
◆ 恐怖の再稼働 (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
昨年十月、インドネシアで墜落したばかりだった。米ボーイング社の最新鋭旅客機「737MAX」、この十日にもエチオピアで墜落した。
安全性が問題視され、世界各地で即座に運航停止された。
が、米連邦航空局(FAA)の停止の決断は遅かった。「ボ社とトランプ大統領の関係は非常に深い」からだった(本紙十七日付)。
これを読んで「トランプよ、おまえもか」。ハタと膝をたたいたのは、大事故があってなお、平然と原発を推進するわが国の首相と原発メーカーとの「関係の深さ」に思いがおよんだからだ。
首相の率先外遊、世界への原発売り込みは結局、全敗に終わった。
が、まだオリンピック開会式の晴れ舞台がある。
いまなお続く原発被曝(ばく)地や避難民の苦境には目をつぶり事故にもめげず原発再稼働をすすめ、ひたすら「復興」と「帰還」を唱えるのは「アンダーコントロール」ニッポンを演出したいからなのか。
「原子力村」として脚光を浴びた茨城県東海村にある首都圏唯一の東海第二原発は四十年たった老朽原発。いま無謀にも再稼働を準備している。
東京まで百十キロ。水戸市など三十キロ圏内には百万人が生活している。バラ色の夢を描いた東海第二原発でオリンピックに花を添えるのか。
二十一日午後零時半、東京・代々木公園で「さようなら原発全国集会」がある。
『東京新聞』(2019年3月19日【本音のコラム】)