第4条(適切な措置) 

34.締約国は、第4条に基づき、条約で認められた権利の実施のためにあらゆる適切な立法上、行政上その他の措置をとるものとされる。このことはすべての子どもに差別なく当てはまるのであり、その際、もっとも不利な立場に置かれた集団――路上の状況にある子どもがこれに含まれるのは明らかである――に特別の注意を払うことが求められる [31]。最低限の中核的義務として、すべての国は、何をおいても、1つひとつの社会的、経済的および文化的権利が最低限必要な水準で満たされることを確保しなければならない [32]。国は、このことが路上の状況にある子どもにも適用されることを確保するべきである。利用可能な資源が存在しないことは、それ自体では、国がこの中核的義務を遵守しないことについての有効な主張にはならない。委員会がすでに述べたように、子どもの権利によって課される即時的かつ最低限の中核的義務は、たとえ経済危機の時期であっても、いかなる後退的措置によっても損なわれてはならない [33]。国は、経済危機の時期の後退的措置によって路上の状況にある子どもが影響を受けないことを確保するべきである。

 

[31] 一般的意見5号、パラ8参照。 

[32] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見3号(締約国の義務の性質、1990年)、パラ10。 

[33] 一般的意見19号(子どもの権利実現のための公共予算編成、2016年)、パラ31参照。

 

第5条(発達しつつある能力に一致した指示および指導) 

 

35.国は、防止を強化するため、親、拡大家族、法定保護者およびコミュニティの構成員の、子どもにその年齢および成熟度にしたがって適切な指示および指導を行なう能力(その際、これらの者が子どもの意見を考慮に入れることを援助することも求められる)、子どもが発達できる安全かつ支援的な環境を提供する能力、および、子どもが主体的な権利の保有者であり、適切な指導および指示を与えられれば、発達するにしたがってこれらの権利をますます行使できる存在であると認識する能力の構築を図るべきである。委員会は、子どもの発達しつつある能力の原則について詳しく述べている――子どもの知識、経験および理解力が高まるにつれて、親または法定保護者は、指示および指導を注意喚起および助言に、そしてやがては対等な立場の意見交換に、変えていかなければならない [34]。路上の状況にある子どもに対しては、その人生経験を尊重する、とくに配慮した指示および指導が必要である。路上の状況にある子どもの大多数は家族との接触を維持しており、このような家族とのつながりを強化する効果的方法に関する科学的知見も増えつつある。路上の状況にある子どもが親、拡大家族または法定後見人との肯定的つながりをほとんどまたはまったく持っていないときは、第5条で言及されているようにコミュニティの構成員の役割がいっそうの重要性を帯びるのであり、これには、市民社会組織と関係する信頼できる大人からの支援も含まれると理解される。

 

[34] 一般的意見12号(意見を聴かれる子どもの権利、2009年)、パラ84および一般的意見14号、パラ44参照。

 

B.市民的権利および自由

 

第15条(結社および平和的集会の自由に対する権利) 

概観 

 

6.路上の状況にある子どもたちが生きている現実は、子ども時代に関する伝統的な定義または概念化には適合しない。これらの子どもたちは、他の子どもたちに比べ、公的空間と独特の関係を結んでいる。したがって、公的空間との関連で国が第15条に課す制限は、路上の状況にある子どもたちに不均衡な影響を及ぼす可能性がある。国は、これらの子どもが結社および平和的集会のために政治的および公的空間にアクセスすることが差別的なやり方で否定されないことを確保するべきである。 

 

