は「ハザードマップを策定するとともに津波避難場所を増やしたい」と説明した。
独自想定で既にハザードマップを策定済みの自治体もある。14年に作った南相馬市の担当者は「県の想定に照らして見直しを進めざるを得ない」と話した。
今回の想定は多くの復興まちづくりの前提と異なっている。原発事故で全町避難する双葉町は、放射線量が比較的低い北東部の津波被災地域で産業団地などの拠点整備を本格化させたばかり。前提にした浸水想定域は海岸堤防整備などで震災時より狭まったが、堤防倒壊など最悪の条件を加える今回は浸水範囲が逆に広がった。
町は今回の想定を「人命に関わるリスク情報」と強調。「見直しを進める地域防災計画での住民の避難計画に反映させ、減災につなげる」と説明した。
浪江町の想定域も図のように震災時より広がり、新たに整備された災害公営住宅なども浸水範囲に含まれた。総務課は「地域防災計画やハザードマップ、避難所、避難経路などを見直し、住民への周知を徹底する。防災行政無線の設備強化などの対策にも取り組む」とコメントを出した。