=立川テント村通信=
 ★ 朝雲レポート(11/29~1/24)


 『朝雲』レポートで気をつける必要があるのは、「書いてあること」と同時に「書いてないこと」である。最近全く欠落しているのは「沖縄」のこと、とりわけ辺野古基地建設問題だ。沖縄出身の自衛官は多い。彼らの故郷沖縄で何が起こっているか。知られたくないことばかりなのだ。

 ★沖縄出張のときはまず摩文仁の丘へ行く『寸言』子。
 書き手はおそらくそれなりの年齢である。「黎明の塔は牛島司令官以下が自刃した壕の下にある」「平和の礎に刻まれた名は24万人余。うち15万人弱が沖縄県民である。しばし黙とうして水を供える」「慰霊の日には陸上自衛隊有志が静かに参拝している」と書く。現在、県民が心を砕いている新基地建設問題なんてないみたい(11/29)。


 ★九州と沖縄の間にある奄美大島には、今年駐屯地・分屯地が創設される。
 前段で派遣された地元出身の内間准尉が、「奄美大島のお正月料理“三献”」の紹介記事を書いている。「隊員のみなさん、奄美は住みやすい島なので安心してきてください。」
 奄美、沖縄、宮古、石垣…。中国を意識した南西諸島の自衛隊基地建設が続く(1/3)。

 ★韓国裁判所の判決を受けた徴用工問題とレーダー照射問題が号ごとに大きな扱いになっていく。

 最初の記事は、『春夏秋冬』。学者などが書いているコラムである。
 篠田東京外語大教授が書いている。日韓請求権協定があるのだから、それでスルーできる筈だ。大体日本の憲法学者は憲法重視なのがいけない。国際法重視か憲法重視か、その判断の調整が大事だ(12/6)。
 だが論調はレーダー照射問題で一気に居丈高になる。1月3日号二面に「韓国艦が海自P1に火気管制レーダーを照射」の第一報。
 10日号では一面記事で、悪天候の中で北朝鮮遭難船を捜索中、P1が威嚇的な低空飛行を行なったという韓国側の主張を、根拠を明らかにせずに否定している。
 更に論説欄『焦点』で、「韓国の最近の対応は余りにも利己的だ。昨年、自衛艦旗の掲揚が認められず、自衛隊が参加を見送った済州島での国際観艦式で、韓国艦艇は“抗日”を象徴する旗を掲げた。(中略)文政権がこれまで以上に“反日”ムードを高めるならば、関係改善は難しいかもしれない。」と書いている。
 『焦点』が指摘するように今年は3・1朝鮮独立運動百年の年なのである。植民地支配の歴史を反省するなら、支配の象徴であった日の丸を今も平気で掲げる日本は無神経と言えるだろう。

 17日号は、「レーダー照射、日韓協議は平行線」の記事。『寸言』は「双方の政治や社会的な対立などは何の関係もない。純粋に軍事組織としての規律と統制の問題である」と主張。
 24日号『寸言』はエスカレートし、「在韓邦人は旅行者を含め約6万人」情勢悪化時には速やかに渡航制限や退避勧告に踏み切ることが必要だ」と危機煽っている。
 だが1月21日、防衛省は韓国との協議を一方的に打ち切った。
 (その後、自衛隊機の低空威嚇飛行を問題にした韓国に、高度は十分だったと弁明していた日本側、韓国は低空飛行する自衛隊機の映像を発表して反論。日本側の弁明はなく、無視かな?)

 ★高齢化にともなう隊員不足は深刻だ。
 定年の1年延長が日程にのぼり、12月13日号の広報特集は、「全イベントに募集要項を」と取り組んだ八尾駐屯地が、記念行事に対象者情報を135人獲得と大きく報じている。鹿児島では島部から32歳入隊者を獲得。出身の島からの入隊は21年ぷりだと、着隊前に募集案内所の担当が村役場を表敬訪問。

 ★防衛計画の大綱、防衛費の伸びなど各号で取り上げられている。
 宇宙、サイバー兵器などの話題は気宇壮大。
 またトランプ大統領の我が道をゆく独善も困つたものだ風にとりあげられ、米中の間を取り持つ日本の役割が協調されている。実際はトランプのご機嫌をとる武器爆買い方針を貫いているのだ。
 「防衛費増加、7年連続、過去最大5兆2574億円」(1/24)には、宇宙、サイバー、電磁波などの新分野が並び、いずも型護衛艦の短距離離陸・垂直着陸機運用を可能にする改修、イージスアショアの取得などが特記されている。
 「トイレットペーパーの十分な量の確保や洗濯機の刷新」などの配慮は、「士気高く任務を全うする」環境整備なのである。

『立川テント村通信』(2019年2月1日)