市民的および政治的空間 

7.結社および平和的集会は、路上の状況にある子どもたちが、たとえば働く子どもの組合および子ども主導の団体を通じて権利を主張していくために必要不可欠である。しかし委員会は、総括所見のなかで、子どもたちが声をあげるための政治的空間が与えられていないことに関する懸念を恒常的に表明してきた。このような状況は、法律にしたがって団体登録を行なう際に必要となる場合がある信頼できる大人とのつながりを持たないことが多い路上の状況にある子どもたちにとって、とりわけ押しつけられやすい。路上の状況にある子どもたちは、結社および平和的集会のための取り組みを発展させていくための書類の記入および情報へのアクセスに関して支援を得られない場合がある。抗議または集会の参加人数を増やすため、路上の状況にある子どもたちに金が支払われることもありうる。これらの子どもは搾取の被害を受けやすい可能性があり、かつこのようなイベントに参加することの意味合いを理解していないこともあることから、保護と参加の権利との間でバランスをとる必要性に関する複雑な問題が生ずる。しかし、委員会が総括所見で表明してきたように、このことが、結社および平和的集会に対するこれらの子どもの権利を制限する言い訳として用いられるべきではない。第15条は、国に対し、路上の状況にある子どもたちが自己の参加権を行使し、かつ大人による吸収および操作に対抗できるようエンパワーすることを要求しているのである。 

 

公的空間 

38.市民的および政治的権利の文脈における結社および平和的集会に加えて、委員会は、路上の状況にある子どもたちが、生存および発達に関わる自分たちの権利(第6条)を満たすために、休息、遊びおよび余暇(第31条)[35] のために、ネットワークづくりおよび社会生活の組織化のために、かつこれらの子どもの生活全般の主要な特徴のひとつとして行なう、公の秩序を脅かすことなく公的空間で集まるための選択を尊重することの重要性を強調する。路上の状況にある子どもたちにとって、このような態様の集まりは生活の一部である。その生活は、食事、睡眠またはレクリエーションのような個別の活動に常に分解できるわけではない。路上の状況にない子どもたちにとっては、このような他者との協力的共存は主として家庭または学校のような場面で生ずるものである。路上の状況にある子どもたちにとっては、それは公的空間で生ずる。このような子どもたちは、結社の権利(ここでは、条約で保護されている他の諸権利とあいまって、「公的空間で他者と時間を過ごすこと」と解釈される)を行使できる安全な空間を持てなければならない。委員会は、第31条との関連で、公的空間における子どもたちへの寛容度が低下しつつあることを検討したことがある [36]。委員会は、この一般的意見で、寛容度の低下に関わるこれらの懸念を、第31条で対象とされているもの以外の目的で子どもたちが公的空間を使用することとの関連でも、あらためて表明するものである。

 

[35] 一般的意見17号(休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利、2013年)、パラ21参照。 

[36] 前掲、パラ37参照。

 

第15条に対する制限 

 

39.第15条(2)にしたがい、公の秩序との関連でとられる取締まりその他の措置が許容されるのは、当該措置が法律に基づいており、集団的評価ではなく個別の評価に基づいて実施され、比例性の原則を遵守し、かつもっとも侵害度の小さい選択肢である場合に限られる [37]。すなわち、路上の状況にある子どもに対するいやがらせ、暴力、一斉検挙および路上浄化活動(大規模な政治的、公的またはスポーツイベントを背景として行なわれるものを含む)、または結社および平和的集会に対するこれらの子どもの権利を制限しまたは当該権利に干渉するその他の介入策は、第15条(2)違反である。合法的に設置された働く子どもの組合もしくは路上の状況にある子どもたちが主導する団体を承認しないことおよび(または)路上の状況にある子どもが合理的アクセスの手段を有しない団体認可を要件とすることは、これらの子どもに対する差別であり、かつ第15条(2)に一致しない。

 

[37] 一般的意見6号(出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い、2005年)、パラ18参照。もともとは国境を越えた保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもとの関連で展開した解釈だが、委員会は、この一般的意見において、路上の状況にあるすべての子どもについてもこの解釈を適用する。

 

実施措置 

 

