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 ◆<KYB改ざん>免震ダンパー、7割超で基準未満か

 油圧機器メーカーKYBと子会社による免震・制振装置の検査データ改ざん問題で、両社が出荷した免震オイルダンパーのうち、7割以上が国土交通省や顧客が指定した基準を満たしていない疑いがあることが、KYBへの取材で明らかになった。中には、性能検査で基準値と40%以上もずれがある不適合品もあった。

 KYBによると、不正は2000年から続いていた疑いがあり、免震ダンパーは計1万369本が出荷された。このうち、不適合品やその疑いのある7550本が903物件に納品されていた。制振ダンパーは2万779本が出荷され、問題のある3378本が83物件に使われていた。986物件のうち、検査データが残っていない576物件について、同社が調査している。

 免震ダンパーは、地震の力を減衰させて建物に伝わる揺れを弱める機能がある。基準値よりもプラス側にずれるとダンパーの動きは硬くなり、建物に揺れが伝わりやすくなる。逆に、マイナス側にずれると、ダンパーは柔らかくなり揺れ幅が大きくなる。国交省基準では、基準値からプラス・マイナス15%のずれを許容範囲と認めており、顧客との契約では同10%が一般的という。

 KYBが、検査データが残っている製品を抽出して調べたところ、免震用は、国交省基準よりプラス16.0~同42.3%の製品が出荷されていた。国交省は制振用の基準を定めていないが、顧客が求めた基準と比べマイナス17.9%とプラス20.5%の製品が確認された。国交省は「震度7程度の地震でも耐えられる」としているが、同社に製品の交換を指示した。

 不適合の免震・制振ダンパーは00~07年はKYBが、07年以降は子会社のカヤバシステムマシナリー(KSM)が製造した。9月19日にKYBから不正の申告を受けた国交省は今月10日、津市にあるKSMの工場に立ち入り検査を行い、品質管理態勢などを確認したという。

 ◇KYB、施設名明らかにせず

 問題のある免震・制振ダンパーが使われた疑いのある施設名や所在地について、KYBは情報を明らかにしていない。混乱が広がるなか、多くの自治体は国交省からの情報提供などを基に同型のダンパーが使われた施設名を自主的に公表した。その中には原子力発電所の関連施設や行政庁舎、東京オリンピックの会場施設などが含まれている。同社は17日、所有者の了解が得られた物件名を19日午後に公表すると発表した。


 ◆ KYB免震装置、全国の自治体で使用=データ改ざんに「強い憤り」

 産業部品メーカー「KYB」が建物用免震・制振装置の検査データを改ざんしていた問題で、全国の自治体は17日、改ざんの疑いのある装置が使用されていた施設を相次いで公表した。東京、大阪、愛知3都府県のほか北海道、宮城、愛媛の各道県などが公表。自治体からは「強い憤りを感じている」と批判の声も上がっている。

免震装置でデータ改ざん=マンションなど986件使用-KYB、スカイツリーも調査

 東京都では、都庁の第一、第二本庁舎、東京五輪・パラリンピックの水泳会場のアクアティクスセンターなどで不適合の可能性がある同社の製品の使用が確認された。小池百合子知事は都庁で記者団に「どう対応するかは報告を受けてこれから考える。安全の問題だからきっちり行われていないと信頼性に関わる」と述べた。

 愛知県では、県庁本庁舎と県警本部本庁舎、あいち小児保健医療総合センター救急棟の3カ所で、KYBの免震装置「オイルダンパー」の使用が判明。大阪府でも、松井一郎知事が府庁本館に同型の免震装置が取り付けられていることを明らかにした。松井氏は記者団に「震度6強以上の揺れで建物が倒壊する状況ではない。ただ、(免震装置を)納めた会社にきちんと補償してもらう」との考えを示した。

 このほか横浜市は、市衛生研究所に設置されていることが分かったとして、早期交換に向けてKYBと協議を始めた。さらに北海道、宮城、福島、埼玉、長野、三重、鳥取、愛媛の各道県と仙台、長野両市なども同社の製品を使っている施設があると公表した。

 愛媛県の中村時広知事は「強い憤りを感じている。誠意をもった説明と製品の交換と補償を求めたい」とのコメントを発表した。また、鳥取県の平井伸治知事は同社などに抗議文を送った。


大阪府庁本館地下の免震装置のオイルダンパー(府提供)

2018/10/17 時事通信