40.国は、路上の状況にある子どもたちに対するいやがらせを行なうべきではなく、またこれらの子どもが公共空間において関係をとり結びかつ平和的に集会する場所から恣意的に退去させるべきではない。この権利を侵害する者に対しては制裁が科されるべきである。公の秩序に関わる状況に、路上の状況にある子どもの権利の尊重を擁護するようなやり方で対応する警察および治安部隊の能力構築のため、専門的研修が必要とされる [38]。地方政府の条例は、第15条(2)との一致を確保するために見直されるべきである。国は、子どもの権利教育およびライフスキルの育成を通じて路上の状況にある子どものエンパワーメントを図ること、関係者が、意思決定の際、結社および集会を通じて表明されるこれらの子どもの意見を受け入れる心構えを持つようにすること、ならびに、これらの子どもがコミュニティの他の子どもとともにレクリエーション、余暇、スポーツ、芸術活動および文化的活動に参加することを促進することなどの積極的な措置を支援するよう求められる。路上の状況にある子どもたちの結社および平和的集会が第15条に基づく保護を受けるために、これらの結社および集会が正式に登録されていることが法律上の要件とされるべきではない。

 

[38] 一般的意見13号、パラ44参照。

 

第7条(出生登録)および第8条(身元) 

 

41.身元を証明する手段がないことは、教育、保健サービスのその他の社会サービス、司法、相続および家族再統合に関わる路上の状況にある子どもの権利の保護に悪影響を及ぼす。国は、最低限、あらゆる年齢のあらゆる子どもが無償の、アクセスしやすい、簡便かつ迅速な出生登録を利用できることを確保するよう求められる。路上の状況にある子どもに対し、法的身分証明書を取得するための積極的支援が提供されるべきである。国および地方政府は、市民社会の関係者/住所と関連づけられた非公式な身分証明書を提供することのような革新的かつ柔軟な解決策を認めることにより、子どもが当面、基礎的サービスおよび司法制度における保護にアクセスできることを可能にするよう求められる。路上の状況にある子どもは頻繁に移動することが多く、かつ物理的な身分証明書を、紛失し、毀損しまたは盗難されることなく安全に保持し続ける手段を有しないことから、これらの子どもが帳面している課題を克服するための革新的解決策が採用されるべきである。 

 

第13条(表現の自由)および第17条(情報へのアクセス) 

 

42.路上の状況にある子どもが自己の権利に関する情報にアクセスし、このような情報を求めかつ伝える権利は、これらの権利が理解され、かつ実際に実現されるようにするためにきわめて重要である。状況に特化したアクセスしやすい子どもの権利教育は、参加を妨げる障壁を克服し、これらの子どもの意見に耳が傾けられることを可能にするうえで役に立つだろう。路上の状況にある子どもは、(a) 国の役割および説明責任ならびに人権侵害に関わる救済のための苦情申立て機構、(b)暴力からの保護、(c) セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルス(家族計画および性感染症予防を含む)、(d) 健康的なライフスタイル(食事および運動を含む)、(e) 安全なかつ敬意のある社会的および性的振舞い、(f) 事故の防止ならびに (g) アルコール、タバコ、薬物その他の有害物質の濫用の悪影響に関連する、正確な、質の高いかつ子どもにやさしい情報にアクセスできなければならない。 

 

第16条(プライバシー、名誉および信用 

 

43.路上の状況にある子どもは、公共空間で活動を行なわなければならないことを考えれば、プライバシーの制限を経験する場合がある。これらの子どもは、自らまたはその親もしくは家族が路上の状況にあることを理由とする差別により、第16条違反の被害をとりわけ受けやすい立場に置かれる。委員会は、強制立退きが条約第16条違反であることを認識するものであり、自由権規約委員会は、これまでに、これが市民的および政治的権利に関する国際規約第17条違反であることを認めてきた [39]。スティグマについて取り上げたパラ27の勧告および警察による非差別的なかつ敬意のある取扱いについて取り上げたパラ60の勧告は、名誉および信用との関連で指針となるものである。

 

[39] CCPR/CO/83/KEN, para.22 および CCPR/C/BGR/CO/3, para.24参照。

 

C.家庭環境および代替的養護

 

第20条(家庭環境を奪われた子どものための特別な保護および援助に対する権利) 

 

養護の態様 

4.路上の状況にある子どもであって主たる養育者またはこれに代わる養育者がいない子どもについては、国が事実上の養育者であり、かつ、第20条に基づき、一時的または恒久的に家庭環境を奪われた子どもに対して代替的養護を確保する義務を負う [40]。養護の態様には、路上の状況にある子どもに対する実際的および精神的支援(子どもに対し、路上のつながりを放棄しかつ(または)代替的居住施設への移動を要求しまたは強制することなく、信頼できる大人のストリートワーカーまたは仲間同士のサポートを通じて行なわれるもの)、ドロップインセンターおよびコミュニティセンター/ソーシャルセンター、デイケアセンター、グループホームにおける一時的入所養護、里親養育、家族再統合ならびに自立生活または長期的な養護の選択肢(養子縁組を含むがこれに限られない)が含まれる。たとえば収容房または閉鎖施設における自由の剥奪は、保護の一形態にはけっして位置づけられない。

 

[40] 一般的意見13号、パラ33および35参照。

 

子どもの権利アプローチの適用 

 

45.路上を離れて代替的養護に移行する過程で主体的行為者としての子どもを尊重しない介入策は、功を奏しない。子どもは、脱走した場合または措置が失敗した場合には、しばしば路上に復帰することになる。路上の状況にある子どもが馴染みのない地域に送られてほとんど知らない親族と暮らすことになった場合、措置はうまくいかない。国は、代替的選択肢の開発および提供に子どもの権利アプローチを適用することにより、子どもが自己の生存および(または)発達のために路上のつながりに依存せざるを得なくなることおよび自己の意思に反する措置を受け入れざるを得なくなることを回避することができよう。国は、立法、規則および政令を通じ、措置、養護計画の策定および見直しならびに家族の訪問に関わる決定において子どもの意見が求められかつ考慮されることを確保するべきである [41]。国は、施設措置を最後の手段に限定する、確立された国際的制限 [42] を尊重するとともに、子どもが不必要に代替的養護に措置されないことを確保し、かつ、代替的養護が行なわれる場合、子どもの権利および最善の利益に応じた適切な条件下で提供されることを確保するよう求められる [43]。国は、国および市民社会が運営するシェルターおよび施設が安全かつ良質であることを確保するべきである。路上の状況にある子ども自身と相談したうえで、家族構成員への措置がその子どもの最善の利益にかなうと判断される場合、両方の側で慎重な準備およびフォローアップが必要となる。路上と長期的措置との間にはしばしば移行段階が必要であり、この期間の長さは、子どもとともに、個別の事案ごとに決定しなければならない。代替的養護施設がないことを理由として子どもの収容目的で警察の留置房またはその他の拘禁房を使用することは、受け入れられない。

 

[41] 一般的意見12号、パラ54、同6号、パラ40および同7号、パラ36(b)参照。 

[42] 一般的意見3号、パラ35参照。 

[43] 子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)。

 

第9条(親からの分離) 

 

46.路上の状況にある子どもの多くは、路上でまたはそれ以外の場所で家族とともに暮らしており、かつ(または)家族とのつながりを維持しているのであって、このようなつながりを維持するための支援が提供されるべきである。国は、家族が路上で働いているまたは路上で暮らしていることのみを理由として、子どもをその家族から分離するべきではない。また、路上の状況にある子ども自身のもとに生まれた赤ん坊または子どもを分離するべきではない。金銭面および物質面での貧困、またはそのような貧困を直接のかつ唯一の理由として生じた状態のみを理由として、子どもを親の養育から離脱させることが正当化されることはけっしてあるべきではなく、このような貧困または状態は、家族に対して適切な支援を提供する必要性があることのサインと見なされるべきである [44]。長期的分離の防止策として、国は、親がたとえば季節的雇用のために年の一定の期間国外に出稼ぎに行く子どもを対象とする、一時的な、権利が尊重される養護の選択肢を支援することができる。

 

[44] 一般的意見14号、パラ62参照。

 

第3条(3)(ケアおよび保護のための機関、サービスおよび施設)および第25条(措置の定期的再審査) 

 

47.ケアおよび保護に関わる権利が充足されなかったことの結果として子どもが路上の状況に至ることを防止する目的で、またすでに路上の状況にある子どもたちのために、国および国以外の主体によるサービスを設置し、維持し、かつその質を監視することは重要である。国は、良質で権利を尊重するサービスを提供するとともに、市民社会組織が同様のサービスを提供することを支援するよう求められる。路上の状況にある子どものために活動している国以外の機関、サービスおよび施設は、国による支援、資源の拠出、認証、規制および監視の対象とされるべきである。このようなサービスの従事者は、パラ18にしたがった研修を受けるよう求められる。 

 

第18条(親の責任) 

 

48.子どもが路上の状況に至ることを防止し、かつすでに路上の状況にある子どもを対象とする家族再統合プログラムを強化するためには、親および法定保護者への支援が不可欠である。国は、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適当な援助を与え、かつ、子どものケアのための機関、施設およびサービスの発展を確保する義務を負う。国は、不安定な状況にある家族に圧力を加える構造的な力を解消するための措置をとるべきである。対応すべき主要な問題としては、窮乏している地域において権利を基盤とするコミュニティ開発を向上させること、包括的な経済的および社会的セーフティネットを確立すること、安全かつ負担可能な保育所その他の専門的サービスを提供すること、ならびに、家族を対象として十分な住居および所得創出へのアクセスを改善することなどがある。構造的および政策的アプローチに加え、脆弱な状況にある家族には、十分な訓練を受けた専門家のファシリテーションによる、個別事案ごとの解決策が必要である。国は、子どもが路上の状況に至ることの増大につながる条件の世代間伝達の阻止につながることが証明されている、子どもの権利アプローチに基づく家族支援プログラムに投資し、かつその規模の拡大を図るよう求められる。国は、路上の状況に至るおそれのある子どもがいる家族を――スティグマを付与しないようなやり方で――優先させつつ、すべての親および養育者を対象として、子どもの権利および肯定的な子育てに関する、非選別的な教育を提供するための措置をとるべきである。このような教育には、子どもの権利(子どもの声に耳を傾け、かつ意思決定に子どもの意見を取り入れる方法を含む)、肯定的な子育て(肯定的なしつけのためのスキル、非暴力的紛争解決および愛着育児(アタッチメント・ペアレンティング)を含む)および乳幼児期の発達を含めることが求められる。パラ35および49も参照。

 

D.十分な生活水準

 

第27条(十分な生活水準に対する権利) 

親、養育者および子どもに対する支援 

 

49.第27条(3)にしたがい、国は、子どもが路上の状況に至ることを防止し、かつすでに路上の状況にある子どもの権利を充足するため、すべての子どもがその身体的、精神的、霊的および道徳的発達のために十分な生活水準を享受することを確保するべきである。国は、この権利の実施のために、親および子どもに責任を負う他の者を援助するための適当な措置をとらなければならず、また必要な場合にはとくに栄養、衣服および住居に関して物的援助および支援プログラムを提供しなければならない。これらの規定は、国の裁量の余地を残さないものである。締約国の国内条件にしたがった、かつその財源内におけるこれらの規定の実施は第4条とあわせて解釈されるべきであり、すなわち、社会的、経済的および文化的権利に関する最低限の中核的義務を履行する国の義務をとくに顧慮しながら、締約国の利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要なときは国際協力の枠組みのなかで、進めることが求められる。物的援助という点では、路上の状況にある子どもが優先的ニーズとして挙げるのは、親および養育者に対する国の支援(とくに補助金をともなう十分な住居および所得創出に関連するもの)を通じて提供される、安全な生活場所、食料ならびに無償のかつアクセス可能な医療ケアおよび教育である。第27条(3)の解釈は、親および子どもの養育に責任を負う他の者を援助するための措置に限られるものではない。必要な場合に物的援助および支援プログラムを提供する義務は、子どもに直接提供される援助も意味するものとして解釈されるべきである。このことは、路上の状況にある子どもであって家族とのつながりが存在しない子どもまたは家族とのつながりに虐待がともなう子どもについて、とりわけ妥当する。サービスという形をとった子どもへの直接的な物的援助は、国が提供することもできるし、市民社会組織に対する国の支援を介して提供することも可能である。ひとり親家族および再構築家族にとっては、子どもの扶養料を確保するための国の措置がとりわけ重要となる(第27条(4)参照)。 

 

十分な住居 

 

50.住居に対する権利は、路上の状況にある子どもにとってとりわけ関連性が高い、第27条の重要な要素である。この権利は、経済的、社会的および文化的権利に関する委員会によって、いずれかの場所で安全に、平和にかつ尊厳をもって生活する権利として広く解釈されてきた [45]。同委員会は、「十分」性の概念を住居との関連で考察する際には、保有の法的安定性、サービス、物資、便益およびインフラストラクチャーの利用可能性、負担可能性、居住適性、アクセス可能性、立地ならびに文化的相当性に注意を払う必要があることを明らかにしている [46]。また、子どもは強制立退きの実行によって不均衡な被害を受ける集団のひとつに数えられる [47]。強制立退き(非公式または不法な住居の解体によるものを含む)は、人生を子どもにとっていっそう不安定なものとすることによって、子どもが路上で寝泊まりすることを余儀なくさせ、かつさらなる権利侵害にさらす可能性がある。路上の状況にある子どもたちとの協議で目立ったテーマのひとつは、子どもたちが路上にいるほうがましだと感じるほどの、一部の国営「シェルター」の不十分さおよび不適切さならびにこれらの施設における高水準の暴力および安全性の欠如である。

 

[45] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見4号(十分な住居に対する権利、1991年)、パラ7参照。 

[46] 前掲パラ8。 

[47] 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会〔社会権規約委員会〕・一般的意見7号(強制立退き、1997年)、パラ10参照。

 

実施措置 

 

51.国は、子どもの保護を向上させ、かつ子どもが路上の状況に至る可能性を低減する手段のひとつとして、不安定な家族への圧力を弱めかつこれらの家族を強化する目的で、貧困および所得不平等の根本的原因に対応するための措置をとるべきである。このような措置には、経済的不平等を減少させる税制および支出政策を導入すること、公正な賃金をともなう雇用および所得創出のためのその他の機会を拡大すること、農村開発および都市開発のために貧困削減に寄与する政策を導入すること、子どもに焦点を当てた政策および予算策定を導入すること、移住が多いことがわかっている地域で子ども中心の貧困緩和プログラムを強化すること、ならびに、十分な社会保障および社会的保護を提供することが含まれる。具体的な例としては、欧州・北米諸国で活用されている子ども給付プログラムや、ラテンアメリカ諸国で導入され、かつアジア・アフリカ諸国で広く適用されている現金移転プログラムなどが挙げられる。国は、銀行口座を持っていない可能性があるもっとも周縁化された家族のもとにもこのようなプログラムが届くように努力するべきである。物的支援は、親および養育者に対して、かつ路上の状況にある子どもに直接提供する形でも、利用可能とされるべきであり、またこのような機構およびサービスは子どもの権利アプローチに基づいて立案しかつ実施することが求められる。住